種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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幼少編

目覚め

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――「彼」は目を覚ますと、自分の身体の異変と、周囲の変化にすぐに気が付く。まず、視界に初めて入ったのは美しい女性の顔だった。


容姿は炎を想像させる美しく煌めく赤い髪を腰元まで伸ばしており、顔つきはまるで美術品のように整っており、ルビーのような宝石を想像させる赤い瞳。尚且つ、グラビアモデルのように凹凸が激しい肉体、髪の毛の間から人間とは思えないほどに長く尖った「耳」が見える。服装は軽装であり、まるでどこかの部族のように胸元と臀部に布を巻きつけただけだ。


「―――――っ」


彼女が口を開き、何か言葉のようなものを発するが、その意味が彼には理解出来ない。赤ん坊だから聴覚が発達していないという訳でもなく、単純に彼女が何語を話しているのか理解できなかったのだ。少なくとも日本語ではない。というより、人間が発する言葉とは思えない。


「―――――」


彼女の後ろで、こちらも赤髪の女性に負けないぐらいの美しい容姿の女性が話しかけてきた。こちらは金髪で、エメラルドを思わせる緑色の瞳の幼女だ。此方の方はまだ幼く、どう見ても小学生の低学年にしか見えない。幼女は女性に何事か告げ、口論を始める。


「――――っ!!」
「――――」
「――――?」
「――――」
「――――ッ」


しばらくの間は激しい言い争い(一方的に赤髪の女性が怒鳴っていただけかも知れないが)を行っていたが、やがて赤髪の女性の方が諦めたように溜息を吐き、赤ん坊を優しく抱き上げ、そのまま建物の外へとズンズンと突き進む。扉を開くと、彼女達が居た場所は森の中に囲まれた木造の小屋だったらしく、彼女は赤ん坊を片手に森の中を歩く。



――数分後、木々をまるで動物の如く難なく通り抜け、彼女はついに森を抜け出すと、そのままずんずんと歩き続ける。



時折、赤子の顔を見つめてくるが、泣きもせずに大人しく自分を見上げる赤子に不思議そうに首を傾げるが歩みを止めない。そんな彼女に抱きかかえられながら、赤ん坊の視界には広大な草原が広がっていた。


(どこだろう……)


赤ん坊ではあるが、彼の「意識」ははっきりとしており、少なくとも目の前に延々と広がる美しい草原を見る限り、日本ではないことは確かだろう。森の出口には、一頭の「白馬」が大人しく草を食んでおり、彼女と赤ん坊の姿を見た瞬間、白馬はすぐに2人に駆け寄ってくる。


(角……?)


どういう訳か、こちらを見つめてくる白馬の額には、50センチほどの長さの白い「角」が生えており、少なくとも赤ん坊の記憶の「馬」にはこのような角は生えていないはずだが。


「――――」


赤髪の女性が頭を撫でやると、白馬は嬉しげに彼女に擦り寄り、すぐに彼女が抱えている赤子に気付いたのか、こちらを見つめてくる。赤ん坊である自分を見つめてくる白馬に首を傾げると、白馬は頭を近づけて舌を出す。


「ブルルッ……」
「あうっ……」


自分の頬を唾液まみれにする白馬にくすぐったそうに声を上げると、赤髪の女性は心底驚いた表情を浮かべ、


「――――っ!?――――?」


ぺちぺちと白馬の頬を叩き、今度は赤子を抱き上げて、身体を覆っている布を取り払う。そして、まじまじと赤子の裸を見ながら、股間の方に視線をやり、再び首を傾げる。不思議そうに首を傾げながらもすぐに布を巻き戻して赤子を胸元に抱き込む。


「あむっ……」


赤ん坊の本能が働いたのか、無意識に顔に押し付けられた女性の豊かな胸元に噛みつき、薄い布の上から吸い付く。そんな赤子の行動に特に怒りもせず、よしよしと頭を優しくなでながら、好きなようにさせながら白馬に乗り込む。
白馬は草原を疾走し始め、馬の上で鞍も無しに乗る赤髪の女性の胸元で、赤子は揺れ動く乳房に挟まれたまま眠りにつく。



――どれほどの間、眠っていたのかは分からないが、身体が激しく揺れ動かされ、赤子は再び瞼を開けるとそこには草原ではなく、病院を思わせる大きな建物が建っていた。



赤髪の女性は白馬から降りると、赤子を抱きしめながら鉄柵で覆われた門を開き、建物の鋼鉄製の扉を力強く叩き込む。


「―――?」


扉が開かれ、中からは酒臭い中年の女性が現れ、赤髪の女性を見ると、胡散臭そうに彼女が抱きかかえている「赤子」を見やり、笑みを浮かべる。


「――――」
「……―――っ!」


中年の女性が手を差し出し、赤髪の女性は何か口にしたが、すぐに渋々と胸元から「金貨」らしき物を数枚取り出し、女性に渡す。彼女は口笛を吹きながら、金貨をぽんぽんと空中に放り投げてキャッチし、赤髪の女性から赤ん坊をひったくる。

その行為に赤髪の女性は顔顰めたが、すぐに頭を振って鉄柵の門に待たせている白馬の所に戻る。最後に、一度だけ赤子を抱きかかえている女性の方を振り向いたが、一瞬だけ寂しそうな表情を浮かべるが、そんな彼女の視線を遮るように中年女性は扉を荒々しく閉め槍、赤ん坊を片手で持ち上げて呟く。



――良い金になった。



言葉は分からないが、赤子には確かに彼女そう呟いたように思えた。後に「レノ」と名付けられた赤子はこの「孤児院」で過ごすことになる――
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