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蛇足編
監獄都市に王妃が訪れた日
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「さっきからなんて顔をしてるんですかダインさん」
「な、何だよ……そんなに変な顔をしてたか?」
「してたぞ」
「してたの!?」
考え込んだ際にダインは仲間達に変な顔を見られていたらしく、恥ずかしくなって彼は顔を隠す。しかし、しばらくするとダインはミイネの言ったとある言葉が気になった。
「なあ、ミイネ……さっき、王妃の噂は監獄都市まで届いてたって言ったよな」
「ええ、結構有名でしたよ。前に監獄都市に訪れた事もありますからね」
「えっ!?監獄都市に王妃が!?」
「……本当か?」
監獄都市に王妃が訪れていたと聞いてダインとゴンゾウは驚愕し、ミイネによると何年か前に一度だけ王妃が監獄都市に訪れた事があるという。目的は不明だが、その当時で最も問題を起こしていた囚人を引き取ったらしい。
「王妃が監獄都市に訪れたのはとある囚人を引き取るためです。その囚人というのが非常に厄介な男で監獄署長も母さんも手を焼いてました」
「そ、そんなにやばい奴なのか……」
「やばいというよりはイカれてましたね。早々に始末するべきだったとぼやいてましたよ」
「ダイン、もしかしたらそいつは……レナが倒した男じゃないのか?」
「あ~!?そういえば居たな、そんな奴!!」
王妃が健在の頃、闘技祭が開かれる少し前に「ジン」という名前の囚人が暴れた。その囚人は拳鬼と謳われたアイラでさえも仕留めきれなかった極悪人であり、当時の冒険都市に滞在していた剣聖たちも苦戦した相手である。
ジンは冒険都市にて暴れていた時には既に正気を失い、とても手が付けられない状態だった。ジャンヌ、ロウガ、シュン、そしてシズネとも交戦し、最終的にはレナの手で倒された。もしも一対一で戦っていたら当時のレナでも勝てたかは分からない。
「ジン!?どうしてダインさん達がその名前を知ってるんですか?そいつですよ、王妃が連れて行った囚人は……」
「何だって!?」
「と言う事は元々奴は監獄都市に居たのか……それを王妃が連れ出した?」
「な、何だよそれ……」
ダインもジンと交戦しているので恐ろしさはよく理解しており、王妃が何の目的で監獄都市からジンを連れ去ったのは気になった。監獄都市は獣人国の領地に存在し、そもそもバルトロス王国の王妃と言えども気軽に訪れられる場所ではない。
監獄都市に移動するだけならともかく、囚人を引き取るなど普通ではあり得ない。少なくとも獣人国の中でも相当に偉い立場の人間が協力しなければならず、王妃は既に他の国の重要人物と繋がっていた可能性が高い。
「ミイネ、お前確か情報屋だったよな?ならジンの事は知ってるのか?」
「無茶を言わないでください。あの時の僕はまだこんなに小さい子供だったんですよ?それにジンの奴はイカれていて僕の鼠たちも捕食対象にしてたぐらいやばい奴なんですよ」
「そ、そうか……」
「でも、確かジンは僕が生まれる前から収監されているはずです。なんでも王国で有名な冒険者との戦いで深手を負ったところを捕まったとかどうとか……」
ジンに深手を負わせたのはアイラであり、彼女との戦いの後にジンは監獄都市に収監された事はミイネも知っていた。但し、彼女が知っているのは冒険者に敗れたという話であり、まさかレナの母親のアイラがジンを倒した事までは知らない。
「ジンは監獄都市に居た頃はどう過ごしていたんだ?」
「どうも何も、あいつはずっと懲罰房で閉じ込められていましたよ。外に出したら見境なく人を殺そうとするんで閉じ込めておくしかなかったんです」
「よく処刑されなかったな……」
「詳しくは知りませんが、ジンの力を惜しまれていました。狂人でなければもしかしたら監獄署長よりも強かったかもしれませんね」
「あ、あの署長より強いのか?」
「……かもしれない、というだけです」
ミイネは実の父親でもある監獄署長がジンに劣る事は認めたくはないらしく、それでもジンが気は狂っていたが恐ろしい力の持ち主であった事は認めている。ジンがいつ頃から正気を失ったのかは不明だが、監獄署長の見立てでは彼が気が狂い始めたのはアイラとの戦いが原因だと考えていた。
「ジンがおかしくなったのは冒険者との戦闘で頭を強打し、そのせいで思考回路がおかしくなったせいじゃないかと監獄署長は言ってました」
「そうなのか……その冒険者は誰だか知らないけど、いい迷惑だな。あいつのせいで僕達は本当に苦労したんだぞ」
「だが、強かったな。できる事なら正々堂々と戦いたかったが……」
「今のゴンゾウならあんな奴なんて敵じゃないだろ」
「どうかな……俺が気になるのはどうしてジンは鬼人化を使えたかだ」
「鬼人化?それってゴンゾウさんが時々使っている技ですよね」
ジンは巨人族ではないはずなのに鬼人化を扱え、その事だけがゴンゾウは長年疑問を抱いていた。本来であれば巨人族の中でも鬼人化を扱えるのは特殊な家系の巨人のみであり、誰もが扱える技術ではない。ジンは見た目は人間に近いが、その規格外の腕力と俊敏性から考えるに他の種族の血を取り込んでいたのは間違いない。
「な、何だよ……そんなに変な顔をしてたか?」
「してたぞ」
「してたの!?」
考え込んだ際にダインは仲間達に変な顔を見られていたらしく、恥ずかしくなって彼は顔を隠す。しかし、しばらくするとダインはミイネの言ったとある言葉が気になった。
「なあ、ミイネ……さっき、王妃の噂は監獄都市まで届いてたって言ったよな」
「ええ、結構有名でしたよ。前に監獄都市に訪れた事もありますからね」
「えっ!?監獄都市に王妃が!?」
「……本当か?」
監獄都市に王妃が訪れていたと聞いてダインとゴンゾウは驚愕し、ミイネによると何年か前に一度だけ王妃が監獄都市に訪れた事があるという。目的は不明だが、その当時で最も問題を起こしていた囚人を引き取ったらしい。
「王妃が監獄都市に訪れたのはとある囚人を引き取るためです。その囚人というのが非常に厄介な男で監獄署長も母さんも手を焼いてました」
「そ、そんなにやばい奴なのか……」
「やばいというよりはイカれてましたね。早々に始末するべきだったとぼやいてましたよ」
「ダイン、もしかしたらそいつは……レナが倒した男じゃないのか?」
「あ~!?そういえば居たな、そんな奴!!」
王妃が健在の頃、闘技祭が開かれる少し前に「ジン」という名前の囚人が暴れた。その囚人は拳鬼と謳われたアイラでさえも仕留めきれなかった極悪人であり、当時の冒険都市に滞在していた剣聖たちも苦戦した相手である。
ジンは冒険都市にて暴れていた時には既に正気を失い、とても手が付けられない状態だった。ジャンヌ、ロウガ、シュン、そしてシズネとも交戦し、最終的にはレナの手で倒された。もしも一対一で戦っていたら当時のレナでも勝てたかは分からない。
「ジン!?どうしてダインさん達がその名前を知ってるんですか?そいつですよ、王妃が連れて行った囚人は……」
「何だって!?」
「と言う事は元々奴は監獄都市に居たのか……それを王妃が連れ出した?」
「な、何だよそれ……」
ダインもジンと交戦しているので恐ろしさはよく理解しており、王妃が何の目的で監獄都市からジンを連れ去ったのは気になった。監獄都市は獣人国の領地に存在し、そもそもバルトロス王国の王妃と言えども気軽に訪れられる場所ではない。
監獄都市に移動するだけならともかく、囚人を引き取るなど普通ではあり得ない。少なくとも獣人国の中でも相当に偉い立場の人間が協力しなければならず、王妃は既に他の国の重要人物と繋がっていた可能性が高い。
「ミイネ、お前確か情報屋だったよな?ならジンの事は知ってるのか?」
「無茶を言わないでください。あの時の僕はまだこんなに小さい子供だったんですよ?それにジンの奴はイカれていて僕の鼠たちも捕食対象にしてたぐらいやばい奴なんですよ」
「そ、そうか……」
「でも、確かジンは僕が生まれる前から収監されているはずです。なんでも王国で有名な冒険者との戦いで深手を負ったところを捕まったとかどうとか……」
ジンに深手を負わせたのはアイラであり、彼女との戦いの後にジンは監獄都市に収監された事はミイネも知っていた。但し、彼女が知っているのは冒険者に敗れたという話であり、まさかレナの母親のアイラがジンを倒した事までは知らない。
「ジンは監獄都市に居た頃はどう過ごしていたんだ?」
「どうも何も、あいつはずっと懲罰房で閉じ込められていましたよ。外に出したら見境なく人を殺そうとするんで閉じ込めておくしかなかったんです」
「よく処刑されなかったな……」
「詳しくは知りませんが、ジンの力を惜しまれていました。狂人でなければもしかしたら監獄署長よりも強かったかもしれませんね」
「あ、あの署長より強いのか?」
「……かもしれない、というだけです」
ミイネは実の父親でもある監獄署長がジンに劣る事は認めたくはないらしく、それでもジンが気は狂っていたが恐ろしい力の持ち主であった事は認めている。ジンがいつ頃から正気を失ったのかは不明だが、監獄署長の見立てでは彼が気が狂い始めたのはアイラとの戦いが原因だと考えていた。
「ジンがおかしくなったのは冒険者との戦闘で頭を強打し、そのせいで思考回路がおかしくなったせいじゃないかと監獄署長は言ってました」
「そうなのか……その冒険者は誰だか知らないけど、いい迷惑だな。あいつのせいで僕達は本当に苦労したんだぞ」
「だが、強かったな。できる事なら正々堂々と戦いたかったが……」
「今のゴンゾウならあんな奴なんて敵じゃないだろ」
「どうかな……俺が気になるのはどうしてジンは鬼人化を使えたかだ」
「鬼人化?それってゴンゾウさんが時々使っている技ですよね」
ジンは巨人族ではないはずなのに鬼人化を扱え、その事だけがゴンゾウは長年疑問を抱いていた。本来であれば巨人族の中でも鬼人化を扱えるのは特殊な家系の巨人のみであり、誰もが扱える技術ではない。ジンは見た目は人間に近いが、その規格外の腕力と俊敏性から考えるに他の種族の血を取り込んでいたのは間違いない。
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