種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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幼少編

ハーフエルフというだけで

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集落に辿り着いて早々にレノはすぐに違和感を感じ取る。いつもならば集落に住むエルフの姿が見えるのだが、どういう訳なのか誰1人見当たらない。周囲を探索するが、どこにも住民達の姿が見えない。しかし、先ほどまで確かに人が居た気配と痕跡は残っており、レノは仕方ないのでの家に戻ろうとすると、すぐに屋敷の方で異変が起きている事に気付く。


「これはっ……!?」


長老の屋敷の扉が無残に破壊されており、室内に入ると強盗に入られたかのように荒らされている。家具は壊され、床下には穴が開き、一体何が起こったのか分からない。レノはすぐに屋敷を飛び出し、助けを呼ぼうと「族長」が住む集落の中心地に走り出そうとした時にエルフ達の怒声が耳に入る。


「見つけたぞ!!あそこだ!!」
「捕まえろとの命令だ!!殺すな!!」
「えっ――あぐっ!?」


前方から無数のエルフがこちらに向かってくる姿が視界に入り、次の瞬間、レノの身体に無数の「風属性」の魔力の塊が放たれる。どうやらエルフたちが自分に向けて魔法を放ったようであり、彼は為す術もなく身体中に魔力の塊が激突して倒れこむ。


(何でっ……!?)


薄れゆく意識の中、すぐにもレノを取り囲むようにエルフたちが押し寄せ、彼を見つめる瞳には明確な「殺意」が込められていた。


「汚れたハーフエルフめ……今すぐに殺してやりたいところだ……!!」
「抑えろ!!族長の命令に逆らうつもりか!?」
「その族長がこの者を引き攣れたのではないのか!?この汚れたエルフを!!」
「貴様……その言葉の意味が分かっているのか?族長に背くという意味を?」
「い、いや……それは……」
「言い争いは後にしろ!!まずは連れていけ!!」


レノはエルフたちに拘束され、そのまま集落の中心地に送り込まれる。




――そこには既に手足を拘束され、体中が赤く腫れたフレイと、頭に血を流している「長老」が十字架を思わせる大木に縛りつけられていた。


「フレイッ……!?長老様……!!」
「う、ぐうっ……レノ……?」
「ぐはっ……に、逃げなさいっ……がはっ!!」


レノに気が付いた2人に、すぐに左右に並んでいるエルフが彼らを棒で痛めつける。よく見れば、あの「族長」の屋敷の門番である「レン」と「ラン」だった。何故、自分だけでなくあの2人にまでこのような仕打ちをするのか疑問だらけだが、レノは拘束を振り切って2人の元に駈け出そうとした時、女性の声が広がる。



「――静粛に」




小声でありながら、異様なまでに透き通る声を聴いた瞬間、その場にいる全てのエルフたちの身体が硬直し、声のした方向を振り返る。


「ぞ、族長……」
「おおっ……あれがっ……」
「撲、初めて見たよ……」
「私も……」


無数のエルフを掻き分け、8年前にレノが見かけた小さな「少女」が姿を現す。フレイにしろ、この少女にしろ、外見はあの時から全く変わっていない。金色の髪の毛を翻し、エメラルドの瞳をレノに向け、族長と呼ばれる少女は蔓(特殊な育成法で育てられた植物の蔓、エルフたちは普段これを「縄」代わりに使っている)拘束されている彼に跪き、小声で囁く。


「すまんのう……しかし、これも運命なのかもしれん。エルフという種族は、お主を受け入れることを拒んでおるとしか思えん」
「ぞ、ぞくっ……?」
「黙れ」


背筋が震えるほどの冷たい声で、彼女はレノの顔を掴み、目を細める。


「説明し忘れたが……ハーフエルフは嘗て、我々「エルフ」を裏切り、魔人族と組して我々の支配を試みた罪深き種族なのじゃ」
「えっ……」


その話ならレノも聞いたことはある。一度だけ、酒に酔って上機嫌だったビルドが孤児院の幼い子供たちにお伽噺代わりに語ったのだ。



――かつて、魔人族と呼ばれる種族が世界を征服するために他の全ての種族に戦争を仕掛けた。後にこの戦いを「魔族侵攻大戦」と歴史に刻まれ、現実の世界でいえば「世界大戦」に匹敵する規模の凄まじい戦争だったらしい。



魔人族に対し、他の「人間(ヒューマン)」「森人族(エルフ)」「獸人族(ビースト)」「巨人族(ジャイアント)」「人魚族(マーメイド)」も当然反発したが、彼らは他種族と協力して魔人族に抗うことも拒み、それぞれの種族は自分たちの力だけで魔人族に戦いを挑む。

結果としては魔人族は知略を駆使し、この戦争の際に策略を弄して種族間同士の不信感をより一層強めさせ、ついには魔人族だけではなく、他の種族同士でも戦争を勃発させr。やがて世界中を巻き込む「世界大戦」へと発展した。

この戦争の時に魔人族は真っ先に魔法に長けた「森人族」に目を向け、彼等の中から他種族の血を受け継ぐハーフエルフを懐柔し、自分たちの配下に加えて侵攻を開始した。。森人族も決死に抵抗したが、数の暴力によって魔人族が圧倒的に優位に立ち、さらにはハーフエルフも寝返りにより、内情も知られてしまう。この戦争の最初に魔人族に全面降伏したのは、あろうことか全種族の中で一番の魔法の使い手である森人族だったのだ。


やがて魔人族は勢力を拡大化させ、一時期は全世界の種族を支配下に置いたが、長い時が流れて魔族の支配を脱する勢力が生まれ、ついには以前のように5つの種族が魔人族から独立し、最初の形に戻ったという――



「だが、いくらハーフエルフと言えど、お主には何の罪もない。だからこそ、この森に住ませる試験ぐらいは与えたかったのだが……既にお主の身体には犯してはならぬ禁忌が施されておる」
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