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蛇足編

新騎士団

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――同時刻、レナの騎士団結成のためにジャンヌとミナの協力を取り次いだナオだったが予想外にも騎士団の希望者が多かった。その中には有名な武芸者も多く、思っていた以上にレナの人気があることを知る。


「女王陛下!!予定よりも希望者の数が多すぎます!!」
「このままでは他の騎士団よりも数が多くなることに……」
「むむむ……」


ナオは部下からの報告を聞いて困り果てた。希望者が多いのは予想していたがまさか1万人近くの希望者が現れるとは夢にも思わなかった。ナオの直属のワルキューレ騎士団でも1000人程度だが、仮にレナと同じ数の騎士団となると倍率は10分の1になってしまう。


「あらあら、うちのレナはこんなに人気者だったなんて嬉しいわね~」
「ア、アイラさん!?」
「アイラ様!?」
「皆の者、敬礼!!」


アイラが訪れると慌てて兵士達は敬礼を行い、最近の彼女は兵士から畏怖の対象として認識されている。その理由は最近になってアイラは兵士の訓練の指導を積極的に行うようになり、現在も鎧姿でナオの元に訪れた。ちなみに鎧と言ってもいつものビキニアーマーではなく、普通の鎧を身に着けている。

レナに敗れてからアイラは剣を置いたが一時経つと再び剣士として他の人間の育成に集中する。以前のアイラも人から乞われれば剣技を教えていたが、最近の彼女は自分から指導を行いたがる。レナとの戦いで彼女は敗れたとはいえ、この国でも指折りの剣士であることに変わりはない。最近の彼女の目標は自分以上の剣士を育て上げることを夢見ていた。


「今日はナオちゃんにお客さんを連れてきたわよ」
「お客さん?」
「よ、よう女王陛下……久しぶりだね」
「バル将軍!?」
「しょ、将軍だ!!将軍が戻ってきてくださったぞ!!」


バルが現れると兵士達は騒ぎ出し、彼女は一時の間とはいえ将軍として勤めていた。実はナオに剣技を教えていたのはバルであり、短い期間ではあるが二人は師弟関係だった。


「まさかバル将軍も来てくれるなんて……ですが、ギルドの方は大丈夫なんですか?」
「大丈夫というわけでもないんだけど、アイラさんの頼みとあったら断れないからね」
「ごめんなさいねバルちゃん。でも、ナオちゃんは血は繋がってなくても私の娘なのよ。だから彼女の力になってあげたいの」
「ア、アイラ様……!!」


アイラの言葉にナオは感動し、彼女は昔からアイラのことを慕っていた。アイラは小さい頃からナオの面倒を見てくれたため、彼女にとってはアイラは実の母親と同じぐらいに尊敬していた。そしてバルも職を離れたとはいえナオにとってはたった一人の師匠であることに変わりない。


「レナちゃんの騎士団に入りたがる人が多いと聞いていたけれど、前に話した通りに試験を行いましょう」
「試験の指導官としてあたしやアイラさん、それに氷雨のギルドからも剣聖を派遣して指導官として働かせてくれることをマリアも承諾してくれたよ」
「マリアさんが?」
「マリアから伝言も預かってるよ。貴女のためじゃなくてレナのために協力するのだから勘違いしないでちょうだい、とね」
「そ、そうですか……相変わらずですね」


マリアはナオの支援を行う理由はレナが彼女を姉として慕っているからであり、別にマリアはナオに対して義理立てする理由はない。それでもマリアが協力してくれたお陰でナオは王妃が存命の時も迂闊に手を出されることはなかった。王妃もナオがマリアと協力関係だと知っていたので彼女に直接危害を加えるような真似はできなかった。

アイラやバルだけでも心強いが氷雨からも剣聖を派遣してくれると聞き、ナオは改めてレナの人脈に感心する。王国の長い歴史においてここまで有力者と関係を築いている王族などいないと思われ、自分よりもよっぽど彼の方が王に向いている気がしてきた。


「全く、本当にうちの弟は凄い奴だな……」
「あれは凄いを通り越してやばい奴だと思うけどね……あいてっ!?」
「あらあら、バルちゃんたらうちのレナを悪く言うのは許さないわよ~」
「い、いや、今のはそう言うのじゃなくて……」


バルのぼやきにアイラは笑顔で彼女の頬を引っ張り、年齢を重ねてもアイラには逆らえないバルにナオは苦笑いを浮かべる。だが、ナオはアイラがいつの間にかレナのことを呼び捨にしていることに気が付く。これまで彼女はレナのことをちゃん付けだったが、何故か今は呼び捨てになっている。


(レナよりも年上のバル将軍をちゃん付けにしているのにどうして……)


今まで頑なにレナのことはちゃん付けで呼んでいたのに急に呼び捨てになったアイラにナオは不思議に思い、もしかしたら彼女なりに思う所があったのかもしれない。自分を破った相手をもう子供扱いできないという理由でアイラはレナを呼び捨てになったのかもしれない。その理屈ならばバルを未だにちゃん付けで呼ぶのはアイラは彼女のことをまだまだ子供扱いしているのかもしれないと考えると複雑な気分になる。
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