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蛇足編

妥協案

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「あ、そうだ。そんなに危険なら俺一人だけで行きますよ」
「えっ!?」
「操縦の仕方を教えてくれたら砂漠都市に俺だけで向かいます。もしもの時は空間魔法で帰ってこれるようにすれば安全だと思うし……」


レナの空間魔法は異空間に物体を収納するだけではなく、二つの黒渦を作り出す事で転移魔法のように移動を行う事ができる。砂船の小型船が魔物に襲われた際、レナだけならば空間魔法で脱する事ができた。


「そ、操縦を覚えるのは難しいかと……砂船は普通の船とは扱い方が異なりますので」
「大丈夫です。頑張って覚えますから」
「……わ、分かりました」


船員は仕方なくレナに砂船の操縦方法を教え、砂漠を渡るため際の船の操作のコツを教える。普通の海と違って砂海の場合は船で渡る際に気を付けるのは砂丘であり、あまりに速度を上げて砂丘を上がると勢いあまって転覆してしまう恐れがある。

操縦方法を習った後、レナは岩山を旋回して操縦に慣れていく。砂船を動かす方法は二つの魔石を利用し、まずは船底には船のバランスを保つために土属性の魔石が設置され、この魔石を利用して船が転覆しそうな時は土属性の魔石を発動させて重力を増減して体勢を保つ。そして船の後部には風属性の魔石を搭載しており、船に取り付けてあるスクリューと酷似した魔道具を発動させる。スクリューを風の魔力で高速回転させる事で移動を行える仕組みだった。


「よっと……意外と操縦は簡単なんですね」
「か、簡単ですか?普通なら素人が覚えるには一か月はかかるのですが……」
「レナ様の感覚センスは普通の方とは違うようですね」
「流石はレナたん!!」


これまでに様々な技能を覚えていった結果、レナは新しい技術を身に着ける事を得意としていた。元々覚えている技能の中には操縦の際に役立つ能力も会ったのかもしれず、レナは簡単に砂船を操作して移動できるようになる。


「砂漠都市の場所と方向を教えてください。一人で行ってきますので」
「ほ、本当に行かれるのですか?地図があったっとしても居場所が分からなければ大変な事になりますよ?」
「大丈夫ですよ。いざという時は空間魔法で船ごと戻りますから」


仮に迷った場合でもレナの場合は空間魔法で黒渦を通過すれば岩山に戻る事ができる。船員からレナは地図を受け取り、砂船の小型船を借りた。万が一に壊した場合に備えてレナはお金を支払い、ようやく砂漠都市に向けて出発できた。


「それじゃあ、行ってきます」
「レナ様、お気を付けください!!空間魔法を発動している間は他の魔法の使用は控えてください!!」
「疲れたらすぐに戻ってきてね~!!」
「お、お気を付けて……」


レナは小型船に乗り込むと砂漠都市がある方向に向けて移動を開始し、ここから先は地図だけを頼りに向かわなければならない。砂船の船員は熟練した技術と船乗りの勘で砂海の移動を行うが、レナの場合はもっと頼りになる存在が居た。


『案内役は任せるよアイリス』
『はいはい、お任せください。あ、ちょっと右に逸れてください。そうそう、そんな感じで……』


地図などなくてもレナにはアイリスという頼りになる羅針盤が存在し、砂漠都市の位置を完璧に把握している彼女が一緒ならば簡単に進める。序盤は特に苦労する事もなく、砂漠を進む事ができた。

だが、不穏な気配を漂い始めたのは移動を開始してから一時間後の出来事だった。移動の際中にレナは大きな砂丘の上に移動し、一旦船を止めて周囲の様子を伺う。


「風が騒がしいな。……今のは中二病発言じゃないからね」


誰もいないのにレナは一人で突っ込み、先ほどから風の精霊が忙しなく漂っている気がした。レナは掌を伸ばして風の精霊を感じ取り、まるで嵐でも迫っているように風の精霊が大量に湧き出していた。


「まさか……砂嵐が近付いている?」


視認はできないが砂嵐が迫っている危険性があり、もしも砂嵐が押し寄せれば小型船など簡単に吹き飛んでしまう。何処か身を隠す場所はないかレナは探し、都合のいい事に大きな岩を発見した。


「よし、あそこに移動して一旦ここを離れよう。もしもの時は皆の所に避難しないと……」


岩山の上に移動し、そこに黒渦を設置すればレナはティナ達が待つ岩山に一時避難できる。砂嵐が迫る前にレナは移動を開始すると、砂漠にある岩へと移動を行う。だが、ここでレナは疑問を抱く。


(あの岩……何か様子が変だな)


岩の周囲は不自然な程に凹みが存在し、まるで隕石のように岩が落ちてきてクレーターが出来上がっているようにも見えた。もしかしたらレナが見つけたのは本物の隕石かもしれず、仮にそうだとしたら疑問が残る。

砂海は見た目はただの砂漠だが、実際は砂粒が細かすぎて水の様に身体が沈んでしまう。もしも隕石が落ちてきたとしても砂海の中に取り込まれてしまうはずだが、岩は何故か全く沈む様子がない。不審に思ったレナだったが、考えている間にも砂嵐が迫ってきていた。
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