種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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幼少編

勉強

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「――おやおや、こんな問題も分からないんですか?」
「――全く、困った生徒さんですね」
「――ほらほら、そこの答えは間違ってますよねぇ?」


(うざいっ……!)


レノは建物の客間にてクズキから直接教えを受けていた。例の「学園」に通う人間は主に魔術方面の知識を勉強しており、基本的には魔術知識だけでも会得していればどうにでもなるらしいが、レノの場合は根本的な基本の知識さえないため、難航していた(といってもレノの精神年齢は実際の年齢よりも5歳上のため、理解力自体は悪くはない)。

だが、最も問題なのはレノは「魔法」を使用できない事であり。背中の「反魔紋」がある限り、どんな簡単な魔法も使うことが出来ないのが学園の入学の際に大きなデメリットとなる。


「ふむ……困りましたね。反魔紋とは……また希少な封印式で編まれてますね」
「どうにか出来ないのか?」


上半身裸になり、ベッドで横たわるレノにクズキは背中を観察し、顎に手を当てる。彼は治癒魔法の他にも、様々な魔法が扱えるらしく、他にも色々な知識に精通しているらしい。胡散臭い人間ではあるが、現在頼れる人間はクズキしかいないため、仕方なくレノは自分の秘密を打ち明けた。


「反魔紋は大昔からエルフに伝わる封印式ですからね……これを解除する方法は、封印を施したエルフ以上の魔術の使い手でなければ……」
「そうか……なら、1つ聞きたいことがあるんだけど……」


レノはダークエルフの戦いを詳細に話すと、彼は呆れた様に息を飲み、同時に感心した風に頷く。


「反魔紋の呪いを利用して、会得できないはずの「雷」を相手に与えるとは……馬鹿を通り越して、天才ですねあなた」
「自殺行為だってのは分かっている。実際に死んでないのが驚きだ」
「自慢する事ではありませんが……だけど、考え方自体は面白いですね。この反魔紋を解除する方法はありませんが、あなたの身体に変化がありますねぇ。電流に対しての耐性が付き始めてますよ」
「耐性……?」
「肉体そのものが電流に耐え切る身体に僅かずつ変化しているという事ですねぇ。ハーフエルフ特有の肉体のお蔭か、どちらにしろこの封印を施したエルフにとっても予想外の出来事でしょうねぇ」
「そうか……」


あの時のレノは間違いなく、反魔紋の電流を利用して「雷属性」の魔法の真似事を行ったのだ。しかも、媒介無しに直接魔法を直撃させた。通常の雷属性の魔法とは空(雲が見えない場所からでも一応は可能)から雷を発現させ、武器(金属製が特に有効)や相手に落として攻撃できる。ダークエルフとの戦いでは、レノは反魔紋を利用して雷を放ったが、この方法を利用してエルフとは最悪の相性の雷属性の魔法を擬似的に生み出せないのか相談した。


「考え方は面白いし、理に適ってますがねぇ……しかし、使用する度に身体全体に電流が走るんですよね?幾ら耐性が付いてきていると言っても、毎度身体中に雷を打たれる覚悟はあるんですか?」
「……あいつに勝つには、それしかない」
「あいつ?」


レノの脳裏にダークエルフの姿が浮かび上がり、普通に戦ったとしても魔法が使用できない今ではどうしようもない。ならば、逆に反魔紋を利用して雷の力を自分の物にする。一時の間とはいえ、不意打ちとは言えどあの女を追い詰めたのは事実であり、上手く操作できれば森人族が扱えないはずの雷属性を習得したに等しい。


「まあ、構いませんよ。雷は私の分野ではありませんが……少しなら教えることは出来ますからねぇ」
「頼む……ありがとう」
「いえいえ、これで貴方の任務の力になるというのなら、協力は惜しみませんよ。そう言えば初めてお礼を言われたような気がしますねぇっ」




――レノはこの日を境に、勉強の合間に彼から雷属性の扱い方を教わった。本当の雷属性の魔法自体は使えなくても、ダークエルフとの戦いで解き放ったスタンガンの要領で電気を放つ事に成功するのは時間はかからなかった。


二か月の時が経過し、レノは10歳の間に覚えるはずの「魔術論(魔術に関する知識)」と一般常識を叩き込まれ、やっとの事で建物の外に解放された。彼は馬車で1ヶ月以上の間を移動し、人間の国が支配する領域に辿り着く。

レノ自身は最初は人間の国家に「ハーフエルフ」である自分が通うのかと不安を抱くが、どうやら「鳳凰学園」とは別名は「学園都市」という名前で有名であり、世界中の種族の子供たちが通っているとのこと。そのため、種族差別という感覚は低い。それと念のためにレノは「ダークエルフ」として転入する事に決まり、クズキによると髪の毛色からもハーフエルフだとバレる心配はないという。最も、同族である「エルフ」達にはすぐに見破られてしまうだろうが――
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