種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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幼少編

深淵の森

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火災中の孤児院から抜け出すと、レノは赤髪の女性(名前は「フレイ」というらしく、純粋なエルフらしい)に連れられ、ユニコーンに乗って走り続ける。

孤児院の周りを囲む森を抜ける際、途中ではぐれた「サイクロプス」の事が気がかりだったが、少なくとも故郷に帰れたのだから問題は無いだろう。あの臆病な性格が危険を察知し、生涯安静に暮らせると思うと思わず笑みがこぼれる。フレイの背中にしがみ付きながら、森を抜け出した途端に広がる草原をユニコーンに乗って駆け抜ける。

この草原には見覚えがあり、赤ん坊の頃に訪れた草原で間違いない。思ったよりも、孤児院とは離れていない場所にあったのだ。


「どこまで行くんですか……?」
「あたしたちの故郷までさ。あんたの生まれた場所だよ」
「僕の……?」
「そうさ、これからはずっと住む場所になるかもよ」
「えっ……」


彼女エルフの故郷という事は、つまりレノが最初に目覚めたあの広大な森の事を指しているのだろう。だが、ハーフエルフはエルフにとっては厄介者のはずだが、そんな自分を何故連れていくのか。


「本当なら追放されたお前を連れて帰るのは、色々と問題はあるんだけどさ……こっちにも事情があってね」
「追放……」


やはり赤ん坊でありながら、レノが孤児院のビルドに預けられたのは、エルフ族が「ハーフエルフ」である自分を「追放処分」をしていたようだ。別に薄々は勘付いていたことであり、ビルドが一度だけ「あんたも生まれる種族が間違っていなかったらね」と珍しく同情した風に呟いていたことを思い出し、レノは顔を下げる。

前世でも「家族」という存在は居なかったが、この世界でも自分は厄介者として扱われている事に最早、悲しむのを通り越して笑ってしまうしかない。


「そんなひどい顔すんな……もしかしたら、お前も森の中で暮らすことを許してくれるかもしれないんだ」
「森に……?」
「ま、詳しい話は着いてからにしようか。ほら、少し早いけど朝飯でも食べな」


そう告げると、フレイはユニコーンに取り付けた荷物から、こちらの世界の果物を取りだす。外見はリンゴに似ているが、味はオレンジに近い果物だ。レノは受け取ると、しゃくしゃくと果物を口にする。甘酸っぱくて非常に美味しい。



――ちなみにエルフの主食は森で入手できる食べ物が多く、主に彼らは果物と野菜しか普段は口にしない。基本的には動物の肉の類は食べることは禁止されており、年に数回行われる「収穫祭」と呼ばれる祭事で森の獲物を狩り、狩った動物や魔物の肉ならば食べることを許されるとだけレノは孤児院の本で学んでいた。



また、エルフ族の間には非常に「掟」を厳守する傾向があり、例え子供であろうと掟を犯したものは厳罰が行われ、最悪の場合は今のレノのように森を追放されて二度と戻ることは許されない。

一度森を追放されたエルフの末路のほとんどは悲惨であり、ある者は「冒険者」として危険な魔物に襲われ殺されたり、ある者は騙されて「奴隷」にされ、ある者はエルフという理由だけで他の種族に迫害され、自ら命を落とす事も珍しくはない。


(やっぱり、逃げた方がいいのかな……)


このまま連れていかれれば、「ハーフエルフ」である自分の身が危ない。エルフは異様なまでに「ハーフエルフ」を忌み嫌い、森に入ることすら許さないという。自分を救ってくれたとは言え、本当にフレイに従って大丈夫なのかとレノは不安に襲われるが、既に草原を走り出してから3時間近く経ち、何の乗り物なしで彼女から逃げることは既に不可能だった。


(どうしよう……)


こんな時に役立つ魔法など、ビルドは教えてくれなかったのが辛く、自力で魔法書でも探し出して独自に魔法を覚えるべきだったかと考えているとフレイの方から話しかけてきた。


「おい、着いたぞ」


色々と考えている間に、フレイは草原のど真ん中で立ち止まり、レノをユニに乗せたまま降りる。周りを見渡すが、エルフが住んでいる「森」の姿など一切見えないが、何となく周囲の雰囲気が可笑しいことに気付く。


「少し待ってな」


フレイは両手を空中に差し出し、呪文を唱える。


「開けクマ!!」
「クマ……?」


彼女が最後に言葉を発した瞬間、空間に歪みが生まれ、突然レノたちの前に木々が姿を現す。数秒後、レノたちの前にとてつもない規模の大きさの木々が生え揃い、延々と奥まで続いている。フレイはユニコーンに乗り込み、森の中を走り出す。阻害する木々を難なく通り抜けて疾走する事が出来る当たり、普通の馬とは違う。



「よし……見えてきたぞ」
「わあっ……」


ユニコーンが走り出してから数分後、レノは前方に視線をやると、そこにはゲームや漫画でしか見たことがない、森の中の木造で作られた集落が見えた――
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