1,594 / 2,083
真・最終章 七魔将編
魚人王の正体は……
しおりを挟む
――魚人のタルコが捕まった頃、海底王国に連れ込まれたコトミンは牢屋の中に存在した。彼女は両手と両足に魔法金属製の拘束具を取りつけられ、彼女の力では破壊する事はできず、しかも魔法を封じる効果があるのか精霊魔法も扱えない。
「むううっ……」
「無駄だ、お前程度の力ではその拘束具は破壊できない。大人しく私の物になるがいい」
「……やだ」
彼女の前には三俣の槍を手にした人物が立っており、森人族にも劣らぬ整った容姿をしていた。但し、普通の人間ではないのは間違いなく、身体の至る所に鱗を生やしており、決定的に人間と違う点は鮫のような尻尾を生やしている。
この人物こそが魚人族の王にして海底王国を統べる「魚人王」だった。その外見を見た時にコトミンは驚き、魚人王と名乗っているからてっきり男性だと思っていたが、実際に現れた魚人王はどう見ても女性の外見をしていた。服装の方も露出が大きく、全体的に無駄のないスレンダーな体型をしていた。
「どうして嫌がる?私の何が不満だ」
「色々とあるけど、私は女の子に興味はない」
「何を言っている、私は男だ」
「……何処が?」
魚人王は見た目も年齢もコトミンとそれほど変わらず、どう見ても女の子にしか見えない。但し、魚人族にしては外見が人間と似通っており、牛人族のハルナのように人間よりの姿をしていると思われる。そんな彼女は何故か自分が男だと思い込んでおり、不思議そうに腕を組む。
「私はどう見ても男だろう。父上も他の奴等も私の事を女だと勘違いしないぞ」
「それはその人たちの目がおかしい」
「いったい何を言ってるんだ?」
「それはこっちの台詞」
「それはそれはうるさい奴だな……」
「それはそう」
「おい、怒るぞ!!」
いくら言い聞かせてもコトミンが自分の事を女の子と言い張るせいで魚人王は怒った表情を浮かべるが、怒っていても外見は可愛らしい少女にしか見えない。そんな様子を牢屋の外から見届けていた人物が声をかける。
「これこれ、落ち着けアマネよ」
「父上、でもこいつが……」
「良いから落ち着くのじゃ……お主は男の子、それは誰もが知っておる」
「……名前までは女の子っぽい」
アマネと呼ばれた魚人王は牢屋の外にいる人物に振り返り、彼女の視界には年老いた鮫型の魚人族の老人が立っていた。この人物はアマネの父親らしいが、それにしては随分と年齢に差があるように見えた。
「その人が貴女の父親?」
「そうだぞ、父上だ。先代の魚人王でもあるんだぞ!!」
「昔の話じゃ……もう今ではただの年寄りじゃよ」
言葉は丁寧ではあるが年老いた魚人はコトミンに視線を向け、彼女の姿を凝視し続ける。その視線に気味悪く思ったコトミンは魚人王の後ろに隠れると、魚人王は思い出したように告げた。
「そういえば父上はどうしてこちらに?いつもは玉座の間にいるのに……」
「遂に人魚姫を捕えたと聞いたからな。どんな者なのか確かめに来たのだが……本当にこの者が人魚姫なのか?」
「間違いありません、青の宝玉を持ったバクの奴が見つけたそうです。まあ、あいつは人間に捕まったようですけど……」
「何とも情けない……しかし、宝玉が反応としたとなれば間違いはないか」
「……人違いだと思う」
先代の魚人王が現れた理由は遂に「人魚姫」なる存在を捕まえたと知り、それを確かめるために訪れた。だが、実際に出会ってみたコトミンはとても特別な力を持つような存在には見えずに彼は訝しむが、調査に出向いたバクが所持していた「青の宝玉」が反応したと聞いて考え込む。
青の宝玉とは文字通りに青色の宝玉の事を差しており、色合い的にはどちらかというと水色に近い。この宝玉は元々は勇者が聖剣を作り出す際に開発した真の宝玉の試作品であり、本物には及ばないが精霊魔法を本来扱えないはずの魚人族でも宝玉を使えば使用する事ができる。しかし、本物の宝玉と比べて性能は格段に劣るため、滅多な事では使わないように禁じていた。
この宝玉は精霊魔法を扱えるだけではなく、聖痕の所有者にも反応する機能を持つ。バクが発見した時、彼の前には元聖痕所有者のコトミンと現聖痕所有者のシズネが居た。宝玉が反応したのはシズネの方だったが、聖痕を継承するのは人魚族の中でも「人魚姫」と呼ばれるだけの存在だと教えられていたバクは勘違いしてコトミンを攫う。そして彼女は海底王国に幽閉されてしまった。
「ふむ……アマネよ、お主の宝玉を出せ」
「分かりました父上!!」
「……何をするつもり?」
先代の魚人王の言葉にアマネは頷き、この時に彼女はティアラを取り出す。ティアラを頭に乗せた彼女は増々女の子らしくなるが、ティアラには蒼に光り輝く宝玉が埋め込まれ、それを一目見ただけでコトミンはただの魔石ではない事を見抜く。このティアラに嵌め込まれた宝玉こそが「海光石」と呼ばれる伝説の聖剣リヴァイアサンに本来取り付けられていた魔石だった。
「むううっ……」
「無駄だ、お前程度の力ではその拘束具は破壊できない。大人しく私の物になるがいい」
「……やだ」
彼女の前には三俣の槍を手にした人物が立っており、森人族にも劣らぬ整った容姿をしていた。但し、普通の人間ではないのは間違いなく、身体の至る所に鱗を生やしており、決定的に人間と違う点は鮫のような尻尾を生やしている。
この人物こそが魚人族の王にして海底王国を統べる「魚人王」だった。その外見を見た時にコトミンは驚き、魚人王と名乗っているからてっきり男性だと思っていたが、実際に現れた魚人王はどう見ても女性の外見をしていた。服装の方も露出が大きく、全体的に無駄のないスレンダーな体型をしていた。
「どうして嫌がる?私の何が不満だ」
「色々とあるけど、私は女の子に興味はない」
「何を言っている、私は男だ」
「……何処が?」
魚人王は見た目も年齢もコトミンとそれほど変わらず、どう見ても女の子にしか見えない。但し、魚人族にしては外見が人間と似通っており、牛人族のハルナのように人間よりの姿をしていると思われる。そんな彼女は何故か自分が男だと思い込んでおり、不思議そうに腕を組む。
「私はどう見ても男だろう。父上も他の奴等も私の事を女だと勘違いしないぞ」
「それはその人たちの目がおかしい」
「いったい何を言ってるんだ?」
「それはこっちの台詞」
「それはそれはうるさい奴だな……」
「それはそう」
「おい、怒るぞ!!」
いくら言い聞かせてもコトミンが自分の事を女の子と言い張るせいで魚人王は怒った表情を浮かべるが、怒っていても外見は可愛らしい少女にしか見えない。そんな様子を牢屋の外から見届けていた人物が声をかける。
「これこれ、落ち着けアマネよ」
「父上、でもこいつが……」
「良いから落ち着くのじゃ……お主は男の子、それは誰もが知っておる」
「……名前までは女の子っぽい」
アマネと呼ばれた魚人王は牢屋の外にいる人物に振り返り、彼女の視界には年老いた鮫型の魚人族の老人が立っていた。この人物はアマネの父親らしいが、それにしては随分と年齢に差があるように見えた。
「その人が貴女の父親?」
「そうだぞ、父上だ。先代の魚人王でもあるんだぞ!!」
「昔の話じゃ……もう今ではただの年寄りじゃよ」
言葉は丁寧ではあるが年老いた魚人はコトミンに視線を向け、彼女の姿を凝視し続ける。その視線に気味悪く思ったコトミンは魚人王の後ろに隠れると、魚人王は思い出したように告げた。
「そういえば父上はどうしてこちらに?いつもは玉座の間にいるのに……」
「遂に人魚姫を捕えたと聞いたからな。どんな者なのか確かめに来たのだが……本当にこの者が人魚姫なのか?」
「間違いありません、青の宝玉を持ったバクの奴が見つけたそうです。まあ、あいつは人間に捕まったようですけど……」
「何とも情けない……しかし、宝玉が反応としたとなれば間違いはないか」
「……人違いだと思う」
先代の魚人王が現れた理由は遂に「人魚姫」なる存在を捕まえたと知り、それを確かめるために訪れた。だが、実際に出会ってみたコトミンはとても特別な力を持つような存在には見えずに彼は訝しむが、調査に出向いたバクが所持していた「青の宝玉」が反応したと聞いて考え込む。
青の宝玉とは文字通りに青色の宝玉の事を差しており、色合い的にはどちらかというと水色に近い。この宝玉は元々は勇者が聖剣を作り出す際に開発した真の宝玉の試作品であり、本物には及ばないが精霊魔法を本来扱えないはずの魚人族でも宝玉を使えば使用する事ができる。しかし、本物の宝玉と比べて性能は格段に劣るため、滅多な事では使わないように禁じていた。
この宝玉は精霊魔法を扱えるだけではなく、聖痕の所有者にも反応する機能を持つ。バクが発見した時、彼の前には元聖痕所有者のコトミンと現聖痕所有者のシズネが居た。宝玉が反応したのはシズネの方だったが、聖痕を継承するのは人魚族の中でも「人魚姫」と呼ばれるだけの存在だと教えられていたバクは勘違いしてコトミンを攫う。そして彼女は海底王国に幽閉されてしまった。
「ふむ……アマネよ、お主の宝玉を出せ」
「分かりました父上!!」
「……何をするつもり?」
先代の魚人王の言葉にアマネは頷き、この時に彼女はティアラを取り出す。ティアラを頭に乗せた彼女は増々女の子らしくなるが、ティアラには蒼に光り輝く宝玉が埋め込まれ、それを一目見ただけでコトミンはただの魔石ではない事を見抜く。このティアラに嵌め込まれた宝玉こそが「海光石」と呼ばれる伝説の聖剣リヴァイアサンに本来取り付けられていた魔石だった。
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
魔法使いじゃなくて魔弓使いです
カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです
魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。
「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」
「ええっ!?」
いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。
「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」
攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。