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真・最終章 七魔将編

カノンと王妃の関係

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「こんな物を書き残していたなんてね……まあ、どうでもいいわ」


大将軍だったとはいえ、カノンは国王とは殆ど面識がなかった。彼女が大将軍の地位に就けたのは王妃の計らいであり、どうして彼女が大将軍になれたのかと言うと彼女が信頼する配下は殆どが子供だったため、腕は確かで金さえ詰めばどんな仕事も行うカノンを王妃は招いた。

カノンも王妃と初めて会った時の事は忘れられず、ある時に大将軍のミドルと共に王妃は訪れた。王妃はカノンを自分に仕えるように説得はせず、あくまでも金の関係で自分に協力する様に促した。


『貴方は私の言う通りにしてくれればいい。そうすれば何不自由のない裕福な生活を与えてあげるわ』
『裕福な生活ね……もしも断ると言ったら?』
『別に何もしない。我々はここで帰らせてもらう』


いきなり訪れた王妃とミドルにカノンは警戒心を高めるが、意外にも彼女が頼みを断っても二人は何かするつもりはなかった。カノンはもしも自分の元に訪れた事を誰かに話せば王妃にとっては不都合になるのではないかと思ったが、彼女の次の言葉に衝撃を受ける。


『貴女が持つ魔銃は使用するのにお金が掛かるらしいわね。この地方の魔石も高騰しているし、色々と大変でしょう?』
『……ちょっと待ちなさいよ、どうしてその事を知ってるのよ』


カノンは魔銃の存在を知っている王妃に驚き、確かに彼女はこの時期から魔銃を所持していたが、人前で見せた事はない。この時のカノンは金銭的な問題で滅多に魔銃は使用せず、仕事を引き受ける際も人前では魔銃を一度も使用した事がない。

どうして自分しか知らないはずの魔銃の事を王妃が知っているのかとカノンは戦慄し、彼の後ろに立つミドルが懐から小袋を取り出してカノンに渡す。カノンは渡された小袋の中身を見て驚愕した。


『今日の所は挨拶だけにしておくわ。それは自由にしてちょうだい、王都一の鍛冶師に作らせた物だから問題なく使えるはずよ』
『な、何よこれは……!?』


小袋の中身を確認したカノンは衝撃の表情を浮かべ、彼女が渡された小袋には魔銃の弾丸に必要な魔石が大量に入っていた。しかも一つ一つが銃弾の形に削り取られており、それを見たカノンは焦りを抱く。

彼女が使用するバレットの魔銃は魔石を銃弾の形に削り取ってから装填する必要があり、普通の魔石では扱う事はできない。しかし、王妃はそれを事前に知っていたかのように鍛冶師に命令して彼女が最も欲する魔石の銃弾を大量に用意していた。


『では、失礼するわね』
『次に会う時にはちゃんとした服装に整えて置いた方がよろしいですよ』
『ま、待ちなさい!?』


挨拶代わりにカノンに大量の魔石弾を渡した王妃とミドルは立ち去ろうとすると、慌ててカノンは二人を引き留めようとした。しかし、この時に王妃に手を伸ばしたのはカノンに誤りであり、ミドルは凄まじい気迫を発してカノンの腕を掴む。


『王妃様に触れないように』
『ひっ!?』


優男だと思っていたミドルが凄まじい気迫を発して自分を掴んできた事にカノンは焦りを覚え、まるで別人のように豹変したミドルにカノンは焦りを抱く。そんな彼に対して王妃は困ったように告げる。


『止めなさい、彼女は脅しでどうにかなる相手じゃないわ』
『……失礼しました』
『な、何なのよあんたら……』


王妃の命令を受けてミドルはカノンの手を離すと、彼女は呆然と二人を見送る事しかできなかった。後にカノンは悩んだ末に王妃の陣営に加入する事を決め、こうして彼女は大将軍の地位に就いた――





――昔の事を思い出しながらカノンはベッドの上に座り込み、未だに彼女は王妃が死んだとは信じられなかった。彼女にとっては王妃は恐るべき相手でもあり、同時にある種の尊敬を抱いていた。


「怖い女だったけど……仕事相手としては最高だったわね」


カノンは貴族でもない自分を国の大将軍にまでさせた王妃の権力に恐れを抱いた一方、彼女が味方ならばこれ以上に心強い存在はいなかった。だから王妃に仕えていた時は裏切ろうとは一度も考えず、レナ達に負けて拘束された時も彼女が助けに来てくれると信じていた。

実際に王妃は助けてれたし、彼女の傍にはミドルを筆頭に年齢は若いが能力が優れた子供達が揃っていた。子供達は王妃の死後にほぼ全員が生き甲斐を失ったかのように廃人同然となり、現在は親元に戻っている。ナオの妹の双子も最初の頃は落ち込んでいたがアイラが二人の母親代わりとして接してくれるようになってから元気を取り戻す。


「……あの女の部屋、そういえば入った事はないわね」


王妃の部屋の事を思い出したカノンは彼女の部屋に何かないのかと考え、国王の部屋の掃除を中断して王妃の部屋に向かう事にした。幸いにも現在は監視の目がないため、カノンは王妃の部屋へ向かうのを妨げる存在はいない。城内には兵士はいるが、使用人の格好をしているカノンが怪しまれる事はない。
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