不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

アイラ(十代)VSレナ ※新作も投稿しました

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(ここが本当に過去の世界なら、この人は母さんなんだ。だとしたら正体がバレるのはまずい……けど、母さんを傷つけるわけにはいかないし、どうすればいいんだ?)


アイラに対してレナはどのように対処するべきか悩み、まさか実の母親とこのような形で対面するとは夢にも思わなかった。アイラは剣を交わしただけでレナの力量を感じ取り、手加減抜きで本気で切りかかる。


「正体を明かさないというのであればもう容赦はしません!!」
「まずいっ!?ホネミン、もっと離れてろ!!」
「ウルさん、背中に乗せてください!!」
「ウォンッ!!」
「ぷるんっ(退避)」


二つの木刀を振りかざすアイラを見てレナは直感で危険を感じ取り、ホネミン達を避難させた。アイラはお得意とする「剣舞」の戦技を発動させ、まるで舞うように剣の連続攻撃を繰り出す。


「はああっ!!」
「くっ!?」


無数の斬撃を繰り出すアイラに対してレナはオリハルコンの大剣と剣を重ね合わせて防ぐが、彼女の攻撃の一つ一つが隙がなく、的確に相手の急所へ目掛けて繰り出される。ジャンヌが得意とする回転剣技とも違った鋭い斬撃の連続攻撃であるため、全ての攻撃に対処するには相当な集中力を必要とした。

剣舞の戦技はレナも覚えているとはいえ、母親と比べて彼の剣舞は完成してはおらず、そもそもレナの場合は連続攻撃よりも一撃の威力を高める「剛剣」を得意とする。だからこそアイラのような速度に特化した剣士との相性は悪い。


(この時代の母上、ここまで強いのか……けど、シズネよりは遅い!!)


アイラとは攻撃手段は異なるが、速度を生かして相手を仕留める剣技と言えばシズネも得意としている。彼女の場合は刺突の戦技を中心とした剣技を扱い、その攻撃速度と突貫力は他の剣聖と比べても優れている。一撃の重さならばゴウライ、瞬間的な高速攻撃ならば居合を得意とするハヤテもいるが、シズネの長所は二人と違って瞬間的に攻撃を繰り出せる(居合の場合は溜めを必要とする)。


(ここだっ!!)


アイラの剣舞は見事ではあるが手元に剣を引き寄せる際に隙が生じ、それを見抜いたレナは両手の武器を振り払って彼女の木刀を弾き飛ばす。まさか自分の武器が弾かれるとは思わなかったアイラは目を見開く。


「きゃっ!?」
「……これで話は聞いてくれる?」
「くっ……舐めないで!!」


武器を弾かれてもアイラは戦意は喪失せず、彼女は勢いよく地面を踏み込むと、大地に亀裂が生じた。それを見たレナはアイラが得意とするのは剣術だけではなく、体術に関しても優れている事を思い出す。


「発勁!!」
「ぐふっ!?」
「嘘っ!?」


レナに目掛けてアイラは掌底を繰り出すと、彼の身体が後ろに傾く。それを見たホネミンはレナが敗れたのかと焦ったが、数歩ほど下がるとレナは両手の剣を地面に突き刺してどうにか耐え切る。


「いててっ……今のはやばかった」
「なっ!?そ、そんな馬鹿なっ!?」
「ああ、びっくりした……驚かなさないでください」


自分の繰り出した攻撃を受けてレナが耐えきった事にアイラは驚き、生身の人間が相手ならば彼女が繰り出す発勁は耐えられるはずがない。だが、レナはただの人間ではなく、人類の中でも最高クラスの肉体を誇る。

魔術師として生まれたレナは戦闘職の人間ほど肉体は頑丈ではないが、彼は支援魔法を極める事で限界以上に身体能力を強化させる事ができる。それに剣鬼でもある彼の反射神経ならば攻撃を受ける寸前に反応し、後ろに下がる事で発勁の威力を殺した。


(体術の修行はリンダから時々受けていたから何とかなったな……)


ティナと結婚してから彼女の護衛役のリンダとも一緒に暮らす様になり、レナはリンダから時々体術の指導を受けていた。剣術以外に戦う術を覚えるのは悪い事ではなく、実際に母親のアイラも剣だけではなく体術も極めたからこそ「剣姫」や「拳姫」という異名を得た。


(それにしてもこの威力……母上はこの年齢の時から凄かったのか)


威力を落としたとはいえ、アイラの発勁を受けたレナは口元から血を流す。もしも頭部に衝撃を受けていたら確実に脳震盪を起して意識を失っていたため、この時代のアイラは既に格闘家としても完成された強さを誇る。レナの知るアイラも強かったが、この時代の彼女は若さ故に力が溢れていた。


「私の発勁を受けて耐えられるなんて……貴方、ただの人間ではないわね!?まさか巨人族のハーフ!?」
「四分の一は森人族の血が流れてますけど、俺は人間です……あの、俺達はもう帰るんで見逃してくれませんか?」
「……それは認められないわ。この遺跡は私の家が管理を任されている以上、遺跡を荒す輩は見逃せません!!」
「ですよね……」


逆の立場ならばレナも怪しい侵入者を逃すはずがなく、アイラは何があろうとレナ達を逃すつもりはなかった。例え武器を失おうと彼女は素手で立ち向かう構えを見せ、そんな彼女を見てレナはどうやって戦おうかと悩んでいると、二人の間に強烈な突風が横切る。




※新作「しがない補助魔術師、女勇者に付きまとわれる」も投稿しました。今回は長めの物語になりそうです。
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