1,974 / 2,083
蛇足編
新騎士団
しおりを挟む
――同時刻、レナの騎士団結成のためにジャンヌとミナの協力を取り次いだナオだったが予想外にも騎士団の希望者が多かった。その中には有名な武芸者も多く、思っていた以上にレナの人気があることを知る。
「女王陛下!!予定よりも希望者の数が多すぎます!!」
「このままでは他の騎士団よりも数が多くなることに……」
「むむむ……」
ナオは部下からの報告を聞いて困り果てた。希望者が多いのは予想していたがまさか1万人近くの希望者が現れるとは夢にも思わなかった。ナオの直属のワルキューレ騎士団でも1000人程度だが、仮にレナと同じ数の騎士団となると倍率は10分の1になってしまう。
「あらあら、うちのレナはこんなに人気者だったなんて嬉しいわね~」
「ア、アイラさん!?」
「アイラ様!?」
「皆の者、敬礼!!」
アイラが訪れると慌てて兵士達は敬礼を行い、最近の彼女は兵士から畏怖の対象として認識されている。その理由は最近になってアイラは兵士の訓練の指導を積極的に行うようになり、現在も鎧姿でナオの元に訪れた。ちなみに鎧と言ってもいつものビキニアーマーではなく、普通の鎧を身に着けている。
レナに敗れてからアイラは剣を置いたが一時経つと再び剣士として他の人間の育成に集中する。以前のアイラも人から乞われれば剣技を教えていたが、最近の彼女は自分から指導を行いたがる。レナとの戦いで彼女は敗れたとはいえ、この国でも指折りの剣士であることに変わりはない。最近の彼女の目標は自分以上の剣士を育て上げることを夢見ていた。
「今日はナオちゃんにお客さんを連れてきたわよ」
「お客さん?」
「よ、よう女王陛下……久しぶりだね」
「バル将軍!?」
「しょ、将軍だ!!将軍が戻ってきてくださったぞ!!」
バルが現れると兵士達は騒ぎ出し、彼女は一時の間とはいえ将軍として勤めていた。実はナオに剣技を教えていたのはバルであり、短い期間ではあるが二人は師弟関係だった。
「まさかバル将軍も来てくれるなんて……ですが、ギルドの方は大丈夫なんですか?」
「大丈夫というわけでもないんだけど、アイラさんの頼みとあったら断れないからね」
「ごめんなさいねバルちゃん。でも、ナオちゃんは血は繋がってなくても私の娘なのよ。だから彼女の力になってあげたいの」
「ア、アイラ様……!!」
アイラの言葉にナオは感動し、彼女は昔からアイラのことを慕っていた。アイラは小さい頃からナオの面倒を見てくれたため、彼女にとってはアイラは実の母親と同じぐらいに尊敬していた。そしてバルも職を離れたとはいえナオにとってはたった一人の師匠であることに変わりない。
「レナちゃんの騎士団に入りたがる人が多いと聞いていたけれど、前に話した通りに試験を行いましょう」
「試験の指導官としてあたしやアイラさん、それに氷雨のギルドからも剣聖を派遣して指導官として働かせてくれることをマリアも承諾してくれたよ」
「マリアさんが?」
「マリアから伝言も預かってるよ。貴女のためじゃなくてレナのために協力するのだから勘違いしないでちょうだい、とね」
「そ、そうですか……相変わらずですね」
マリアはナオの支援を行う理由はレナが彼女を姉として慕っているからであり、別にマリアはナオに対して義理立てする理由はない。それでもマリアが協力してくれたお陰でナオは王妃が存命の時も迂闊に手を出されることはなかった。王妃もナオがマリアと協力関係だと知っていたので彼女に直接危害を加えるような真似はできなかった。
アイラやバルだけでも心強いが氷雨からも剣聖を派遣してくれると聞き、ナオは改めてレナの人脈に感心する。王国の長い歴史においてここまで有力者と関係を築いている王族などいないと思われ、自分よりもよっぽど彼の方が王に向いている気がしてきた。
「全く、本当にうちの弟は凄い奴だな……」
「あれは凄いを通り越してやばい奴だと思うけどね……あいてっ!?」
「あらあら、バルちゃんたらうちのレナを悪く言うのは許さないわよ~」
「い、いや、今のはそう言うのじゃなくて……」
バルのぼやきにアイラは笑顔で彼女の頬を引っ張り、年齢を重ねてもアイラには逆らえないバルにナオは苦笑いを浮かべる。だが、ナオはアイラがいつの間にかレナのことを呼び捨にしていることに気が付く。これまで彼女はレナのことをちゃん付けだったが、何故か今は呼び捨てになっている。
(レナよりも年上のバル将軍をちゃん付けにしているのにどうして……)
今まで頑なにレナのことはちゃん付けで呼んでいたのに急に呼び捨てになったアイラにナオは不思議に思い、もしかしたら彼女なりに思う所があったのかもしれない。自分を破った相手をもう子供扱いできないという理由でアイラはレナを呼び捨てになったのかもしれない。その理屈ならばバルを未だにちゃん付けで呼ぶのはアイラは彼女のことをまだまだ子供扱いしているのかもしれないと考えると複雑な気分になる。
「女王陛下!!予定よりも希望者の数が多すぎます!!」
「このままでは他の騎士団よりも数が多くなることに……」
「むむむ……」
ナオは部下からの報告を聞いて困り果てた。希望者が多いのは予想していたがまさか1万人近くの希望者が現れるとは夢にも思わなかった。ナオの直属のワルキューレ騎士団でも1000人程度だが、仮にレナと同じ数の騎士団となると倍率は10分の1になってしまう。
「あらあら、うちのレナはこんなに人気者だったなんて嬉しいわね~」
「ア、アイラさん!?」
「アイラ様!?」
「皆の者、敬礼!!」
アイラが訪れると慌てて兵士達は敬礼を行い、最近の彼女は兵士から畏怖の対象として認識されている。その理由は最近になってアイラは兵士の訓練の指導を積極的に行うようになり、現在も鎧姿でナオの元に訪れた。ちなみに鎧と言ってもいつものビキニアーマーではなく、普通の鎧を身に着けている。
レナに敗れてからアイラは剣を置いたが一時経つと再び剣士として他の人間の育成に集中する。以前のアイラも人から乞われれば剣技を教えていたが、最近の彼女は自分から指導を行いたがる。レナとの戦いで彼女は敗れたとはいえ、この国でも指折りの剣士であることに変わりはない。最近の彼女の目標は自分以上の剣士を育て上げることを夢見ていた。
「今日はナオちゃんにお客さんを連れてきたわよ」
「お客さん?」
「よ、よう女王陛下……久しぶりだね」
「バル将軍!?」
「しょ、将軍だ!!将軍が戻ってきてくださったぞ!!」
バルが現れると兵士達は騒ぎ出し、彼女は一時の間とはいえ将軍として勤めていた。実はナオに剣技を教えていたのはバルであり、短い期間ではあるが二人は師弟関係だった。
「まさかバル将軍も来てくれるなんて……ですが、ギルドの方は大丈夫なんですか?」
「大丈夫というわけでもないんだけど、アイラさんの頼みとあったら断れないからね」
「ごめんなさいねバルちゃん。でも、ナオちゃんは血は繋がってなくても私の娘なのよ。だから彼女の力になってあげたいの」
「ア、アイラ様……!!」
アイラの言葉にナオは感動し、彼女は昔からアイラのことを慕っていた。アイラは小さい頃からナオの面倒を見てくれたため、彼女にとってはアイラは実の母親と同じぐらいに尊敬していた。そしてバルも職を離れたとはいえナオにとってはたった一人の師匠であることに変わりない。
「レナちゃんの騎士団に入りたがる人が多いと聞いていたけれど、前に話した通りに試験を行いましょう」
「試験の指導官としてあたしやアイラさん、それに氷雨のギルドからも剣聖を派遣して指導官として働かせてくれることをマリアも承諾してくれたよ」
「マリアさんが?」
「マリアから伝言も預かってるよ。貴女のためじゃなくてレナのために協力するのだから勘違いしないでちょうだい、とね」
「そ、そうですか……相変わらずですね」
マリアはナオの支援を行う理由はレナが彼女を姉として慕っているからであり、別にマリアはナオに対して義理立てする理由はない。それでもマリアが協力してくれたお陰でナオは王妃が存命の時も迂闊に手を出されることはなかった。王妃もナオがマリアと協力関係だと知っていたので彼女に直接危害を加えるような真似はできなかった。
アイラやバルだけでも心強いが氷雨からも剣聖を派遣してくれると聞き、ナオは改めてレナの人脈に感心する。王国の長い歴史においてここまで有力者と関係を築いている王族などいないと思われ、自分よりもよっぽど彼の方が王に向いている気がしてきた。
「全く、本当にうちの弟は凄い奴だな……」
「あれは凄いを通り越してやばい奴だと思うけどね……あいてっ!?」
「あらあら、バルちゃんたらうちのレナを悪く言うのは許さないわよ~」
「い、いや、今のはそう言うのじゃなくて……」
バルのぼやきにアイラは笑顔で彼女の頬を引っ張り、年齢を重ねてもアイラには逆らえないバルにナオは苦笑いを浮かべる。だが、ナオはアイラがいつの間にかレナのことを呼び捨にしていることに気が付く。これまで彼女はレナのことをちゃん付けだったが、何故か今は呼び捨てになっている。
(レナよりも年上のバル将軍をちゃん付けにしているのにどうして……)
今まで頑なにレナのことはちゃん付けで呼んでいたのに急に呼び捨てになったアイラにナオは不思議に思い、もしかしたら彼女なりに思う所があったのかもしれない。自分を破った相手をもう子供扱いできないという理由でアイラはレナを呼び捨てになったのかもしれない。その理屈ならばバルを未だにちゃん付けで呼ぶのはアイラは彼女のことをまだまだ子供扱いしているのかもしれないと考えると複雑な気分になる。
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。