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真・最終章 七魔将編

聖剣カラドボルグの継承者

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「ん!?な、何だぁっ!?」


唐突に上空から迫りくる光にハルナは驚き、咄嗟に彼女はその場を離れた。その直後に光の塊は地面に衝突し、やがて光が収まると正体が「剣」である事が判明する。驚いた彼女は剣に視線を向けると、何処かで見覚えがある事に気付く。


「あれ、この剣……確かレナの奴が使ってた剣だ」


上空から落ちてきた剣の正体は「聖剣カラドボルグ」だった。ハルナは本物を見るのは初めてだが、ブラクとの最後の戦闘でレナが聖剣カラドボルグを錬金術師の能力で複製し、それを彼女に託したので見覚えがあった。

本物の聖剣カラドボルグは王都で厳重に保管されているはずだが、雷属性の聖痕を持つ彼女の意思に反応したかのように王都から冒険都市まで飛んできた。ハルナはカラドボルグを見て不思議に思い、本能でこの聖剣が危険はない事に気付く。


「……触っても大丈夫そうだな」


恐る恐るハルナは聖剣を触れると、呆気なく引き抜く事ができた。彼女が聖剣を抜いた途端に電流が迸り、同時に彼女の雷属性の聖痕が反応した。聖痕から生み出される魔力が聖剣に流し込まれ、聖剣カラドボルグは金色の光を放ち、それを見たハルナは興奮する。


「おおっ!?」


今次の輝きを放つ聖剣を見てハルナは両手で握りしめ、試しに彼女はその場を見渡す。この時に彼女は誰も住んでいない廃屋を発見し、聖剣を構えた。剣を扱う事は不慣れとしているハルナだったが、まるで聖剣が勝手に動くように刃を振りかざす。


「はああっ!!」


ハルナが正面から刃を振り落とした瞬間、天から金色の雷が降り注いだかのように轟音と衝撃が走る。ハルナは驚いた様子で廃屋を見つめ、ただの一撃で廃屋は崩れ去った。しかも彼女の足元にはクレーターができあがり、地面も黒焦げていた。

聖剣の力を目の当たりにしたハルナは動揺を隠せず、これだけの出量の雷を生み出したのにハルナ自身は全く疲れていなかった。これまで彼女は聖痕任せの戦法で戦っていたが、聖剣のお陰で魔力を制御する事に成功する。


「す、すげぇっ……この力があればどんな奴でもぶっ飛ばせる!!」


聖剣を手にしたハルナはこれほどの力があれば自分は誰にも負けないと思い込むが、同時に彼女は引っかかりを覚えた。これまでの彼女は武器に頼らず、己の肉体のみで戦ってきた。それなのに何処からか現れた剣を扱う事に彼女は本当にこれでいいのかと思う。


「武器なんてあたしの性には合わねえ……こんなもんに頼らなくても戦える」


折角手に入れた聖剣だったが、彼女は己の誇りのために聖剣を捨て去ろうとした。しかし、聖剣を手放す寸前に彼女は踏み止まり、聖剣の放つ金色の電流に視線を向けた。


「いや、待てよ……そうだ。これは使えそうだな」


聖剣を使用して戦うのは気が引けるが、彼女は聖剣の放つ魔力を見て何かを考え込み、その場から姿を消した。この日からハルナは冒険都市を立ち去り、帰ってくる事はなかった――





――コトミンの救出に成功し、無事に冒険都市に帰還したレナ達だったが問題は山積みだった。最後の七魔将ラストの捜索を行う前に七魔将によって崩壊しかかった冒険都市の復興作業、他にもブラクの影響で冒険都市周辺の生態系が乱れてしまい、他の地域に逃げ込んだ魔物達によって村や町が被害を受けていた。

これらの問題を解決するためには冒険者ギルドの活動を再開するしかなく、街の復興に関してはヨツバ王国から派遣された軍隊も協力した。そのためにS級冒険者であるレナも仲間達共に久々に冒険者活動に励む。


『こんな事をしていていいのかな……炎龍と戦うために戦力を用意しないといけないのに』
『大丈夫ですって、ラストは他の七魔将と違って入念な準備を整える傾向がありますからいきなり炎龍を目覚めさせる危険性はありません』


レナはウルが引く狼車に乗り込み、他の仲間と共に魔物が現れたという地域に向かう。当初の予定ではレナは他の聖痕所有者を集め、全員に適合する聖剣を装備させて七魔将のラストの元へ向かい、炎龍を討伐するつもりだった。しかし、アイリスによればまだいくらか時間の猶予があるらしく、焦って行動する事はないと諭された。


『炎龍が気掛かりなのは分かりますが、七魔将ラストも厄介な存在です。レナさんと言えども確実に勝てる保証はありませんのでもっと力を身に付けましょう』
『力を身に付けるね……それなら修行でもした方がいいんじゃないの?』
『いいえ、今のレナさんはもう人類としての成長の限界を迎えています。これ以上に訓練をしたところで新しいスキルを覚える事もありませんし、肉体的に強くなる事はありません。重要なのは力の使い方を身に着ける事です』
『力の使い方ね……』


アイリスと交信を行いながらレナは今回の依頼の目的地を思い出し、まさか再びあの場所に訪れる事になるとは思いもしなかった。
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