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真・最終章 七魔将編

解放された力

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(よし、全力でやるか……まずは手始めに風刃からやろうかな)


掌を構えたレナは風属性の初級魔法「風圧」と支援魔法の「付与強化」を組み合わせた合成魔術を発動させようとした。鎧を身に着けた人形に向けて掌を構え、意識を集中させるといつも以上に魔力が練り上がる速度が上昇している事に気付いた。


(何だ、この感覚……今ならな気がする)


マリアの魔力を受け入れ、自分の魔力に統合した影響なのか魔力を一点に集中させて攻撃を行う速度が格段に上昇していた。狙いを定めて魔法を放つ瞬間、これまでとは比べ物にならない規模の風刃を生み出す。


「えっ!?」
『うわぁっ!?』


レナの掌から三日月状の巨大な風属性の刃が放出され、地面を抉りながら鎧人形の元へ向かう。しかし、発動の際に予想以上の出力でレナの手元が狂い、風刃は標的を外して見当違いの方向へ飛ぶ。

訓練場を取り囲む柱に設置された結界石が作動し、緑色の障壁が展開されてレナの風刃は掻き消された。だが、あまりの威力に結界が歪み、危うく結界が壊れかけた。それを確認したマリアは笑みを浮かべ、その一方でレナは自分の魔法の威力に戸惑う。他の者たちに至っては何が起きたのか分からず、戸惑いの表情を浮かべる。


「な、何だ今の威力……!?」
「今のはまさか、風属性の砲撃魔法か?」
「違う、レナは砲撃魔法は使えないはずだ」
「ひええっ……凄い威力ですね。しかも今の自分の魔力だけで魔法を生み出しましたよね?私達みたいに風の精霊に力を貸して貰ったわけじゃないのにあの威力なんて……」
「レナたん、凄い!!」


見物人はレナの魔法の威力に驚かされ、本来ならば砲撃魔法が使えないはずのレナがそれに匹敵する威力の魔法を自力で発動した事に驚きを隠せない。本人でさえも何が起きたのか分からず、冷や汗を流してマリアに振り返る。


「叔母様、今の……まさか、叔母様の魔力のお陰?」
「いいえ、それは違うわ。今のは貴方の魔力だけで構成された魔法よ」
「でも、今まであんな威力の魔法なんて……」
「それは貴方が自分自身の力を出し切れていなかったからよ」


マリアの魔力を吸収した事でレナは先ほどの馬鹿げた威力の魔法を生み出せたのかと思ったが、マリアによれば今の魔法の威力こそがレナが本来発揮できる魔法の力だと説明する。確かにマリアはレナに魔力を送ったが、それは切っ掛けに過ぎない。

彼女の説明によれば先ほどレナが行った「魔力統合」は二つの魔力を一体化させる事により、彼の中の「魔力を練り上げる技術」を向上させたに過ぎない。そもそもレナは剣士として戦う事が多いが、彼の本質は「魔術師」である。そしてマリアとは違い、感情の高ぶりで魔法の威力を大きく向上させる才能を持つ。

これまでのレナは魔力を練り上げる技術が未熟なせいで本来の魔法の力を引きだす事ができず、真の意味では自分の魔法を使いこなす事ができていなかった。しかし、マリアの魔力を受け入れる際にレナは技術力が磨かれた事により、今まで以上に魔法の力が引き出せるようになった。


「さあ、今度はちゃんと狙って攻撃しなさい」
「う、うん……よし、やってみるよ」


レナは鎧人形に狙いを定めて今度こそ外さないように今度は両手で構えた。先ほどの風刃よりも強力な攻撃を繰り出すため、レナは自分の魔法の中でも最大火力を誇る「火炎弾」を撃ち込む準備を行う。


(今ならきっと……)


両手を構えた状態でレナは魔力を集中させ、二つの属性の魔力を組み合わせる。火炎弾は初級魔法の「風圧」と「火球」を組み合わせ、さらにその状態から支援魔法の「付与強化」で通常以上の魔力を送り込む。二つの属性の魔力を練り上げ、合成魔術を発動させる。


「火炎弾!!」
『うひゃあっ!?』


気合の込めた声を上げてレナは両手から特大の火炎の砲弾を作り上げ、鎧人形に目掛けて放つ。その光景を見た者達は反射的に距離を置き、マリアはレナの後ろに移動して掌を構える。

火炎弾は鎧人形に的中すると、凄まじい爆発を引き起こす。しかも爆炎が広がるのではなく、標的に触れた途端に火柱と化して飲み込む。これによって鎧人形は火柱の中で燃え盛り、魔法耐性が高いはずのミスリル製の鎧兜が解け始める。しかも木造人形の方は跡形もなく燃えてしまう。


「うわっ……な、何だこの威力!?」
「これはちょっとまずいわね……結界が持たないわ」


燃え盛る火柱を確認してマリアはこのままでは訓練場の結界石が壊れると判断し、彼女は掌を構えた状態で風の聖痕を発動させ、自分達の周囲に風の精霊を呼び集める。精霊は火柱から発せられる熱気を振り払い、二人を守るように周囲を取り囲む。

この時にレナは姿し、マリアに迷惑をかけたと思ったが、ここで違和感を抱く。それは人間であるレナならばあり得ない事が現実に起きていた。
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