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真・最終章 七魔将編

コトミン奪還大作戦

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――アイリスの助言を得てレナは一旦仲間達の元へ戻ると、一先ずは冒険都市へと帰還してマリアに相談を行う。この時に拘束したバクも連れて行き、彼女に何が起きたのかを離す。


「魚人王?聞いた事もないわね……」
「叔母様も知らないの?」
「ええ、そもそも魚人は本来は住処を持たないはずよ」
「……ふん、貴様等に俺達の何が分かる」


バクは拘束された状態で氷雨の冒険者達に取り囲まれ、自分の立場を理解していないのか不遜な態度を貫く。そんなバクに対してマリアの元に訪れていたバルが背中を蹴飛ばす。


「おうこら!!うちのレナのコトミンをどうしたんだい!!」
「ぐおっ!?な、何だ貴様!?俺を誰だと思って……はぐぅっ!?」
「ふん、誰だろうと関係ないね!!とっとと話しな!!」
「止めなさい」


無理やりにでもバルはコトミンを何処へ連れ出そうとしたのかをバクに話させようとしたが、それを制止したのはマリアだった。マリアはバクを痛めつけた所で情報を吐かないと判断し、ここで彼女は指を鳴らす。


「ここは彼女に任せましょう」
「彼女?」
「はいは~い、私の出番ですね」
「ぷるっくりん」
「お前は……プルミン!?お前雌だったのか!?」
「いや、私ですよ!!ホネミンですよ!!」


頭の上に帽子を被ってその上にプルミンを乗せたホネミンが姿を現すと、彼女はバルに抑えつけられているバクを見下ろす。この時にバクは言いようのない恐怖を浮かべ、何故かホネミンを前にすると嫌な予感を抱く。

ホネミンはまるで実験動物を見るかのような目つきで薬瓶を取り出し、その中身は白色の液体が入っていた。彼女は薬学にも精通し、回復薬や魔力回復薬や聖水など様々な薬を作り出してきた。しかし、今回の薬は人の怪我や病気を癒す薬ではなく、どちらかと言うと毒薬の類である。


「この私特製の薬を飲めばどんな秘密も話しますよ。名付けて自白しちゃうぞ剤です」
「それ、自白剤じゃん!!」
「じ……はく?」


レナの突っ込みに他の者たちは不思議そうな表情を浮かべ、この世界には自白剤は存在しないらしい。ホネミンは自作の自白剤(のような物)をバクの大きな口の中に注ぎ込み、無理やりに飲ませるようにバルも口を開かせる。


「はいは~い、ごくっとしてくださいね」
「ふががっ!?」
「おら、男なら覚悟を決めな!!」
「やばい絵面だな……」


無理やりにバクに自白剤(のような物)を飲み込ませると、効果が現れるまでしばらくの間は全員がバクを見下ろす。特にバクの身体に異変は起きないが、ホネミンが試しに質問を行う。


「貴方の名前は何ですか?」
「バクバクだ……はっ!?な、何故!?」
「バクバク?ちょっと可愛い名前だな」
「人間に飼育されていた時に名付けられた……な、何だこれは!?」
「何だ、こいつ人間に買われてたのかい?」


質問されるとバクは勝手に答えてしまい、本人は戸惑っているがそれを気にせずにレナ達は次々と質問を行う。自白剤の効果が持続している間に情報を集めなければならず、色々と質問をする。


「年齢は?」
「30才」
「何処から来たの?」
「獣人国」
「他に仲間はどれくらいいる?」
「俺が知っている限りでは100体ほど……」
「コトミンを何処へ連れて行った」
「俺達が住処にしている場所だ」
「その場所は何処にある?」
「海の中……かつて人魚族が支配していた海底王国が存在した場所だ」
「海底王国への行き方は?」
「海に潜るしかない。魚人と人魚族以外は入るのは不可能だ」


質問した結果、バクの話によればかつては海底王国と呼ばれた場所に魚人達は住処を形成し、そこにコトミンを連れ出した事が判明した。厄介な事に名前の通りに海底王国は海底に存在するらしく、魚人や人魚族以外は入るのは難しい。

海底王国へ向かう方法は後で考えるとしてどうしてコトミンを攫ったのかが気にかかり、彼等はコトミンの事を「人魚姫」と呼んでいた。しかし、当のコトミンは人魚姫と呼ばれても心当たりはなく、彼女も困惑していた。


「人魚姫というのはどういう意味だ?」
「そのままの意味だ。あの娘は間違いなく、海底王国を治めていた人魚族の血筋を継いでいる」
「どうしてそんな事が分かる?」
「あの娘の魔力に宝玉が反応した。宝玉は王族の血筋の人間が近くにいると真の効果を発揮する……だから我々はあの娘が王族の血を継ぐ存在だと見抜いた」
「また宝玉か……いったい何なんだあれは」
「人魚族が海底王国を統べるために作り出した特殊な魔道具だ。水の精霊を水晶玉に封じ込め、必要時にその力を発揮する。伝説によれば人魚族は宝玉を使って竜巻を作り出して伝説の魔獣を打ち倒したらしい」
「伝説の魔獣……まるでおとぎ話ね」


コトミンを彼等が誘拐した理由は人魚族の王族の血筋を彼女が継いでいる事は間違いなく、魚人族はコトミンが王族の血筋の人間である事を利用して計画を立てていた。


「魚人王は人魚族の王族の血を取り込み、海を完全に支配する。その後は陸上にも進出し、この世界を征服するのがあの方の目的だ」
「とんでもない事を考えているな……」
「ふん、その魚人王だか何だか知らないけどあたらしらを舐めるんじゃないよ。魚人如きに後れを取ると思ってるのかい?」
「お前達はあの御方の恐ろしさを知らないから言えるんだ。魚人王の強さは並ではない……あの御方はたった一人で竜種を殺すほどの力を持つ」
「竜種を……!?」


バクの言葉にレナ達は驚き、この世界における竜種は魔物の生態系の頂点に位置し、その存在こそが「災害」の象徴として扱われるほどに恐ろしい存在だった。
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