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蛇足編

心優しき巨人

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「俺達を舐めんじゃねえぞ!!てめえがいくらデカいと言っても、こいつの前じゃ一発だ!!」
「……何だそれ?そんな小さい短剣でゴンゾウを倒せると思ってるのか?」
「へへへ、馬鹿が……こいつにはたっぷりと猛毒が仕込んであるんだよ!!」
「毒!?」
「何てものを……」


毒を塗った短剣を取り出した荒くれに流石にダインとミイナも驚くが、それに対してゴンゾウは特に動じた風もなく、それどころか前に出てダインとミイナを庇う。


「……そんな物では俺は殺せない」
「な、何だと!?」
「試してみるか?」
「ゴンゾウ!?何を考えてるんだ!?こんな奴等は放っておけよ!!」
「そうですよ、相手にするだけ馬鹿らしい……」
「く、くそがっ……調子に乗るなよ!!」


ゴンゾウの挑発ともとれる言葉に短剣を持った男は駆け出し、本当にゴンゾウに目掛けて毒を塗った刃を放つ。それを見たダインとミイナは止めようとしたが、それを制したのはゴンゾウだった。


「大丈夫だ」
「大丈夫って……」
「うおりゃああっ!!」
「危ない!?」


自分を庇おうとするダインとミイナを止めると、短剣を抱えた男はゴンゾウの腕に目掛けて突き刺そうとした。しかし、それに対してゴンゾウは腕の筋肉を凝縮させて受け止め、鋼鉄以上の硬度へと変化させる。

巨人族が得意とする「硬化」の技能を使用し、毒が塗られた短剣をゴンゾウは受け止めた。短剣の刃はゴンゾウの腕に衝突した瞬間に逆に砕けてしまい、それを見た荒くれは呆気に取られた。


『はっ……!?』
「……もういいか?」


毒の塗られた短剣をゴンゾウは逃げもせずに正面から受け止め、逆に短剣の刃を砕いた。彼の腕には傷一つなく、毒が塗られていようと怪我さえしていなければ問題はない。腕に塗りつけられた毒を拭うと、ゴンゾウは荒くれ達に対して右手を振りかざす。


「お前達には反省が必要のようだな」
「え、ちょっ……」
「人を傷つけるのならば、自分も傷つけられる覚悟を身につけろ!!」
「「「うぎゃああああっ!?」」」


ゴンゾウの張り手一発で男達は派手に吹き飛び、それを見ていたダインとミイネはため息を吐き出す。荒くれが喧嘩を売ったのは間違いなく巨人族の中でもいずれは頂点に立てるほどの器を持つ巨人であり、相手があまりにも悪かった――





――荒くれを倒した後はゴンゾウは全員を縛り付け、街の警備兵の元へ連れて行く。どうやら捕まえた荒くれはこの街の人間が日頃から迷惑を掛けられていた有名な悪党らしく、彼等を捕まえたと知った警備隊長はゴンゾウに感謝の言葉を告げた。


「ありがとうございます!!本当にありがとうございます!!貴方のお陰でこの街に平和が戻りました!!」
「いや……気にしないでくれ」
「どうやらさっきの連中、相当に他の人に迷惑をかけていたようですね」
「そうみたいだな……」


警備隊長は何度もゴンゾウに頭を下げる姿を見てミイナとダインはひそひそと話し合い、その一方で何度も頭を下げられているゴンゾウは困った表情を浮かべる。


「こいつらは普段から観光客にちょっかいを掛けては金をせびろうとしてくるので、この街に訪れる観光客も大分減ってしまいました。我々も何度か捕まえようとしたのですが、こいつらは他にも悪党と徒党を組んでおりまして……」
「悪党?まだ他に仲間がいるのか?」
「ええ、最近に街に来た連中です。そいつらのせいでこの街の治安は今は最悪でして……」
「情けないですね、こんなに兵士がいるのに悪党を野放しにしているんですか?」
「こ、こらミイナ……あんまりそういう事はデカイ声で言うなよ」
「いえ、おっしゃる通りです。お恥ずかしい話ですが、私達だけでは対処できておりません……」


ゴンゾウが捕まえた荒くれはこの街に潜む悪党の一部でしかなく、現在の街では警備兵だけでは対処できない程の厄介な連中が潜んでいるらしい。その話を聞いたゴンゾウは放っては置けず、その連中の居場所を尋ねる。


「その悪党たちは何処に住んでいる?」
「え?それは……」
「ちょ、ちょっと待てよ!?ゴンゾウ、まさかそいつらを捕まえるつもりか!?」
「そうだ、何か問題はあるか?」
「問題って……」
「この人、本気で言ってますよ」


ダインの言葉にゴンゾウは心底不思議そうな表情を浮かべ、彼は悪党がいると聞かされて黙っていられなかった。しかし、この街に来たばかりにダイン達は別に街の人間に恩義があるわけでもなく、危険を冒して悪党を捕まえる義理はない。

だが、心優しい巨人族のゴンゾウは街に悪党がいると聞かされて黙ってはおれず、彼は自分一人でも悪党を捕まえるつもりだった。そんな彼を仲間としてダインやミイネが放っておけるはずがなく、仕方なく二人も付き合う事にした。
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