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真・最終章 七魔将編

魚人王の正体は……

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――魚人のタルコが捕まった頃、海底王国に連れ込まれたコトミンは牢屋の中に存在した。彼女は両手と両足に魔法金属製の拘束具を取りつけられ、彼女の力では破壊する事はできず、しかも魔法を封じる効果があるのか精霊魔法も扱えない。


「むううっ……」
「無駄だ、お前程度の力ではその拘束具は破壊できない。大人しく私の物になるがいい」
「……やだ」


彼女の前には三俣の槍を手にした人物が立っており、森人族にも劣らぬ整った容姿をしていた。但し、普通の人間ではないのは間違いなく、身体の至る所に鱗を生やしており、決定的に人間と違う点は鮫のような尻尾を生やしている。

この人物こそが魚人族の王にして海底王国を統べる「魚人王」だった。その外見を見た時にコトミンは驚き、魚人王と名乗っているからてっきり男性だと思っていたが、実際に現れた魚人王はどう見ても女性の外見をしていた。服装の方も露出が大きく、全体的に無駄のないスレンダーな体型をしていた。


「どうして嫌がる?私の何が不満だ」
「色々とあるけど、私は女の子に興味はない」
「何を言っている、私は男だ」
「……何処が?」


魚人王は見た目も年齢もコトミンとそれほど変わらず、どう見ても女の子にしか見えない。但し、魚人族にしては外見が人間と似通っており、牛人族ミノタウロスのハルナのように人間よりの姿をしていると思われる。そんな彼女は何故か自分が男だと思い込んでおり、不思議そうに腕を組む。


「私はどう見ても男だろう。父上も他の奴等も私の事を女だと勘違いしないぞ」
「それはその人たちの目がおかしい」
「いったい何を言ってるんだ?」
「それはこっちの台詞」
「それはそれはうるさい奴だな……」
「それはそう」
「おい、怒るぞ!!」


いくら言い聞かせてもコトミンが自分の事を女の子と言い張るせいで魚人王は怒った表情を浮かべるが、怒っていても外見は可愛らしい少女にしか見えない。そんな様子を牢屋の外から見届けていた人物が声をかける。


「これこれ、落ち着けアマネよ」
「父上、でもこいつが……」
「良いから落ち着くのじゃ……お主は男の子、それは誰もが知っておる」
「……名前までは女の子っぽい」


アマネと呼ばれた魚人王は牢屋の外にいる人物に振り返り、彼女の視界には年老いた鮫型の魚人族の老人が立っていた。この人物はアマネの父親らしいが、それにしては随分と年齢に差があるように見えた。


「その人が貴女の父親?」
「そうだぞ、父上だ。先代の魚人王でもあるんだぞ!!」
「昔の話じゃ……もう今ではただの年寄りじゃよ」


言葉は丁寧ではあるが年老いた魚人はコトミンに視線を向け、彼女の姿を凝視し続ける。その視線に気味悪く思ったコトミンは魚人王の後ろに隠れると、魚人王は思い出したように告げた。


「そういえば父上はどうしてこちらに?いつもは玉座の間にいるのに……」
「遂に人魚姫を捕えたと聞いたからな。どんな者なのか確かめに来たのだが……本当にこの者が人魚姫なのか?」
「間違いありません、青の宝玉を持ったバクの奴が見つけたそうです。まあ、あいつは人間に捕まったようですけど……」
「何とも情けない……しかし、宝玉が反応としたとなれば間違いはないか」
「……人違いだと思う」


先代の魚人王が現れた理由は遂に「人魚姫」なる存在を捕まえたと知り、それを確かめるために訪れた。だが、実際に出会ってみたコトミンはとても特別な力を持つような存在には見えずに彼は訝しむが、調査に出向いたバクが所持していた「青の宝玉」が反応したと聞いて考え込む。

青の宝玉とは文字通りに青色の宝玉の事を差しており、色合い的にはどちらかというと水色に近い。この宝玉は元々は勇者が聖剣を作り出す際に開発した真の宝玉の試作品であり、本物には及ばないが精霊魔法を本来扱えないはずの魚人族でも宝玉を使えば使用する事ができる。しかし、本物の宝玉と比べて性能は格段に劣るため、滅多な事では使わないように禁じていた。

この宝玉は精霊魔法を扱えるだけではなく、聖痕の所有者にも反応する機能を持つ。バクが発見した時、彼の前には元聖痕所有者のコトミンと現聖痕所有者のシズネが居た。宝玉が反応したのはシズネの方だったが、聖痕を継承するのは人魚族の中でも「人魚姫」と呼ばれるだけの存在だと教えられていたバクは勘違いしてコトミンを攫う。そして彼女は海底王国に幽閉されてしまった。


「ふむ……アマネよ、お主の宝玉を出せ」
「分かりました父上!!」
「……何をするつもり?」


先代の魚人王の言葉にアマネは頷き、この時に彼女はティアラを取り出す。ティアラを頭に乗せた彼女は増々女の子らしくなるが、ティアラには蒼に光り輝く宝玉が埋め込まれ、それを一目見ただけでコトミンはただの魔石ではない事を見抜く。このティアラに嵌め込まれた宝玉こそが「海光石」と呼ばれる伝説の聖剣リヴァイアサンに本来取り付けられていた魔石だった。
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