上 下
1,640 / 2,083
真・最終章 七魔将編

その頃、他の仲間は……

しおりを挟む
――レナがコトミン達とも合流を果たした頃、他の者たちもそれぞれが別空間にて魔物と対峙していた。その中には単独で転移した人間も存在し、苦戦を強いられていた。


「はあっ、はあっ……厄介な相手ね」
『ゴォオオオッ!!』


シズネは周囲一帯が砂漠が広がる空間に送り込まれ、彼女はサンドゴーレムの大群に囲まれていた。本来であればシズネにとっては相性が悪くない相手なのだが、彼女は全身から滝のような汗を流す。

人魚族の血を継ぐシズネは昔から暑い場所を苦手としており、塔の大迷宮に挑んだ時も彼女は熱気のあまりに死にかけた。水分を補給しないといけないのは理解しているが、生憎と彼女は荷物の類をレナに預けて持ち歩いていなかった。


(レナの空間魔法に荷物を預けっぱなしだったのが仇になったわね……)


遠出の際はシズネや他の仲間達は余分な荷物はレナに預ける事が多い。レナの空間魔法はどんな物でも取り込めて自由に取り出せるため、旅の際には荷物を彼に預ける事が多い。そのせいでシズネは水筒さえ持ち合わせておらず、早々にこの空間を脱する必要があった。


(こいつら、どれだけいるのよ……切りがないわね)


先ほどからシズネはサンドゴーレムの大群と対峙し、既に何体かは倒していた。しかし、いくら倒しても新手のサンドゴーレムが出現するせいで疲労が蓄積され、もう殆ど体力も残っていない。


(レナ達が来るまで耐え切れるかしら……いいえ、何を弱気になっているの。こんな所で死ぬようなら父様や母様に合わせる顔がないわ)


亡き両親の事を思い出したシズネは気を引き締め直し、必ずレナ達が助けに来てくれると信じて戦う事にした。そんな彼女に対してサンドゴーレムの大群は一斉に襲い掛かる。


『ゴァアアアアッ!!』
「くっ……」


迫りくる敵に対してシズネは雪月花の能力を限界まで解放しようとした時、彼女の身体に異変が起きた――






――同時刻、様々な色合いの美しい水晶で構成された空間にマリアは存在した。水晶は至る場所に地面に突き刺さっており、空中にも無数の水晶が浮かんでいた。彼女は地面に突き刺さっている巨大な水晶に掌を触れると、地面を見て勘づく。


「これは……」
「マリア様!!やはり近くには他の方々はいないようです!!」


マリアが水晶に触れて何かを感じ取った時、上空からツバサが舞い降りてきた。彼女はクサナギの力を利用して空を飛ぶ事もできるため、マリアはツバサにクサナギを返却して偵察に向かわせていた。

この場所に転移してからそれなりの時間は経過しているが、未だに二人は魔物に襲われてはいなかった。その代わりに他の空間への脱出口も見当たらず、仲間達とも合流できずに待機していた。


「皆様、無事だと良いのですが……」
「安心しなさい、集まった人間はこの大陸でも指折りの猛者ばかりよ。それよりも今は自分達の心配をした方がいいわね」
「はっ」


ツバサはマリアの言葉に頷き、彼女はもう一度偵察に向かおうとしたが不意に彼女が降りた時に近くに存在する水晶が光ったのをマリアは見逃さなかった。マリアはツバサの近くに存在する水晶に近付き、試しに杖を構えて魔法を唱える。


「ツバサ、離れていなさい」
「マリア様?」
「スラッシュ」


マリアは杖を構えると砲撃魔法を発動させ、杖の先端から三日月状の風の刃が放たれた。マリアの生み出す風の刃ならば鋼鉄程度の硬度の物体ならば容易く切り裂くが、水晶に触れた瞬間に風の刃は吸い込まれるように消えていく。


「えっ!?こ、これは……」
「なるほど……緑の水晶は風の魔力を吸収するようね」
「吸収?それはいったいどういう意味ですか?」


魔法を吸収した水晶を見てもマリアは特に驚かず、そんな彼女の反応からツバサは彼女にどういう意味なのかを尋ねると、既にマリアは他の水晶にも同じように魔法を試している事を話す。


「ここにある水晶は七色、そして赤の場合は火属性、水色の場合は水属性といった感じに魔法を吸収するのよ」
「魔法を吸収……という事はここに存在する水晶は魔石や魔水晶の一種なのですか?」
「吸魔石と呼ばれる魔力を吸収する魔石は確かにあるのだけど……どうも引っかかるわね」


自分の魔法を吸収した緑色の水晶にマリアは視線を向け、彼女は試しに水晶に触れても反応はない。先ほど魔力を吸収したのは間違いないが、今現在は水晶からは魔力を感じられない。

先ほど水晶はマリアの放った魔法を間違いなく吸収したが、それにも関わらずに現在の水晶からは魔力は一切感じられない。魔石や魔水晶の一種ならば魔力が全く感じられない事は有り得ず、マリアは地面に埋まった水晶を見て下に視線を向ける。


(水晶が私の魔法を吸収したのならば取り込んだ魔力は何処に行ったのか……答えは下ね)


マリアは魔力感知を発動させ、水晶が埋まっている地面を見下ろす。彼女は地中に先ほど自分が放った魔法の魔力を感じ取り、面白そうな表情を浮かべてツバサに告げた。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。