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8巻

8-2

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 ◆ ◆ ◆


 言葉を告げた瞬間、第一階層から第二階層に移動した時のように一瞬で転移した。
 直後、彼らの身体に大量の砂が襲いかかる。

「ぶはぁっ⁉ な、何でござるか⁉」
「す、砂ぁっ⁉」
「くっ……⁉」
「落ち着きなさい‼ 全員、離れないで‼」

 全員混乱する中、レイトは咄嗟とっさてのひらを地面に押しつけ、「土塊どかい」の魔法で周囲の土を操作して壁を作り上げた。
 が、すぐ崩れてしまう。地面が砂であることに気付いた。

「……砂漠さばく⁉」

 薄く開いたまぶた隙間すきまから周囲をうかがう。自分達が今立っているのは、砂漠のように大量の砂で覆われた地面で、砂丘さきゅうまで存在することを改めて認識した。
 第三階層は砂漠の階層らしい。しかも激しい砂嵐が常に襲ってくる。

「ぶはぁっ⁉ こ、このままじゃ……」
「落ち着きなさい‼ レイト、あなたは『心眼しんがん』を使えるわね? 皆を一か所に集めなさいっ‼」
「分かった」
「拙者もできるでござる‼」

 シズネの言葉に、レイトは視覚は頼れないと察し、「心眼」の技能スキルを発動させて視覚以外の感覚で周囲をうかがう。ハンゾウとシズネも彼と同様に「心眼」を扱えるため、顔を手で覆っているゴンゾウとダインを引き寄せて一か所に集まった。

「ここからどうすればいい?」
「この階層には休憩地点スポットがあるはずよ。建物を探しなさい」
「建物って言われても……この視界じゃ何も見えないよ‼」
「あなた達はしっかりと付いてきなさい‼ 探索は私達がするわ‼」
「すまん……」

 砂嵐が激しすぎて普通の人間には何も見えない。「心眼」を習得していなければ周囲の状況を把握できないだろう。ゴンゾウとダインは、レイト、シズネ、ハンゾウから離れないように手を繋いで移動した。

「シズネ殿‼ あちらの方に建物があるでござる‼ 拙者の『気配感知』には何も反応しないでござる‼」
「方角は⁉」
「拙者が先導するでござる‼」

 ハンゾウが先を進み、彼女が発見した建物に向けて移動する。
 このような状況では感知系の能力に優れている暗殺者のハンゾウが有利だ。数分後にはレイト達は岩山を発見した。


 ハンゾウは建物と判断したが、実際は岩山の洞窟どうくつだった。
 彼女の誘導で中に入る。

「た、助かった……‼ 死ぬかと思ったよ‼」
「ここは……どうやら休憩地点スポットで間違いないわね」
「え? ここが?」

 砂嵐から逃れ、ようやく身体を休ませることができたレイト達。服に付いた大量の砂を振り払っていると、シズネが洞窟を見渡して頷く(ちなみに、洞窟の中を照らすためにレイトが「光球こうきゅう」の魔法を発動させていた)。

「ここの壁をよく見てみなさい。魔物けの魔法陣が刻まれているわ」
「あ、本当だ。何か紋様もんようみたいなのがある」
「それに、この洞窟に入った瞬間に静かになったでしょう? この岩山自体が巨大な結界石のようになっていて、魔物を寄せつけないだけでなく、砂、風、音さえも遮断しゃだんしているのよ」
「言われてみれば……本当に静かだな」

 確かに洞窟に入って早々に、外が砂嵐に襲われているにもかかわらず、洞窟内はシンと静かになり、砂も風も入ってこなかった。なお、シズネの言う通り洞窟内には無数の魔法陣があり、魔物の気配はない。

「ここが休憩地点スポット……大迷宮でも安全地帯なのか」
「運が良かったわ。ハンゾウ、あなたの手柄てがらよ」
「そう言われると照れるでござる」
「いや、言っている場合か⁉ こんな砂嵐の中でどうやって進めっていうんだよ‼」

 シズネに褒められ、ハンゾウが照れ臭そうに頭を掻く横で、ダインは洞窟の外を指さした。
 確かに彼の言葉通り、洞窟の外で砂嵐が発生している以上、まともに移動することもできないだろう。

「そもそも何で建物の中で砂嵐なんか起きてるんだよ‼」
「それを言ったら、建物中に草原や荒野がある時点でおかしな話よ」
「いや、それはそうだけどさ……」
「大迷宮で起きる事象はあまり深く考えない方がいいわ。大丈夫、この砂嵐は一定の期間を過ぎれば必ずやむはずよ。私も昔、別の大迷宮で似たような環境を経験したことがあるわ」
「とんでもない所だな……」

 洞窟内にいる限りは安全だが、砂嵐が発生している以上は外に出ることはできない。そんなわけで、レイト達はここで休憩することにした。幸い洞窟の中は暑くも寒くもなく、過ごしやすい温度に保たれており、正に休憩地点スポット相応ふさわしい場所だった。

「この階層のどこかに転移水晶が存在するのか……見つけるのは苦労しそうだな」
「この砂嵐の影響で、転移水晶が存在する建物そのものが覆い隠されているようね。ここから先はより一層に用心して進みましょう」

 そこへ、洞窟の最深部に行っていたハンゾウの声が響き渡った。

「シ、シズネ殿‼ 洞窟の奥に温泉があるでござる‼」
「何っ⁉ それは本当か⁉」

 レイト達が慌てて駆けつけると、彼女の言葉通りに洞窟の奥には広大な空間があり、そこには緑色の温泉が広がっていた。
 いつも冷静なシズネも流石さすがに驚いているらしい。掌をかざし、用心しながらも「観察眼」の能力を発動して温泉の様子をさぐる。

「これは……入っても大丈夫なのかしら? 罠だとは考えにくいけど……」
休憩地点スポットに罠が仕掛けられることもあるの?」
「いえ、それはないわ。少なくとも私が訪れた休憩地点スポットにはこんな温泉のような物はなかったけど……」
「これ……もしかして緑薬湯りょくやくゆじゃないのか? 自然に発生しているのなんて初めて見た‼」
「知っているのか、ダイン?」

 シズネが温泉を慎重に調べていると、その隣でダインは躊躇なく手を温泉に入れ、湯加減を確かめながら言う。

「何だよ、皆知らないのか⁉ 緑薬湯だよ、緑薬湯‼ 回復薬の原料となるいくつかの薬草を混ぜたお湯のことだよ‼ 僕も天然物は初めて見たよ‼」
「薬草を入浴剤代わりに使ったお風呂みたいな物? 随分と豪勢な使い方をするな……」
「そういえば、湯の底の方に緑色の花のような物が沈んでるけど、あれがもしかして薬草なのかしら?」

 緑薬湯の底には、見たこともない植物がしげっていた。この薬草が影響したのか、緑薬湯が自然発生しているらしい。

「緑薬湯は普通の回復薬と違って即効性はないけど、かり続けることで怪我けがや疲労の回復効果があるんだ。だから貴族が好んで風呂の時に専門家に頼んで作らせたりもするよ」
「へえ……よく知ってるね、ダイン」
「え、いや……ま、まあね」
「……?」

 レイトの言葉に、何故かダインが焦ったような声を上げた。
 それはさておき、体を休ませるには絶好の場所ということで、レイト達はありがたく緑薬湯に入ることになった。


「気持ちいいでござるな~。足湯など、久しぶりでござる」
「身体の一部を浸からせているだけでも効果があるなんて素晴らしいわね。私の家ではどうして作らなかったのかしら……」
「ふうっ……いやされるな」
「僕も久々だからな……やっぱり気持ちいいや」
「こんな状況じゃないとゆっくり味わえないよね」

 裸で入るわけにはいかないので足湯だけで済ませ、今までの疲労を癒す。なんだかんだ、大迷宮も半分まで到達しており、残りは第四階層と最上階の第五階層のみである。

「そういえば、この階層は本当ならどんな魔物が現れるの?」
「岩人形ゴーレムよ。しかも普通の岩人形ではないわ、砂人形サンド・ゴーレムが現れるのよ。今のところは遭遇していないから助かったけど」
「砂人形?」

 砂でできた岩人形だと想像できるが、シズネらしくない弱気な発言である。レイトはそう疑問を抱き、彼女に質問しようとすると、先にダインが答えた。

「砂人形は言葉通りに砂だけでできた岩人形だよ。普通の岩人形と違う点は、物理攻撃の効果がないんだよ」
「え? 攻撃が効かないのでござるか⁉」
「正確に言えば、どんな武器も通用しないんだよ。剣だろうが、やりだろうが、おのだろうとあいつらの肉体は砂だから、ダメージを与えられないんだよ。しかも再生速度が尋常じゃない。砂がある場所なら、核を破壊しない限り、何度でも復活する厄介やっかいな奴だよ」
「弱点は魔法ね。特に水属性の魔法が効果的よ。他の岩人形と同様、水や氷を苦手としているから私の雪月花にとっては最高に相性がいい敵ね」

 ダインとシズネの説明によると、砂人形は、水属性で攻撃できる人間でなければ難しい相手らしい。水属性の精霊魔法を扱えるコトミンがいれば心強いが……大量の水が必要なので必ずしも役に立つとは限らない、とレイトはふと考えた。

「この第三階層は、本当の砂漠のように階層全体が熱気に包まれているわ。だから多くの水を所持していなければ脱水症状で倒れてしまうし、砂人形は水の攻撃手段がなければ倒せない。だからこそ、塔の大迷宮の中でも難度が高い階層だと言われているの」
「それで、出発前に余分に水を用意しておくようにと言っていたのか」
「この緑薬湯も持っていきましょう。流石に飲み水としては使えないけど、砂人形との戦闘で使う機会があるかもしれないわ」

 シズネの提案にレイトは賛成し、持ち物の中から容器になりそうな道具を探す。ここでレイトはあることに気付く。

「ねえ、ダイン。さっき、天然物の緑薬湯は初めて見たと言ってたよね」
「え? 何だよ急に……それがどうかしたの?」
「でもさ、この大迷宮自体が人工物じゃない? そして大迷宮に存在するこの休憩地点スポットも人間の手で作り出したと考えたら、自然の物とは言えなくない?」
「あっ」
「言われてみれば……確かにその通りね」

 何となく覚えていた違和感に、レイトは緑薬湯に視線を向ける。この温泉自体、人間の手で作り出した物――だとすれば、調べればこの緑薬湯がどのような原理で作り出されているのか分かるのではないか。

「秘密があるとすればこの底の方にある植物だよね。ちょっと採ってみようかな。引き抜いてみたら樹精霊じゅせいれいが出てきたりして」
「いや、それただのマンドラゴラじゃん」

 レイトは緑薬湯の中に手を伸ばし、底に生えている植物を引き抜こうとする。だが力を加えても引き抜くことができない。

「う~んっ……‼ 抜けないや、どうしよう」
「ちょっと退いてくれ」

 続いて、ゴンゾウが緑薬湯の中に手を伸ばし、植物を引き抜こうとする。だが、彼の力でもどうしようもできなかった。

「これは俺でも無理だな……すまん」
「いや、謝らなくていいよ。この植物を持ち帰って栽培すれば緑薬湯も作れるのかなと思っただけだし……」
巨人ジャイアント族の力でも引き抜けないとなると、地中深くに根を張っているのか、あるいは特別な仕掛けがほどこされているのかしら?」
「よし、こういう時こそダインの影魔法の出番だ。『シャドウ・バインド』で引き抜いてよ」
「いや、僕の魔法はそこまで万能じゃないから‼」

 緑薬湯の底に沈んでいた薬草は、水中に根づいていると思って間違いない。それどころか、ゴンゾウでも引き抜けないほどしっかり根づいているらしい。魔法の力で引き抜けないかと考えたが、あまり刺激を与えるのもよくないだろう。

「そろそろ進みましょうか。砂嵐もやんだようね」
「シズネはこの塔の大迷宮に入ったことはあるんだよね?」
「ええ、だけど私は第四階層までだし、この第三階層にこんな休憩地点スポットがあるなんて知らなかったわ。大迷宮を体験しているからといって全てを把握しているわけではなくて……」


 ◆ ◆ ◆


 その後、十分に身体を休ませたレイト達が外におもむくと――砂嵐がやんだことで砂塵に襲われることはなくなったが、異様な熱気が広がっていた。

「うわ、暑い……こんな格好じゃ火傷やけどするよ」
「この暑さは異常でござる……それに、天井に太陽のような大きな光石こうせきが埋め込まれているから、まぶしいでござるよ」
「コトミンがいたら焼き魚になっていたかも」
「完全な魚扱いはやめてあげなさいよ……私も暑いのは苦手よ」

 人魚マーメイド族は、熱に対して普通の人間よりも耐性がない。シズネも人魚マーメイド族の血が半分ほど流れているので熱に弱かった。即座に水筒を取り出して、水分を補給する。

「砂丘が多くて遠くが見えないな……どこに転移水晶があるのか分かる?」
「残念だけど私にも分からないわ。砂丘なんて見分けがつかないし、砂嵐で簡単に地形が変わるから、昔訪れた時の記憶なんて当てにならないわ」
「ここの階層にも第一階層と第二階層と同じ建物が存在するの?」
「ええ、それは間違いないわ。転移水晶は必ずあの建物にあるはずだけど……」
「じゃあ、ちょっと見てくる」

 レイトは足元を確認し、砂では足を取られると考えた。そのため「跳躍」のスキルは上手く発動できないが「氷塊」の魔法で足場を作り出す。

「『氷塊』、からのとうっ‼」
「普通に跳びなさいよ……」

「氷塊」の円盤を作り出して上に乗ると、勢いよく「跳躍」をし、上空から様子をうかがう。高度が足りなかったので、更に「氷塊」の魔法で新たな足場を作り出す。
 だが、天井に近づくほどに熱気が強まり、肉体の限界と思われた。その高さまで移動すると、彼は「遠視」と「観察眼」のスキルを発動して周囲の様子をうかがう。

「岩山とかはあるけど……あの建物は見えないな。砂嵐で埋もれたのかな?」

 転移水晶がある建物は特徴的な形状をしている。見晴らしの良い砂漠ならば簡単に見つかると思ったのだが、それらしき建物はない。
 アイリスと交信できれば正確な位置を把握できるが、この大迷宮では彼女の力を借りることはできない。それはさっき試してある。

「思ったより厄介な場所だな。敵の姿も見えないし、どうやって進もう」

 改めて、アイリスのありがたみを思い知るレイト。しかし悩んでいてもしょうがないので、「氷塊」の魔法を解除して地上に降り立った。
 降りてきたレイトのもとに全員が集まる。彼の表情から収穫はなかったことは分かったが、念のためシズネが問いただす。

「どうだったの?」
「だめ、それらしい建物はなかった。他に特に目立つような物もなかったし……」
「そう……ということは砂に埋もれていると考えるべきね」
「シズネが前に来た時は、建物は普通にあったの?」
「前の時は、私が転移してきた場所が既に建物の前だったわ。今考えると相当な幸運だったのね」

 今までの階層では簡単に発見していた分、皆焦っていた。そんな中、レイトは冷静にこれまでのことを思い返し、ある結論に辿り着く。

「あのさ……今までの階層にあった転移水晶、だいたい階層の中央にあったよね?」
「そうなのか? 俺は気にしていなかったが……」
「言われてみれば確かに……」
「ならさ、この階層の転移水晶も、中央の方に存在したりとかは考えられない?」
「可能性はあるわね。他に手掛かりがない以上、その考えにけるしかないわね」

 レイトの考えに全員が納得し、まずは第三階層の中央部に向かう。


 移動距離自体はそれほどないはずだが、いくつもの砂丘を乗り越えねばならず、熱気の影響も重なって体力を消耗しょうもうしていった。

「はあっ、はあっ……暑い‼」
そば怒鳴どならないでほしいでござる……拙者、『聴覚強化』のスキルも持っているから余計にうるさいでござる」
「くっ……足が沈む」
「喉がかわいたら躊躇せずに水分を補給しなさい」
「氷が欲しい人は『氷塊』で出してあげるよ~」
「「お願いします‼」」

 砂漠を徒歩で移動するのは、予想以上に体力を消耗した。
 似たような風景が続くので距離感が掴めず、定期的に上空から位置を確かめないとならない。そのために余計な時間がかかってしまう。
 レイトの「氷塊」で生み出した氷で身体を冷ましながら移動する。


「ふうっ……は、半分ぐらいは移動したかな?」
「まだ三分の一ぐらいでござる」
「そんなに遠いのか?」
「あまり話をしながら移動しない方がいいわ。体力を温存しないとだめよ」
「「…………」」

 レイト達は黙々と先を急ぐ。「氷塊」の魔法で体温を下げるが、それでも人魚マーメイド族の血が流れるシズネには厳しい環境だった。
 彼女は頭を押さえて先頭を進む。

「シズネ、ちょっと移動が速いよ。皆が付いていけないよ」
「そ、そうね……うっ」
「シズネ⁉」
「大丈夫か⁉」

 すると、シズネが立ちくらみを起こして、ひざから崩れ落ちてしまう。
 そんな彼女を、レイトが慌てて支える。
 レイトは、彼女が驚くほど軽いことに気付く。意識はあるが脱水症状を起こしているらしく、慌てて水筒の水を飲ませる。

「ほら、これを飲んで……」
「ごめんなさい……この階層にあまり長くいたことがないから油断していたわ」
「俺がかつごう」
「へ、平気よ……くうっ」
「無茶はだめでござるよ‼」

 シズネにゴンゾウが背中を貸そうとするが、それを断って彼女は歩き出そうとする。
 しかし数歩ほどで再び倒れ、今度はハンゾウが彼女を支えた。

「ちょっと休憩しないとだめだな……近くに日陰になりそうな場所はある?」
「それならあそこに岩山があるけど……」
「そこにしよう。俺の能力で洞窟を作り出すから」

 レイトの「形状高速変化」の能力を使用すれば、岩山の岩壁を変形させて洞窟を作り出すことも可能だ。
 みんなでシズネを支えながら岩山に向かう。
 だが、途中で何かに気付いたようにハンゾウが立ち止まる。

「この気配は……⁉ 敵でござる‼」
「敵⁉」
「か、数は……⁉」
「三つ、いや四つでござる‼」

 ハンゾウの言葉に全員が戦闘態勢に入り、レイトはシズネに肩を貸しながら周囲の様子をうかがう。見た限りでは別に異変ないが、「観察眼」を発動させると、地面に異変が起きていることに気付く。

「あれは……⁉」
「下から来るぞ‼」
「ウゴォオオオ……」

 蟻地獄ありじごくのごとく地面が陥没かんぼつしていき、中心から人間の両腕のような砂が盛り上がった。
 やがてレイト達の目の前に、人の形をした砂の物体が現れた。砂人形である。シズネは即座に雪月花を引き抜こうとするが、それをレイトが止める。

「そんな状態じゃ戦えないだろ。ここは俺達に任せろ」
「だけど……」
「いいから俺達を信じて‼」
「……分かったわ」

 レイトの言葉にシズネは申し訳なさそうに頷く。
 彼女の力を借りられない以上は、四人で対応するしかない。数の上では互角だが、砂人形は体長が二メートルを超え。ゴンゾウ以外は体格負けしていた。


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