上 下
1,743 / 2,083
真・最終章 七魔将編

空からの援護

しおりを挟む
「オアアッ……!?」
「はわっ!?」
「まずい、離れろウル!!」
「ウォンッ!!」
「「ぷるるんっ!?」」


背中の一部が氷漬けになった事で空を飛んでいた炎龍は体勢を崩してしまい、地上へ向けて落下するのを見てレナはウルに指示を出す。急いでウルはその場を離れると、炎龍は地面へと墜落した。

地面に落ちた炎龍の背中からホネミンは転げ落ちると、彼女は急いでレナ達の元へ駆け出す。この時にレナはラストを探すと、彼は炎龍の背中の上で氷漬けになっていた。だが、徐々に氷が溶け始めていく。


「ふんっ!!」
「うわっ!?復活しましたよ!!」
「やっぱりあの程度じゃ駄目か……」


火の聖痕の力を利用してラストは氷を溶かし切ると、炎龍の背中にも炎を走らせて氷を解かす。改めてレナ達は炎龍に乗り込んだラストと向き合うが、ここでホネミンは装着していたヘッドフォンから連絡が届いた。


『あ、あ~……本日は晴天なり、聞こえますか?』
「はっ!?この声はリーリスさん!?」
『ちゃんと聞こえるようですね。こちらの準備が整いましたのでいつでも合図を出してください』
「分かりました。レナさん、これを付けてください」
「うわ、こんな時になんだよ……」


ホネミンはリーリスの言葉を聞くとレナの片耳にヘッドフォンを装着し、いきなり連絡機器を渡されたレナは戸惑う。その一方でラストの方は二人が身に付けているヘッドフォンを見て訝し気な表情を浮かべた。


「それは魔道具か?いや、そういえば勇者の中にそんな物を身に付けているような人間がいたはず……何のつもりかは知らないが覚悟はいいな?」
「そっちの方こそ覚悟して下さい!!レナさん、合図を!!」
「合図って……まさか、本当にあれをやる気か!?」


レナは上空を見上げると昼間だというのに星のように光り輝く物が見えた。先ほどレナ達を救出したリーリスが遥か上空に浮かんでおり、彼女は炎龍を倒すためにある物を用意していた。もしも彼女の用意した物が炎龍に当てられる事ができれば聖剣を使用せずとも倒せる可能性は十分にある。



――リーリスは宇宙空間に存在する衛星を移動させ、炎龍が存在する地域に落下するように準備を進めていた。衛星を地上へ向けて降下させる事で隕石のように炎龍に衝突させれば確実に大きな損傷を与えられる。いかに炎龍が地上最強の生物と言えども宇宙空間から落下する衛星に衝突すれば無事なはずがない。



但し、この作戦を実行する場合は衛星が衝突させる地域に大きな被害が生まれる。だが、幸運な事に炎龍が存在する地域には生物は全て逃げ出してしまい、レナ達の場合は水晶札を使用すれば転移で逃げる事ができる。しかし、確実に衛星を当てる事ができなければならず、攻撃の合図タイミングは見定めなければならない。


(衛星をぶち当てる事ができればいくら炎龍でも勝てるはずだ。だけど、失敗すれば……考えたくもないな)


転移が行えるのは一回きりであるため、もしも失敗すればレナ達はこの地に戻るのに相当な時間が掛かる。その間に炎龍が大人しくする保証はなく、もしかしたら王都や冒険都市に攻撃を仕掛ける可能性もあった。

何としても攻撃を外すわけにはいかず、レナは退魔刀を構えて炎龍の動きを止める方法を考えた。ダインがこの場に存在すれば彼の影魔法で炎龍を拘束する事もできたかもしれないが、生憎と火属性の魔力を宿す炎龍とは相性が悪い。影を作り出しても炎龍が生み出す炎で影が消失するのは目に見えていた。


(こいつの動きを止めるとしたら……電撃しかない)


氷漬けにしようとしてもあっさりと抜け出されたため、残された手段は電撃を相手に浴びせて麻痺させるしかない。他に良案は思いつかず、レナは退魔刀を錬金術師の能力で聖剣カラドボルグに変化させようとした。


(俺が作り出す聖剣は本物と同じ能力だけど、俺自身が聖剣を使いこなせるわけじゃないから本当の力を使えない。こんな事ならハルナを連れて来ればよかったな)


作戦のために仕方ないとはいえ、レナはこの場にハルナがいない事に残念に思う。彼女がいない以上は自分が代わりにやるしかないとレナは退魔刀を構えようとした時、炎龍に乗り込んでいたラストは上空を見上げた。


「嫌な気配を感じる……上に何かいるな」
「なっ!?」
「えっ!?」


歴戦の強者の勘なのか、ラストは上空を見上げると彼は昼間なのに輝いている星のような物を感じ取った。それを確認したラストは嫌な予感を感じ取り、炎龍に命令を下す。


「炎龍!!焼き払えっ!!」
「アガァアアアッ!!」


命令を下された炎龍は上空に目掛けて口元を開くと、それを見たレナは咄嗟に泊めようとした。しかし、炎龍は全身から熱気を発生させて近寄る事ができず、口内に膨大な火属性の魔力を蓄積させていく。

この時にラストは炎龍の背中にしがみつき、火の聖痕を発動させた状態で炎龍の身体に触れた。すると炎龍の背中に同じく火の聖痕の紋様が浮き上がり、あろう事かラストは炎龍に一時的に宿。聖痕は魔力を増幅させる機能を持つため、元から膨大な火属性の魔力を有する炎龍の力がさらに極限に高めて攻撃させた。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。