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真・最終章 七魔将編

ゴーレムの悲劇

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『ゴロォオオオオッ!!』
「うわっ!?」
「これは……」
「ゴーレム!?しかも何という大きさ!?」
「わあっ!?アインちゃんやウルちゃんよりおっきい~!!」


岩壁だと思われていたのは巨大なゴーレムである事が発覚し、その大きさは5メートルを超えていた。先ほどのホネミンが降り注いだ水に反応したらしく、怒った様子でレナ達を見下ろす。


『ほう、中々に変わった形をしたゴーレムだな!!』
「ゴーレムキングほどの大きさではありませんが、変わった色合いをしていますね……亜種でしょうか?」
「どうでもいいわよ。さっさと倒して奥に行くわよ」


ゴーレムが現れても剣聖の称号を持つ者達は大して驚いておらず、シズネに至っては雪月花を抜いて仕留めようと前に出た。しかし、彼女よりも先にマリアが前に出ると彼女は杖を構えた。


「フレアバースト」
『ゴロォオオオッ!?』


マリアが杖を構えた途端、杖先から赤色の魔法陣が展開されて熱線が放射された。ゴーレムは熱線を正面から受けると後退し、自ら離れた壁際に再び押し込まれる。それでもどうにか耐え切ろうとするが、マリアは杖から熱線を放射し続けるとゴーレムの後ろの岩壁に罅割れが生じた。


「あら中々に耐えるわね」
『オォオオオッ……!?』
「なら威力を少し上げましょう」
『ゴアッ!?』


魔法陣から発射される熱線の出力と規模がさらに増すとゴーレムは岩壁に押し込まれ、徐々に全体が赤色に染まっていく。本来であればゴーレム種は火属性の魔法には強い耐性を誇り、しかも勇者が作り出した戦人形ならば並大抵の魔法は通じない。

しかし、世界一といっても過言ではないマリアの放つ砲撃魔法を受け続けたゴーレムは限界を迎え、全身が真っ赤に染まると表面が罅割れ、それを見たレナは危険を感じ取って他の者たちに注意した。


「皆!!俺の後ろに下がって!!」
「えっ!?」
「後ろに下がればいいのか?」
「いいから早く!!」


ゴーレムの変化にいち早く気付いたレナは掌を地面に押し付けると、錬金術師の形状高速変化の能力を利用して土壁を作り出す。土塊の魔法でも土砂を操作するよりもこちらの方が手早く、更にその状態からコトミンに指示を出す。


「コトミン!!水で濡らして!!」
「スラミン、ヒトミン……みずてっぽー」
「「ぷるっしゃあああっ!!」」


コトミンが抱えたスライム達が体内の水分を吐き出してレナが作り出した土壁を濡らすと、その状態からレナはシズネに指示を出して雪月花の力で土壁を氷結させるように頼む。


「シズネ!!」
「凍らせればいいのね!!」


シズネはレナに声を掛けられる前から雪月花を抜き放ち、彼女は土壁に刃を突き刺しただけで瞬間的に土壁を凍結させて氷の壁へと変貌させる。それを確認したマリアは杖を下ろすとゴーレムへの攻撃を中断し、カゲマルとツバサに連れられる形でレナ達が作り出した氷壁の後ろに移動する。


「マリア様、こちらです!!」
「お急ぎください」
「大丈夫よ」
「皆、伏せて!!」


全員が氷壁の後ろに移動するとレナは全員に伏せるように指示を出す。彼の言う通りに全員が身体を屈めると、マリアの砲撃魔法によって限界近くまで火属性の魔力を体内に吸収したゴーレムの全身に亀裂が走る。



――ゴラァアアアアッ!?



亀裂から赤色の光が零れ落ちるとゴーレムの体内の核が暴走し、内側から火属性の魔力が暴発して大爆発を引き起こす。あまりの威力にゴーレムの背後の岩山も巻き込まれ、氷壁に隠れていたレナ達は爆発の直撃は免れた。

爆発が収まる頃には周囲は黒煙に包まれ、レナは咳き込みながら氷壁が壊れなかった事を知って安堵する。この時にマリアが風の聖痕の力を発揮して突風を発生させて黒煙を振り払うと、先ほどまで存在したはずの岩山が木端微塵に砕けて吹き飛んだせいで殺風景な光景が広がっていた。


「あら……少しやり過ぎたわね」
「……少し、ですか?」
「これが!?」
「い、岩山が……なくなりましたね」
『ふははっ!!今のは少しヒヤッとしたぞ!!』


岩山が吹き飛んだ光景を見てもマリアは特に悪びれた様子もなく、他の者たちは完全に吹き飛んだ岩山を見て呆気に取られた。先ほど現れたゴーレムの姿は見えず、恐らく爆発によって核ごと粉々に砕け散ったのは間違いない。


「うへぇっ……粉々に砕けて原型も残ってないよ」
「ぺっぺっ!!く、口の中に土が……というか、爆発するならもっと先に言えよ!?」
「そんな暇なかったんだよ……」
「マリア様、少々やり過ぎなのでは……」
「ごめんなさいね、前々からゴーレムがどの程度の火力なら倒しきれるか気になっていたから……」
「そういう実験は私達がいないときにしてほしいわね」


もしもレナが事前に氷壁を作り上げていなかったら今頃は全員が爆発に巻き込まれて大惨事を引き起こしていたかもしれないのにマリアは気にした様子もなく、そんな彼女にレナを筆頭に他の者たちも心底呆れてしまう。





※ちなみに今回現れたゴーレムは作中に出てきた戦人形の中でも最大最強の戦人形です。
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