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真・最終章 七魔将編
シズネの変異
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――同時刻、砂漠の空間にてシズネは空を仰いでいた。彼女の周囲には凍り付いたサンドゴーレムが群がり、砂漠の中から黒門が出現していた。彼女はたった一人でサンドゴーレムの群れを撃退し、辛うじて勝利を掴み取った。
「これはいったい……どういう事なの?」
シズネは自分の両手を見つめながら呆然と呟き、周囲に存在する氷像と化したサンドゴーレムを見渡す。このような熱気に覆われた空間にも関わらずに氷は溶ける様子はなく、仮に溶けたとしても内部の核は機能せずに崩れ去るだろう。
彼女が立っている場所だけが砂漠の空間の中で唯一凍り付いており、当然だが凍結化させたのはシズネの雪月花の力である。しかし、これまでの彼女ならば信じられない程の魔剣の力を引き出したが、身体の方は至って平気だった。
(何が起きているの!?自分の身体なのに自分じゃないみたい……)
今のシズネは理由は不明だが魔力が以前よりも高まっており、聖痕の力だけでは説明できない程に魔剣の力を引き出す事ができた。この肉体の異変は前にも覚えがあり、彼女はある結論に至る。
「まさかまだあの力が……!?」
もう完全に消え去ったと思われた力が残っていたのかとシズネは狼狽し、もしもこれが事実ならば一刻も早く他の人間に知らせなければならない。早く仲間と合流して自分の異変を伝えなければならず、彼女は黒門に目を向けた。
「この扉の紋様、大迷宮の転移台に刻まれている紋様と似ているわね。これを開けば別の場所に転移できるのかしら……」
魔物を倒した瞬間に出現した黒門を見てシズネはこれまでの経験から次の空間に転移するための扉だと勘付く。彼女は扉を開こうとした時、腰に差した雪月花が震え出す。
「雪月花?どうしたというの?」
唐突に雪月花が震え出した事にシズネは驚き、彼女の魔剣は何か危険を知らせるように振動する。シズネは雪月花の異変に気付いて周囲を見渡す。特に怪しい気配は感じられないが、彼女の長年の戦闘経験がこのような場合は碌な事が起きない事は嫌でも知っていた。
雪月花を何時でも抜ける状態で彼女は周囲を警戒し、慎重に黒門へと近づく。何か分からないがここに残るのはまずいと判断したシズネは黒門を開いて次の空間に転移を試みる。
(嫌な予感がするわね……早くレナ達と合流しないと)
サンドゴーレムの群れとの戦闘は思ったよりも長引き、彼女は早く他の仲間と合流するために黒門を開いた――
――その一方でゴウライの方はスケルトンの大群を殲滅した後、新たに出現した黒門を開いて別の空間に辿り着いていた。その場所は雪山であり、彼女は吹雪が吹き溢れる雪山の中を歩いていた。
「うううっ……寒い!!寒すぎる!!」
ゴウライは金属製の甲冑を身に付けている事が仇となり、彼女は心底寒そうに雪山の洞窟の中で身を縮こまらせていた。熱い環境は慣れているが寒い場所は苦手としており、流石に鎧を脱いで彼女は肌をすり合わせて暖を取る。
「へっくしょんっ!!いかん、このままでは風邪を引いてしまう……ん?いや、吾輩は生まれた時から風邪を引いた事はないな。はっはっはっ……ぶえっくしょんっ!!」
流石のゴウライも極寒の環境は応えるらしく、どうにか身体を温めようと運動を行う。少しでも体温を高めるために彼女は腕立て伏せを行っていると、不意に洞窟の出入口の方から人影が現れた。
「むっ!?誰だ、吾輩を覗き見しているのは!!こっそり覗くぐらいなら堂々と覗け!!」
気配を感じ取ったゴウライは薄着にも関わらずに堂々と立ち上がって洞窟にいる人物に語り掛ける。羞恥心を何処かに置いてきたような彼女の言動にもしも仲間達がここにいたら呆れて何も言えないだろう。
しかし、洞窟の前に現れた人物は他の仲間達ではなかった。彼女は洞窟の前に現れた人物を見て首を傾げ、どうしてこんな場所に人がいるのかと疑問を抱く。ここは大迷宮の中で自分達以外に人間などいないと思い込んでいたが、彼女の前に現れたのはどう見ても人間の子供だった。
「誰だお前は?何処から入ってきた?」
「…………」
「ん?吾輩の顔に何かついているか?」
ゴウライの前に現れた子供は中性的な顔立ちのせいで少年なのか少女なのかも分からず、服装の方もボロキレのようなマントで身を隠していた。子供はゴウライの姿を一瞥し、何を思ったのかそのまま立ち去ろうとした。
「あ、待て!!何処へ行く気だ……ぬあっ、寒い!?」
「…………」
子供は何事もなかったかのように立ち去ろうとしたため、慌ててゴウライは引き留めようとしたが洞窟の外に出た瞬間に猛吹雪に襲われて彼女は慌てて洞窟内へ引き返す。その間にも子供は吹雪に包み込まれるように姿を消した――
――その後、しばらく時間が経過すると雪山の吹雪が収まり、装備を再装着したゴウライが洞窟の外に出た時には子供の姿は見えなくなっていた。子供の正体が気になったゴウライは捜索に向かう事にした。
※新作「凡人の俺と幼馴染の勇者」を投稿しましたのでよろしければそちらもお読みください。
「これはいったい……どういう事なの?」
シズネは自分の両手を見つめながら呆然と呟き、周囲に存在する氷像と化したサンドゴーレムを見渡す。このような熱気に覆われた空間にも関わらずに氷は溶ける様子はなく、仮に溶けたとしても内部の核は機能せずに崩れ去るだろう。
彼女が立っている場所だけが砂漠の空間の中で唯一凍り付いており、当然だが凍結化させたのはシズネの雪月花の力である。しかし、これまでの彼女ならば信じられない程の魔剣の力を引き出したが、身体の方は至って平気だった。
(何が起きているの!?自分の身体なのに自分じゃないみたい……)
今のシズネは理由は不明だが魔力が以前よりも高まっており、聖痕の力だけでは説明できない程に魔剣の力を引き出す事ができた。この肉体の異変は前にも覚えがあり、彼女はある結論に至る。
「まさかまだあの力が……!?」
もう完全に消え去ったと思われた力が残っていたのかとシズネは狼狽し、もしもこれが事実ならば一刻も早く他の人間に知らせなければならない。早く仲間と合流して自分の異変を伝えなければならず、彼女は黒門に目を向けた。
「この扉の紋様、大迷宮の転移台に刻まれている紋様と似ているわね。これを開けば別の場所に転移できるのかしら……」
魔物を倒した瞬間に出現した黒門を見てシズネはこれまでの経験から次の空間に転移するための扉だと勘付く。彼女は扉を開こうとした時、腰に差した雪月花が震え出す。
「雪月花?どうしたというの?」
唐突に雪月花が震え出した事にシズネは驚き、彼女の魔剣は何か危険を知らせるように振動する。シズネは雪月花の異変に気付いて周囲を見渡す。特に怪しい気配は感じられないが、彼女の長年の戦闘経験がこのような場合は碌な事が起きない事は嫌でも知っていた。
雪月花を何時でも抜ける状態で彼女は周囲を警戒し、慎重に黒門へと近づく。何か分からないがここに残るのはまずいと判断したシズネは黒門を開いて次の空間に転移を試みる。
(嫌な予感がするわね……早くレナ達と合流しないと)
サンドゴーレムの群れとの戦闘は思ったよりも長引き、彼女は早く他の仲間と合流するために黒門を開いた――
――その一方でゴウライの方はスケルトンの大群を殲滅した後、新たに出現した黒門を開いて別の空間に辿り着いていた。その場所は雪山であり、彼女は吹雪が吹き溢れる雪山の中を歩いていた。
「うううっ……寒い!!寒すぎる!!」
ゴウライは金属製の甲冑を身に付けている事が仇となり、彼女は心底寒そうに雪山の洞窟の中で身を縮こまらせていた。熱い環境は慣れているが寒い場所は苦手としており、流石に鎧を脱いで彼女は肌をすり合わせて暖を取る。
「へっくしょんっ!!いかん、このままでは風邪を引いてしまう……ん?いや、吾輩は生まれた時から風邪を引いた事はないな。はっはっはっ……ぶえっくしょんっ!!」
流石のゴウライも極寒の環境は応えるらしく、どうにか身体を温めようと運動を行う。少しでも体温を高めるために彼女は腕立て伏せを行っていると、不意に洞窟の出入口の方から人影が現れた。
「むっ!?誰だ、吾輩を覗き見しているのは!!こっそり覗くぐらいなら堂々と覗け!!」
気配を感じ取ったゴウライは薄着にも関わらずに堂々と立ち上がって洞窟にいる人物に語り掛ける。羞恥心を何処かに置いてきたような彼女の言動にもしも仲間達がここにいたら呆れて何も言えないだろう。
しかし、洞窟の前に現れた人物は他の仲間達ではなかった。彼女は洞窟の前に現れた人物を見て首を傾げ、どうしてこんな場所に人がいるのかと疑問を抱く。ここは大迷宮の中で自分達以外に人間などいないと思い込んでいたが、彼女の前に現れたのはどう見ても人間の子供だった。
「誰だお前は?何処から入ってきた?」
「…………」
「ん?吾輩の顔に何かついているか?」
ゴウライの前に現れた子供は中性的な顔立ちのせいで少年なのか少女なのかも分からず、服装の方もボロキレのようなマントで身を隠していた。子供はゴウライの姿を一瞥し、何を思ったのかそのまま立ち去ろうとした。
「あ、待て!!何処へ行く気だ……ぬあっ、寒い!?」
「…………」
子供は何事もなかったかのように立ち去ろうとしたため、慌ててゴウライは引き留めようとしたが洞窟の外に出た瞬間に猛吹雪に襲われて彼女は慌てて洞窟内へ引き返す。その間にも子供は吹雪に包み込まれるように姿を消した――
――その後、しばらく時間が経過すると雪山の吹雪が収まり、装備を再装着したゴウライが洞窟の外に出た時には子供の姿は見えなくなっていた。子供の正体が気になったゴウライは捜索に向かう事にした。
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