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真・最終章 七魔将編

アイラとマリアの過去

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――レナ達が訓練場に出向いている頃、王城ではとある人物がアイラの元で指導を受けていた。その人物の正体はカノンであり、元大将軍でありながらレナ達を裏切って七魔将の味方に付き、その後に捕まって現在は王城に送り込まれていた。


「次はこっちの部屋の掃除をお願いね」
「はあっ、はあっ……い、いい加減にしなさいよ。どれだけ掃除をやらせるのよ」
「何言ってるの、まだ10分の1も終わってないわよ。ほら、頑張って」
「む、無茶言うんじゃないわよ……そもそも何よこの格好!?」


カノンはアイラの指示で彼女が愛用するビキニアーマーを装備した状態で掃除を行っていた。しかもアイラが用意したビキニアーマーは特殊仕様で魔力を吸収する機能を持つ。


「カノンちゃんも元は大将軍なんだからこれぐらいの装備は平気でしょう?」
「あ、あんたね……あたしは武器を生かして戦うのよ!!身体なんて鍛える必要ないわよ!!」
「こら、アイラさんに失礼な口を利くな!!」
「何であんたも一緒にいるのよ!?」


掃除を行っているのはカノンだけではなく、何故か女王であるはずのナオも参加していた。彼女はテキパキと掃除を行い、完璧に仕事を仕上げる。


「あんた女王でしょ!?こんな使用人の格好や仕事して頭おかしいんじゃないの!?」
「何を言う!!これも立派な修行だ!!私も女王だがそれ以前に武人だ!!」
「武人はこんな事しないでしょうが!!」
「そんな事ないわよ、私も家にいた頃はよくやらされていたわ」
「それはあんたの環境が特殊なだけでしょうが!!」


ハヅキ家では掃除も修行の一環に組み込まれ、アイラは妹のマリアと共に掃除を行っていたという。実際の所は修行といっても花嫁修業といった感じだが、アイラは掃除を行いながら昔の事を思い出す。

今では裕福な生活を送るアイラとマリアだが、家で暮らしていた時は共に雑用を行っていた。料理、洗濯、掃除、花の水やり、一通りの舵をやらされていた(ちなみにアイラよりも妹のマリアの方が常に上手かった)。


「うふふ、懐かしいわね。冒険者に成り立ての頃はこうしてよく仕事で掃除をしていたわ」
「冒険者はそんな仕事までするのですか?」
「階級が低い冒険者は雑用の仕事を繰り返すのが当たり前だったわ~」


冒険者の仕事は魔物の退治だけではなく、雑用などの仕事もよく依頼されていた。マリアもアイラも新人の冒険者だった頃は割と雑用の仕事をこなしていたという。


「あの氷雨のギルドマスターが雑用ね……とても想像できないわ」
「そんな事ないわよ、あの子は家事は得意よ。だけど、昔は人見知りで私以外の人とは殆ど喋らなかったわね。同じ冒険者の仲間を作る時は苦労したわね」
「あのマリア殿が……」


今は考えられないが、昔のマリアは人見知りで姉であるアイラ以外に心を許さず、他の冒険者と組む事は滅多になかった。それでも冒険者として過ごす内に彼女も社交性を身に付け、仲間を作って共にS級冒険者まで上り詰めた。


「アイラさん、昔の話を聞かせてくれませんか?例えば冒険者になったばかりの頃とか……」
「そうね、ならちょっと休憩しましょうか」
「ちょっと言わず、ずっと話してていいわよ……」


ナオはアイラの過去に興味を抱き、ヨツバ王国を抜け出してバルトロス王国へ来たばかりの頃のアイラとマリアの話を聞かせてもらう。カノンもナオに賛同し、少しでも休めるのならば昔の自慢話などいくらでも聞きたかった。


「どこから話そうかしら……そうね、あれはまだ私が冒険者に成り立ての頃、初めて討伐系の依頼を受けた時の話でもしようかしら」
「おおっ!!」
「討伐系の仕事ね……どうせ、新人の冒険者なんだからゴブリンと一角兎みたいに弱い奴を狩っただけでしょ?」
「そうね、ゴブリンと言えばゴブリンなのだけど……」


昔の事を思い出したアイラは感慨深げな表情を浮かべ、当時の出来事を話し始める――






――20年以上前、アイラとマリアはハヅキ家と決別してヨツバ王国を出て行った。ハヅキ家の跡継ぎが出て行った事で当時のヨツバ王国は混乱を引き起こしたが、アイラとマリアは自由な生活を求めてバルトロス王国へ踏み込む。

着の身着のままで出て行ったためにアイラもマリアも金銭に余裕はなく、彼女達は仕事を探す事にした。剣と魔法の腕には自信があったので二人は冒険者に成る事にしたが、試験を突破する際に少々問題を起こしてしまう。


「お、おい!!生きてるか!?」
「駄目だ、完全に伸びてやがる……おい、嬢ちゃん!!ちょっとやり過ぎだろう!?」
「え?でも、全力を出していいと言ったから……」
「だからって顔面がこんな風になるまで殴らなくていいだろ!?」
「う、ああっ……」


試験の際にアイラは試験官を務めた男性をタコ殴りにしてしまい、顔面が腫れあがって素顔が確認できなかった。試験官は可憐な少女にしか見えないアイラに完全に油断し、隙を突かれて一方的に殴りつけられる。




※多分、この頃のアイラは冒険者試験を受けた時のレナよりも強いです
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