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真・最終章 七魔将編

聖痕の継承条件

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「聖痕を持ってない以上は風属性の魔法を無効化する事はできないけど、それ以外の事は今の貴方にもできるはずよ」
「そうなのか……そういえばさっき、風刃を使った時も無意識に風の精霊の力を借りてたのかな?」
「その可能性は十分にあるわね」


先ほどのレナが生み出した風刃は訓練場の地面を抉り、魔術師の扱う上級の砲撃魔法にも劣らない威力はあった。もしかしたら無意識にレナは風の精霊の力を借りていたかもしれず、今の彼は聖痕が無くても風の精霊を操る事ができた。

聖痕を失っても精霊を扱う能力までは失われず、マリアの魔力を受け入れた事で能力は完全に覚醒された。もしも修行を行えばレナもシュンやハヤテのように「風の斬撃」を繰り出せる事もできるかもしれない。


「たくっ……精霊魔法まで使えるようになるなんて流石は嬢ちゃんの甥だな」
「兄貴!!私の魔弓術とかも使えたりするんですか!?」
「いや、どうだろう……練習すれば使えるようになるのかな?」
「そうね、今の貴方なら武器にも精霊の力を宿す事ができるはずよ」
「資質はあったっとしても技術がなければ使いこなせないがな」


エリナの質問にレナはマリアに尋ねると、今のレナならば理論上はエリナの扱う魔弓術を使用する事も可能らしい。但し、ハシラによれば魔弓術を極めるには長年の鍛錬で培った技術がなければ不可能らしく、いくらレナが精霊魔法を使えるようになったからといって一朝一夕で魔弓術の類が扱えるわけではないらしい。

シュンとハヤテの剣技も同様に修行を行わねば極める事はできず、あくまでもレナは精霊魔法ができるようになっただけで魔法の技術を極めたわけではない。それでも今までにできなかった事をできるようになったのは大きな成長だった。


「たくっ、あんたは何処まで強くなれば気が済むんだい……あたしが指導していた頃が懐かしく思えるね」
「精霊魔法か……まあ、僕の場合は聖痕が無くても使えるけどね」
「そうか、ダインも聖痕を持っていたな」


ダインの場合は闇の聖痕を受け継ぐ前から精霊を感じ取り、その力を利用する事ができた。暗闇の中ではダインは影魔法が強化され、彼の場合は闇の精霊を利用して魔法の強化を行う。コトミンも回復魔法を扱う時は水を用意し、その水から生まれる水の精霊を利用している。


「そういえばコトミンも水の聖痕がなくなったけど、前みたいに回復魔法は普通に使えるよね」
「もち……だけど、前ほどに魔力は早く回復しなくなった」
「聖痕は魔力を強化するだけではなく、精霊を受け入れて魔力を回復速度を高める効果があるらしいわ」
「そうね、言われてみれば確かに……」


コトミンはシズネに水の聖痕を譲渡したが、彼女の回復魔法の精度は落ちていない。但し、聖痕を渡してから昔ほどに魔力は簡単に回復せず、その一方でシズネの方は昔よりも魔力容量が増えて回復速度も高まっていた。


「でも人間の俺が精霊魔法が使えるようになるなんて夢にも思わなかったな……あ、そうだ。ならコトミンやダインも叔母様から聖痕を受け取って魔力を渡して貰ったら風の精霊が見えるようになるのかな?」
「いいえ、それは絶対に無理よ」
「ん?どうしてだい?随分とはっきりと言い切るじゃないかい?」


レナの提案にマリアは即座に否定し、話を聞く限りでは人間でも聖痕を継承すれば精霊魔法を扱えるように思えるが、マリアによると聖痕を他の人間に譲渡する事は簡単な行為ではないと判明する。


「本来であれば聖痕を他の人間に譲渡するのはとても大変な事なのよ。失敗すれば聖痕の所有者も譲渡されようとした人間も命が危険に晒される」
「えっ!?」
「レナの場合は上手くいったけど、母が貴方に聖痕を譲り渡した時は本当に危険だったのよ。過去に聖痕の所有者を捕縛して、無理やりに聖痕を奪い取ろうとした輩もいたけれど……聖痕は誰にでも受け継げる力じゃないの」
「ど、どうして?」


マリアは聖痕を他の人間に譲渡させるには色々と条件があるらしく、条件を満たさない場合は聖痕の譲渡は不可能であり、もしも失敗すれば本来の所有者も受け取ろうとした人間も命に聞きに晒される。

例えばヨツバ王国では大昔に聖痕の所有者が敵国が送り込んだ暗殺者に捕縛され、その聖痕を奪い取られそうになった事があった。聖痕の所有者の家族を捕まえて人質にすると、人質の解放を条件に聖痕の所有者から無理やりに聖痕を他の人間に譲渡させようとしたという。

結果から言えば聖痕の所有者は仕方なく従い、暗殺者の指示通りに聖痕を譲り渡そうとした。しかし、聖痕を譲渡する儀式を行った際、聖痕が暴走して聖痕の所有者と聖痕を奪い取ろうとした暗殺者は

聖痕の所有者が死んだ時点で聖痕は別の森人族が受け継ぎ、結局は暗殺者と共に先代の所有者は死んでしまった。この事から聖痕を譲渡しようとしても継承者に聖痕を受け継ぐ程の「器」がなければ失敗してしまう事が発覚する。
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