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蛇足編
シノビの同行
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――三つ目の依頼を果たした後、ハンゾウは和国へ一旦帰国する事になった。依頼人のヨシテルに回収した「月華」を渡さなければならず、彼女の代わりにシノビが同行する事になった。
「久しぶりカゲさん」
「その呼び方は止めてくれ……」
「ウォンッ(久しぶり)」
「ふっ、相変わらず元気そうだな」
「あれ?俺よりウルと仲良くなってない?」
シノビはかつてウルと競争した事もあり、驚くべき事に移動速度ならばシノビは一時の間ならばウルに勝る。しかし、体力の方はウルには敵わず、短距離走ならシノビが勝つが長距離走ならばウルに分がある。シノビとウルはお互いの手と前脚を重ね合わせて友情を確かめた。
ハンゾウは和国に帰国する間はシノビがレナの護衛役となり、その代わりにマリアの護衛は一時的に他の者が行う。そちらに関してはハヅキ家の者が護衛を行うらしく、シノビとしては自分以外の者がマリアの護衛を行う事には不満があるが、マリアの命令なのでレナの護衛に渋々と従う。
「それで残りの依頼はどれくらい残っている?」
「えっと、やっと半分終わった所かな。残りは3つだけど……」
「あまり冒険都市を離れたくはない。次の依頼は冒険都市から一番近い場所を選んでくれ」
「まあ、別にいいけど……」
仕事が終えればすぐにマリアの元に戻るためにシノビは残りの依頼の中から、冒険都市から最も近い仕事を探す。そして彼が認めたのは王都での地下の調査だった。
「……この依頼なら問題ないだろう」
「王都の地下の調査?それって七魔将や魔物が封印されていたあの場所?」
王都の地下には遥か昔に作り出された迷宮が存在し、その場所は七魔将メドゥーサの住処でもあった。メドゥーサは魔王の命令で他の七魔将を封じており、かつては迷宮に迷い込んだ人間や魔物を石像と化していた。
メドゥーサがレナによって倒された事で石化されていた生物は元に戻ったが、現在の調査ではメドゥーサが石化させた存在はもう残っていないはずである。七魔将を最後に石像から解放された存在はいないはずだが、最近になって地下迷宮に調査に赴いた人間が行方不明になったらしい。
「今回の依頼人はナオ女王だ。地下迷宮に派遣した兵士の捜索、並びに地下迷宮の現況を調査して欲しいらしい」
「姉上か……それなら失敗できないな」
「ところで俺達以外に同行者はいないのか?」
「あ、ティナとリンダさんは家に戻ったよ。冒険都市の方にお姉ちゃんが来るらしいから会いに行ったんだ」
「そうか……」
少し前まで同行していたティナとリンダと他の魔物達は一足先に冒険都市へ帰還し、ハンゾウも帰国したので現在はレナとシノビとウルしかいない。呼べばコトミンなら付いて来てくれるだろうが、彼女は厳密には冒険者ではないため、わざわざ仕事を付き合わせるのは迷惑が掛かると思って呼ばない(本人が勝手に付いてくるならば別だが)。
「今回の依頼は捜索能力を持つ者が適任だ。その点では俺もお前も申し分ないだろう」
「でも、二人だけであんな馬鹿みたいに広い迷宮を調査するとなると時間が掛かるな……スラミンかヒトミンでも借りて来ようか?」
「スライムの感知能力か……確かに奴等の感知は侮れん」
「ウォンッ(嗅覚なら自信ある)」
スライムの感知能力ならば調査にも役立つだろうが、そのスラミンとヒトミンもティナ達の元に居る。家に戻ればスライム達を貸してくれるだろうが、そうなるとレナはティナの姉と鉢合わせになる。別にそれが問題というわけではないが、仕事中なので顔を合わせてもすぐに出て行かなければならない。
ティナの父親と兄はティナとレナの結婚に未だに完全には納得していないが、お姉さんの方は話が分かってティナの気持ちを尊重して二人の結婚を認めている。だからレナもティナの姉には嫌われないようにしたいが、仕事のために帰ってきてティナからスライム達だけを借りてまた仕事に戻るのは印象が悪くなるかもしれない。ティナよりも仕事を優先していると思われたら面倒な事になる。
(ティナのお姉さんは一番ティナを可愛がってるからな……でも、スラミン達以外に力を貸してくれそうなスライムなんて……あっ!!)
レナは考えた結果、自分に力を貸してくれそうな者がいた事を思い出す。すぐに彼は交信を行い、アイリスから情報を得て目当ての人物の元へ向かう――
「――なるほど、それで私の元に訪れたんですか」
「ホネえもん。力を貸してよ」
「誰がホネえもんですか。まあ、どら焼きは大好きですけど」
「ぷるっくりんっ?」
レナが訪れたのはプルミンをペットとして勝っているホネミンであり、現在の彼女は世界各地の遺跡を巡って旅をしていた。先日のタイムマシンの一件もあり、ホネミンは勇者の残した遺跡の中から現在でも扱える装置がないのか確認の旅に出た。
幸運な事にホネミンは深淵の森にある遺跡に立ち寄っており、彼女に会うためにレナは遺跡まで戻ってきた。ホネミンは事情を聞くと彼女も地下迷宮に用事があったので同行する事を承諾してくれた。
「久しぶりカゲさん」
「その呼び方は止めてくれ……」
「ウォンッ(久しぶり)」
「ふっ、相変わらず元気そうだな」
「あれ?俺よりウルと仲良くなってない?」
シノビはかつてウルと競争した事もあり、驚くべき事に移動速度ならばシノビは一時の間ならばウルに勝る。しかし、体力の方はウルには敵わず、短距離走ならシノビが勝つが長距離走ならばウルに分がある。シノビとウルはお互いの手と前脚を重ね合わせて友情を確かめた。
ハンゾウは和国に帰国する間はシノビがレナの護衛役となり、その代わりにマリアの護衛は一時的に他の者が行う。そちらに関してはハヅキ家の者が護衛を行うらしく、シノビとしては自分以外の者がマリアの護衛を行う事には不満があるが、マリアの命令なのでレナの護衛に渋々と従う。
「それで残りの依頼はどれくらい残っている?」
「えっと、やっと半分終わった所かな。残りは3つだけど……」
「あまり冒険都市を離れたくはない。次の依頼は冒険都市から一番近い場所を選んでくれ」
「まあ、別にいいけど……」
仕事が終えればすぐにマリアの元に戻るためにシノビは残りの依頼の中から、冒険都市から最も近い仕事を探す。そして彼が認めたのは王都での地下の調査だった。
「……この依頼なら問題ないだろう」
「王都の地下の調査?それって七魔将や魔物が封印されていたあの場所?」
王都の地下には遥か昔に作り出された迷宮が存在し、その場所は七魔将メドゥーサの住処でもあった。メドゥーサは魔王の命令で他の七魔将を封じており、かつては迷宮に迷い込んだ人間や魔物を石像と化していた。
メドゥーサがレナによって倒された事で石化されていた生物は元に戻ったが、現在の調査ではメドゥーサが石化させた存在はもう残っていないはずである。七魔将を最後に石像から解放された存在はいないはずだが、最近になって地下迷宮に調査に赴いた人間が行方不明になったらしい。
「今回の依頼人はナオ女王だ。地下迷宮に派遣した兵士の捜索、並びに地下迷宮の現況を調査して欲しいらしい」
「姉上か……それなら失敗できないな」
「ところで俺達以外に同行者はいないのか?」
「あ、ティナとリンダさんは家に戻ったよ。冒険都市の方にお姉ちゃんが来るらしいから会いに行ったんだ」
「そうか……」
少し前まで同行していたティナとリンダと他の魔物達は一足先に冒険都市へ帰還し、ハンゾウも帰国したので現在はレナとシノビとウルしかいない。呼べばコトミンなら付いて来てくれるだろうが、彼女は厳密には冒険者ではないため、わざわざ仕事を付き合わせるのは迷惑が掛かると思って呼ばない(本人が勝手に付いてくるならば別だが)。
「今回の依頼は捜索能力を持つ者が適任だ。その点では俺もお前も申し分ないだろう」
「でも、二人だけであんな馬鹿みたいに広い迷宮を調査するとなると時間が掛かるな……スラミンかヒトミンでも借りて来ようか?」
「スライムの感知能力か……確かに奴等の感知は侮れん」
「ウォンッ(嗅覚なら自信ある)」
スライムの感知能力ならば調査にも役立つだろうが、そのスラミンとヒトミンもティナ達の元に居る。家に戻ればスライム達を貸してくれるだろうが、そうなるとレナはティナの姉と鉢合わせになる。別にそれが問題というわけではないが、仕事中なので顔を合わせてもすぐに出て行かなければならない。
ティナの父親と兄はティナとレナの結婚に未だに完全には納得していないが、お姉さんの方は話が分かってティナの気持ちを尊重して二人の結婚を認めている。だからレナもティナの姉には嫌われないようにしたいが、仕事のために帰ってきてティナからスライム達だけを借りてまた仕事に戻るのは印象が悪くなるかもしれない。ティナよりも仕事を優先していると思われたら面倒な事になる。
(ティナのお姉さんは一番ティナを可愛がってるからな……でも、スラミン達以外に力を貸してくれそうなスライムなんて……あっ!!)
レナは考えた結果、自分に力を貸してくれそうな者がいた事を思い出す。すぐに彼は交信を行い、アイリスから情報を得て目当ての人物の元へ向かう――
「――なるほど、それで私の元に訪れたんですか」
「ホネえもん。力を貸してよ」
「誰がホネえもんですか。まあ、どら焼きは大好きですけど」
「ぷるっくりんっ?」
レナが訪れたのはプルミンをペットとして勝っているホネミンであり、現在の彼女は世界各地の遺跡を巡って旅をしていた。先日のタイムマシンの一件もあり、ホネミンは勇者の残した遺跡の中から現在でも扱える装置がないのか確認の旅に出た。
幸運な事にホネミンは深淵の森にある遺跡に立ち寄っており、彼女に会うためにレナは遺跡まで戻ってきた。ホネミンは事情を聞くと彼女も地下迷宮に用事があったので同行する事を承諾してくれた。
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