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蛇足編

閑話 《奉仕活動》

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――酒場で大暴れした剣聖達はマリアの指示で謹慎処分となったが、それだけでは罰としては不十分という事で奉仕活動もさせられていた。


「たくっ、何でこんな事をしないといけないんだよ……こっちは巻き込まれただけだってのによ」
『文句を言うな、黙って手を動かせ』
「へいへい……」


シュンはハヤテと共に氷雨のギルドの掃除を行い、掃除中は魔法の類を使うのを禁止されていた。精霊魔法を使用すれば誇りなど簡単に吹き飛ばせるのだが、それでは罰にはならないという事で二人は魔法抜きで掃除を行う。

氷雨のギルド内には後輩の冒険者が多数存在し、そんな彼等に見られながらの掃除は精神的にもきつい。一方で後輩の冒険者達も二人にどのように接していいのか分からずに距離を置く。


「お、おい……俺達も手伝った方がいいんじゃないか?」
「でも、マリアさんはあの二人だけに掃除させろって言ってたし……」
「けど、なんかここで掃除されるとちょっとここに居にくいよな……」


ひそひそと冒険者達は話し合い、そんな彼等に対してシュンはため息を吐き出す。自分達の起こした問題の責任とはいえ、こんな形で後輩冒険者に恥を見せつける羽目になるとは思わなかった。


「はあっ……今度からは酒を控えるか」
『……そういう問題じゃないと思うが』


二人はため息を吐きながらも掃除を続けた――





――ジャンヌはマリアの転移魔法でヨツバ王国にまで赴き、彼女は森に生えている大木を斧で切り落とす仕事を任された。旋斧の使い手というだけはあって彼女は瞬く間に大木を切り裂いていく。


「はああっ!!」
「おおっ……人間にしてはやるな」
「凄い力だ。あれは本当に人間なのか?」
「人間も中々やるな……」


緑影に所属するエルフと共にジャンヌは大木を斧で切り落とし、他の国と比べてヨツバ王国に生えている樹木は何倍もの大きさを誇る。だからエルフは大木を伐採する際は魔法の力を頼るのだが、ジャンヌは自力で大木を切り落としていく。


(中々にきついですが、良い修行になりますね!!)


大木を切りつける作業はかなりの疲労を伴うが、良い修行法になると思ったジャンヌは全力で作業に勤しむ――





――ロウガは氷雨の冒険者を引き連れて山奥にて修行に励んでいた。彼は新人の冒険者の指導を任され、山の中で冒険者たちを鍛え上げる。しかし、修行の間はロウガは他の冒険者と違って常に重りを装着していた。


「はあっ、はあっ……」
「だ、大丈夫ですか?」
「ロウガさん、あまり無理をしない方が……」
「わ、儂を年寄り扱いするな!!これぐらい、どうって事はないわ!!」


ロウガは新人冒険者を先導して山頂にある山小屋へ向かうが、途中で体力を消耗して中々に歩が進まない。そんな彼を冒険者達は心配するが、年下の冒険者に心配される事ほどロウガにとって屈辱はない。

山小屋へ辿り着くまでは休憩はできず、しかも普通の山と違って魔物の数も多い。ロウガの役目は新人冒険者を守りながら山籠もりを行い、彼等を一人前の冒険者に育て上げるのが仕事だった。


(くぅうっ……やはり、年には勝てないのか……)


いつもは強気のロウガだが、精神的にも肉体的にも追い詰められていた――





――ゴウライはとある鉱山にて発掘作業の手伝いを行い、マリアの指示で彼はミスリルの原材料であるミスリル鉱石を発掘するまで帰る事は許されなかった。最低でもミスリル鉱石を1トンは回収するまで彼女は掘り続ける。


「うおりゃあああっ!!」
「うおっ!?あ、あの新人凄いな……」
「美人な姉ちゃんなのに何て力だ……」
「しかし、あの格好は何とかならんのか……気になって仕方ない」


ゴウライは鎧を脱いだ状態で発掘作業を行い、彼女は全力で岩壁にピッケルを叩きつける。他の鉱夫はゴウライの迫力に気圧されるが、彼女の大胆な格好に目のやり場に困る。

現在のゴウライはシャツとズボンしか身に着けておらず、かなり露出度が高い恰好をしていた。こちらの格好は別にマリアの指示ではなく、動きやすさを重視してゴウライが自らなった格好である。


「ふんっ、ふんっ!!ぬう?またピッケルが壊れたぞ!!」
「お、おいおい……嬢ちゃん、張り切り過ぎだぞ!!何個壊してるんだ!?」
「仕方あるまい……こうなったら素手で壊す!!」
「何を言ってるんだ!?正気か!?」
「おい、止めろ!!血塗れになるぞ!!」
「大丈夫だ、この程度の岩壁に吾輩の拳は壊れん!!」


素手で岩壁を掘り起こそうとするゴウライに慌てて鉱夫が集まり、彼女を引き留めようとした――




――その頃、剣聖の喧嘩に巻き込まれたガロは何故か一緒に処罰を受けていた。彼はとある商会の仕事の手伝いを行い、何故かメイド服を着せられた状態で働いていた。


「何で俺だけこんな格好をしないといけないんだよ!?」
「そこ、静かにしなさい!!真面目に働かないと許しませんよ!!」
「いや~ほんまに助かったわ。アリスちゃん、しっかり指導するんやで」


ガロはドルトン商会で何故かメイドとして働かされ、誰よりも苦痛を伴う処罰を与えられていた。
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