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蛇足編

特製の毒矢

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「あ、しまった!!宿屋に忘れ物をしました!!ちょっと取ってきますね!!」
「ええっ!?何やってんだよもう……」
「一緒に行くか?」
「いえ、僕一人で十分です!!すぐに取ってきますから!!」


ミイネは宿屋に向かって駆け出し、丁度後ろで尾行していた二人組は慌てて道を開く。まさかミイネがダイン達に離れるとは予想外だったが、これで邪魔者は一人消えた。


「……よし、いいぞ。あとはあの巨人族をどうにかすれば捕まえられる」
「しかし、どうやって奴等を引き離す?」
「そうだな……さっきの女子を捕まえて人質にするか?」


尾行していた二人は宿屋の方角へ走り抜けるミイネに視線を向け、今ならば追いかければ捕まえられる。ミイネを人質にしてダインをおびき寄せる作戦を考えたが、誰かはダインと巨人族の動向を見張る必要がある。

先を歩いていた二人組は後方で待機している他の仲間に合図を送る。仲間達もミイネが単独行動に出たことを確認しており、合図の意図を察して彼女の後を追いかけた。ミイネのことは他の仲間に任せて二人組はダイン達を追う。


「たくっ、ミイネもドジな奴だな」
「そういうな。ダインだってよく忘れ物するだろう」
「し、仕方ないだろ!!レナが一緒の時は大切な物は預かって貰ってたから自分で物を持ち歩くのを忘れてただけだよ!!」
「確かにレナの空間魔法は便利だが、頼り過ぎるのはどうかと思うぞ」
「旅の時はお前が一番世話になってただろうが!!」
「ぬうっ……」


長旅の際は皆の荷物はレナが異空間に預けており、そのお陰で余計な荷物を持ち運ぶ必要はないので楽だった。特にゴンゾウのような巨人族は持ち運ぶ荷物を多く必要とするため(食料や水や衣服の類)、旅の時はゴンゾウが一番多くの荷物を預けていた。

ちなみにダインはレナに荷物を預ける時は貴重品も保管してもらい、今はミイネに任せることが多い。レナと同じぐらいにミイネを信頼している証であり、もう彼女の無しでは旅はできなかった。だが、やはりレナと一緒の方が色々と楽なのは事実なので彼は寂しがる。


「はあっ……レナが恋しくなってきた」
「俺もだ。少し前に会ったばかりだが、大分顔を合わせていない気分だ」
「まさか旅行に出かけているなんて思わなかったよ。昔みたいに皆で旅してた頃が懐かしいな……」
「割と最近まで一緒に旅をしていたはずだがな」


レナが不在だったのはダインもゴンゾウも寂しく思い、彼がいつ帰ってくるか気になった。そんな二人の気持ちも知らずに背後から新帝国の構成員が近付く。


(おい、奴等隙だらけだぞ)
(まだだ。避けられたら終わりだからな……もう少し近付いて撃つぞ)


新帝国の中でも「暗殺者」の職業の二人組は隠密の技能で気配を完璧に殺しながらゴンゾウとダインに近寄る。彼等はミヤから託された武器を取り出した。

ミヤから渡されたのは特製の毒矢であり、それをボーガンに装填した状態でダインとゴンゾウに接近した。この矢を撃ちこめばしばらくは動けず、やがて死に至る。しかし、ダインの方は生かして連れて行く必要があるので毒の量は調整していた。


(巨人族は毒にも耐性がある。こいつを撃ちこんでも動けなくなるかは分からん……毒の量を増やしておくか?)
(大丈夫だ。こいつの毒はトロールにも通用することは確認済みだ。むしろ、あのダインという奴の方がすぐに死ぬかもしれないぞ)
(大丈夫だ。事前の調査では奴は毒耐性の技能も持っているらしい。どうして魔術師がそんな技能を持っているのかは知らんが、毒耐性持ちなら簡単に死ぬことはないだろう。尤もこの強力な毒矢を受ければ動けまいがな)


毒耐性の技能はあくまでも毒に対する耐性が身に付くだけで毒を無効化するわけではない。一定以上の強い毒を受ければ耐え切れず、暗殺者たちが用意した毒矢は毒耐性持ちの人間でも通用するのは確認済みだった。

暗殺者達は周囲の人間を確認し、自分達に気付いている者はいないことを確かめた。隠密の技能のお陰で普通の人間は彼等を認知できず、ゴンゾウとダインも気が付いていない。二人組はボーガンを構えて矢を放つ準備を整える。


(よし、撃つぞ!!)
(一、二、三で撃つぞ!!)


二人組は視線だけで言葉を交わし、ゴンゾウとダインの背後から狙い撃とうした。だが、ボーガンを構えた瞬間に何処からかリボンを頭に就けた鼠が駆けつけてきて片方の暗殺者の手に噛みつく。


「チュチュッ!!」
「ぎゃああっ!?」
「なっ!?馬鹿、こっちに向けるな!?」
「うわっ!?な、何だ!?誰だ!?」
「お前達は!?」


暗殺者の片方がボーガンを撃つ直前で邪魔されたせいで声を上げてしまい、相方の方にボーガンを向けてしまう。ボーガンを向けられた暗殺者は慌てて相方を取り抑えようとするが、ダインとゴンゾウに気付かれてしまう。
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