上 下
1,725 / 2,083
真・最終章 七魔将編

地の底

しおりを挟む
炎龍の復活を実行したのはラストは自分だけでは目的を達成できず、この世界の人間に対抗するためには大きな力を必要とした。他の七魔将を従えて行動するという手段もあったが、彼等では残念ながら力不足だった。復活を果たした際にラストはレナ達と遭遇し、その時に彼等の力を見抜いた。

ラストが恐れたのはマリアとレナであり、この二人から感じ取れる魔力はラストが封印される前の時代に存在した勇者をも大きく上回る。仮にラストが正面から戦ったとしても確実に勝てる保証はなく、だからこそラストは炎龍の復活させるしかなかった。炎龍の存在は封印される前から彼は知っており、その封印を解除する方法も把握していた。

実を言えば炎龍は魔王も目を付けていた存在であったため、もしも人間達との戦いで追い詰められれば魔王は炎龍を復活させるつもりだった。しかし、想定以上の炎龍の強大な力を感じ取った魔王は計画を中断し、あくまでも自分達の勢力だけで目的を果たそうとする。だが、疑心暗鬼になった魔王は七魔将同士を争わせて封印させてしまう。

ラストは自分が魔王に封印された事に怒りは抱かず、むしろ魔王の代わりに死ぬ事ができなかった自分に恥を思う。しかし、死んだ魔王のためにも彼は炎龍を利用して魔王を滅ぼした国々の復讐を誓う。


「あと少しか……」


炎龍が地面を掘り進め、やがて大量の魔石が埋まった地層に辿り着く。遂に星の核に最も近い場所に到達したラストは炎龍の力を完全に目覚めさせるために命令を下す。


「喰らえっ!!」


命令のままに炎龍は地面の中に埋もれた大量の魔石を口にすると、土砂ごと飲み込んで体内へと吸収する。その直後に炎龍の身体に異変が訪れ始め、縮まっていた羽根が伸びて全身が赤く発光した。



――グギャアアアアッ!!



高密度の魔力の魔石を喰らった事で炎龍の全身に魔力が流れ込み、封印によって衰えていた肉体が活性化して徐々に力が復活する。むしろ元々の力よりも遥かに強い力が目覚め始め、やがて炎龍の背中に新たに翼が生えた。

背中に四つの羽根を生やす事に成功した炎龍は飛翔すると、地上へ向けて一直線に進んでいく。ラストは炎龍の背中にしがみつき、長い時を眠っていたせいで退化してしまった翼が元に戻り、それどころか新しい翼を生やす進化を遂げた炎龍に感動する。


「そうだ、この力だ……この力さえあれば!!」


七魔将の中では冷静沈着で滅多な事では取り乱さない男と言われていたラストだが、今回ばかりは喜びを抑えきれずに歓喜する。そして遂に炎龍が地上を抜けて空中に浮かび上がると、ラストは手始めに命令を下す。


「炎龍……お前の力を見せて見ろ」
「アガァアアアアッ!!」


命じられるがままに炎龍は口元を大きく開くと、地上に存在する山に目掛けて口元を開く。自分を封印するために作り出された山に炎龍は怒りを込めた表情で口元を向けると、背中の翼が赤色に発光した。そして次の瞬間に口内から熱線が放たれて山へと降り注ぐ。

熱線は上から山を貫いて地面を貫通し、そのまま熱線を放ち続けると山全体が崩れ始める。まるで風船のように山が膨れ始めると、内側に蓄積された火属性の魔力が暴発して爆発を引き起こす。その爆発は正に火山の噴火の如く上昇し、巨大な火柱と化した。

今回の火柱は山全体を崩す程の規模と威力を誇り、マリアの最上級魔法すらも上回る破壊力だった。かつてレナ達が退治したどの竜種よりも強大な力を誇り、その力は古代龍にも匹敵する。


「素晴らしい……!!」


ラストは火柱に飲み込まれた山を見て身体を震わせ、炎龍の想像以上の力に焦りさえも抱く。これほどの強大な力を持つ炎龍を自分が従えられるのかという不安はあったが、彼はホムラから奪った火属性の聖痕を浮き上がらせた。

他者から魔力を奪う能力を持つラストは聖痕の力さえも吸収し、それを利用して炎龍を従えさせた。いくら炎龍が強大な力を持とうと聖痕を持つラストには通じず、それどころか炎龍の体内に吸収された魔力の一部を吸収する事で自分の強化を行う。


「もうすぐに奴等もここへ来るだろう。お前達の仇を討つときが来たか……」


ラストは胸元から懐中時計を取り出すと、その内側には写真が張り付けられていた。この写真は勇者が残した射影機なる物を利用して撮影した写真であり、写真には七魔将と魔王の姿が映し出されていた。たった一枚だけ残した写真であり、ラストは写真に映し出された七魔将と魔王の姿を見て決意する。


「仇は必ず討つ」


亡き魔王と自分の犠牲となった七魔将のためにラストは目的を果たす事を誓い、この地にてレナ達が訪れるのを待つ。炎龍を利用して都市に攻め込まないのはその方法だと自分に反抗の意志を抱く者を一網打尽にする事はできず、敢えて敵が動くまで待つ事にした。ラストは最初の一戦でこの世界の自分に対抗できる戦力を殲滅させ、必ず目的を果たす事を誓う。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。