上 下
1,739 / 2,083
真・最終章 七魔将編

炎龍戦

しおりを挟む
「来ますよ!!避けてください!!」
「ウル!!」
「ウォオオンッ!!」


上空から迫りくる炎塊に対してウルは駆け出すと、隕石の如き勢いで地上に炎塊が衝突する。炎というよりも爆撃という表現が正しく、もしも反応が遅れていればレナ達は爆炎に飲み込まれていた。

初撃はどうにか逃げ切れたが、次々と地上へ向けて炎塊が落下していく。それに対してレナは退魔刀と鏡刀を構えるが、下手に炎塊に攻撃すれば爆炎に襲われてしまう。そこでホネミンはレナに魔法で対処する様に助言した。


「剣では駄目です!!魔法を撃って空中で爆破してください!!」
「仕方ないな……火炎弾!!」
「ウォンッ!?」


武器を戻したレナは空に向けて両手を構えると、一際大きな火炎弾を放つ。遠距離攻撃ならば風刃の方が攻撃速度も規模も大きいが、風属性の魔力では火属性の魔力に対抗はできない。場合によっては魔法を吸収されて最悪の結果を生み出す。

落ちてくる炎塊に対してレナは火炎弾を撃ち込む事で空中で爆発させ、爆発に巻き込まれた他の炎塊が爆発を繰り返す。連鎖的に空中で爆発が起きて地上に存在するレナ達は難を逃れるが、あまり喜んではいられない。


「炎龍の元へ向かいましょう!!こうなったらそれしか方法はありません!!」
「分かってる!!ウル、走れ!!」
「ウォオオオンッ!!」


レナの命令通りにウルは火山跡地に目掛けて突っ込み、全速力で地上を駆け抜けた。既に空から降り注ぐ炎塊によって地上は火の海と化そうとしていたが、それに対してレナはホネミンに声をかける。


「ホネミン!!頼むぞ!!」
「仕方ないですね、予定よりは大分早くなりましたが……魔装!!」
「ウォンッ!!」


ホネミンはウルにしがみつくと自分の魔力を送り込み、武器に魔力を纏わせる魔刀術の要領でウルの全体に魔力を包み込む。やがてウルは全身が白色の魔力に覆われ、ホネミンの作り出した魔鎧を身に付けた。


「よし、これならいけるはずだ!!頑張れウル!!」
『ガウッ!!』
「ううっ……ちょっとこれはきついですね、私でも長くは持ちませんよ」


魔鎧をまとったウルは火の海を駆け抜け、ホネミンが作り出したを魔鎧のお陰で炎を浴びても肉体を守る事ができた。但し、この方法だとホネミンの負担が大きいために急いで火の海を抜け出さなければならない。

火属性の魔力で生み出された炎は普通の水では消す事はできず、水属性の魔法かあるいは時間経過による自然消滅まで待たなければならない。そのために火の海を突破するまでの間はウルを守らなければならず、レナは彼の背中に乗りながら火山跡地までの距離を測る。


「奴は何処にいる!?」
「魔力が大き過ぎて近すぎると感知系の能力も上手く作動しませんね……こういう時こそアイリス様頼りです!!」
「分かってる!!」


レナはアイリスと交信して炎龍の正確な位置を探ろうとした時、唐突に上空から降り注いでいた炎塊が消え去る。そしてレナ達の立っている場所が影に覆われると、即座に全員が上空を見上げて驚愕の表情を浮かべた。





「――待っていたぞ、人間共」




上空に存在したのは炎龍であり、そして炎龍の頭の上には七魔将のラストの姿があった。実際に顔を合わせるのは二度目だが、レナはラストを見て直感で気づいた。これまでに戦ってきた七魔将も強かったが、この男は別格の存在だと剣鬼の本能が語り掛ける。


(こいつがラスト……七魔将の最強の将軍か)


七魔将の長を勤め、魔王の右腕として世界の国々を恐怖に陥れた存在を前にしてレナは無意識に退魔刀を抜く。そんなレナ達に対してラストは炎龍に乗り込んだ状態で見下ろし、そして彼は炎龍に命令を下す。


「焼き尽くせ」
「まずい!?レナさん、防いでください!!」
「分かってる!!ウル、伏せろ!!」
『ウォンッ!?』


ラストの言葉を聞いて彼が次にどのような行動を取るのかを理解したレナは退魔刀を構えると、炎龍はラストの命令に従って口元を開く。ラストの目的は至近距離からの炎龍の火炎の吐息であり、レナ達を言葉通りに焼き尽くそうとする。

火竜の火炎の吐息も相当な威力を誇るが、その火竜よりも圧倒的な力を誇る炎龍の放つ火炎の吐息は大地を焼き尽くす。まともに受ければ炎には強い耐性を持つ地竜であろうと耐え切れず、正に世界を滅ぼす力を持つ存在に相応しい攻撃だった。



――オアアアアアッ!!



炎龍は顎が張り裂けないばかりに口元を開くと、特大の火炎の塊を放つ。それを見たレナは避け切れないと判断すると、彼は退魔刀を構えて迎撃の準備を行う。ガジンによって打ち直された退魔刀には炎の紋様が浮かび、彼は退魔刀を信じて炎龍の攻撃を迎え撃つ。


(信じるんだ、この剣を……今までに培った力を!!)


自分を支え続けた愛剣と培ってきた戦闘技術を信じてレナは炎龍の攻撃を待ち構えると、遂に炎龍は特大の火炎の塊を放つ。仮に避けたとしても地上に衝突した時点で大地が吹き飛び、レナ達は爆発に巻き込まれて確実に死亡する。ならば生き延びるためには正面から立ち向かうしかなかった。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。