1,520 / 2,083
真・最終章 七魔将編
ダインを行かせろ
しおりを挟む
『――アイリス、ここから降りればいいんだな?』
『ええ、そうです。そこから下水道に下りればブラクの元へ行けます』
レナはアイリスと交信を行い、ブラクの位置を教えてもらって下水道への出入口に辿り着く。下水道の出入口はかつて闘技場を運営していた貴族の屋敷であり、その貴族はもういないために無人の館と化していた。
「ダイン、ここから地下へ降りるよ!!」
「えっ!?でも、勝手に入っていいのか?」
「こんな非常時にそんな常識はいらないよ!!」
扉を蹴り破ったレナはダインを連れて下水道に通じる出入口に辿り着き、二人は下水道へ降りた。冒険都市の下水道は消臭石と呼ばれる魔石が嵌め込まれているため、悪臭は全て魔石が吸い込んで臭いは感じない。
「ダイン、この先に何か感じる?」
「ああ……間違いない、あいつがここにいる」
「よし、行こう」
レナの言葉にダインは頷き、二人はブラクの元へ向けて移動を行う。この先に待ち構えているブラクも既に二人の存在は気付いているはずであり、一瞬の油断もできなかった――
――同時刻、冒険都市の城壁には大勢の森人族が集まっていた。彼等はヨツバ王国から派遣された部隊であり、それを率いているのは北聖将のハシラだった。彼の隣にはエリナとシュンの姿もあり、二人とも迫りくる黒雲を見て冷や汗を掻く。
「おいおい、嘘だろ……あれが全部、魔力の塊だっていうのか?」
「俄かには信じられんな。だが、あの禍々しい魔力の波動……事実だろう」
「ほ、本当に私達だけで止められますかね?」
冒険都市の上空に迫る黒雲を見上げながら全員が武器を構え、もう間もなく黒雲は冒険都市を覆い込む。既に北聖将の部隊は黒雲に向けて矢を放ち続けていた。
「撃て!!撃ち続けろ!!」
「矢はいくらでもある!!」
「はあああっ!!」
エリナと同様に北聖将から教えを受けた者達は風属性の魔力を矢に宿して放ち、黒雲を掻き消そうと撃ち続ける。普通の黒雲ならば既に吹き飛ばされていてもおかしくないのだが、彼等の放った矢はまるで黒雲の中に吸い込まれるように消えていく。
矢の纏う風属性の魔力は黒雲を振り払おうとするが、いくら掻き消そうと黒雲は瞬時に元の形に戻ってしまう。それでも全くの無意味というわけでもなく、北聖将軍が矢を撃ち続けてから明らかに黒雲の進行速度が遅くなった。
「そのまま撃ち続けろ!!魔力が切れた者は後続と交代し、回復に専念せよ!!」
『はっ!!』
ハシラの命令に従って兵士は矢を撃ち込み続け、シュンも何時でも攻撃できるように鞘に納めた剣を握りしめ、エリナも準備を行う。この二人とハシラが攻撃を行わないのは他の者たちが抑えている間、彼等はできる限り魔力を消耗しないように待機しておく。
三人が動く時は兵士達が魔力の限界を迎えた時であり、その時が訪れるまでは三人とも力を温存しておく。この調子ならば黒雲が冒険都市に辿り着くまで10分程度の猶予はあり、この10分の間にレナ達がブラクを見つけ出して倒さなければならない。
(坊主、もう時間はないぞ……とっとと倒せ!!)
シュンは心の中でレナ達を思い浮かべ、悔しいが自分では時間稼ぎしかできない事は理解していた。この状況を打破できるのはレナ達しかおらず、彼は一刻も早くブラクを倒すように祈る――
――その頃、空間魔法で冒険都市に戻った者達も街中で避難活動を行っていた。冒険者ギルドに戻ったバルは自分のギルドの冒険者達に指示を与え、街の住民に避難を促しながら騒動に乗じて闘技場から逃げ出した魔物を打ち倒す。
「おらぁっ!!今夜は猪鍋だよ!!」
「フゴォッ!?」
「おおっ、流石はギルドマスター!!」
「ボアを一撃で倒すなんて……」
街中を駆け出していたボアをバルは大剣の一撃で打ち倒し、そんな彼女の姿に他の冒険者が騒ぎ出す。ここ最近は深淵の森で生活していたせいかバルは鈍っていた身体が鍛え直され、この程度の敵ならば苦戦する事もなく倒せる。
これで闘技場から逃げ出した魔物を粗方倒す事には成功したが、問題はまだ残っていた。冒険都市に黒雲が迫っており、今は北聖将軍が時間を稼いでくれるがもう黒雲は既に冒険都市の目前にまで迫っていた。
「そろそろあたしらも避難しないとまずそうだね……あんた達、もう避難活動はいい!!先に建物に隠れてな!!」
「ギルドマスターはどうするんですか!?」
「あたしはもうひと踏ん張り頑張るさ」
「それなら俺達も付き合います!!」
「あんた達……ちっ、勝手にしな!!」
バルだけを残して自分達が安全な場所に避難はできないと黒虎の冒険者達は宣言し、そんな彼等にバルは照れくさそうな表情を浮かべながらも共に移動する。その一方でレミアは他の冒険者ギルドの方も時間ぎりぎりまで冒険者達が住民の避難活動を行っているはずであり、バルはブラクの討伐に向かったレナとダインに願う。
(あんた達に全て掛かってるんだ……しくじるじゃないよ!!)
ダインとはバルも長い付き合いであり、昔から色々と世話を焼かされたが同時に期待していた。二人を信じてバルは住民の避難活動を続ける。
『ええ、そうです。そこから下水道に下りればブラクの元へ行けます』
レナはアイリスと交信を行い、ブラクの位置を教えてもらって下水道への出入口に辿り着く。下水道の出入口はかつて闘技場を運営していた貴族の屋敷であり、その貴族はもういないために無人の館と化していた。
「ダイン、ここから地下へ降りるよ!!」
「えっ!?でも、勝手に入っていいのか?」
「こんな非常時にそんな常識はいらないよ!!」
扉を蹴り破ったレナはダインを連れて下水道に通じる出入口に辿り着き、二人は下水道へ降りた。冒険都市の下水道は消臭石と呼ばれる魔石が嵌め込まれているため、悪臭は全て魔石が吸い込んで臭いは感じない。
「ダイン、この先に何か感じる?」
「ああ……間違いない、あいつがここにいる」
「よし、行こう」
レナの言葉にダインは頷き、二人はブラクの元へ向けて移動を行う。この先に待ち構えているブラクも既に二人の存在は気付いているはずであり、一瞬の油断もできなかった――
――同時刻、冒険都市の城壁には大勢の森人族が集まっていた。彼等はヨツバ王国から派遣された部隊であり、それを率いているのは北聖将のハシラだった。彼の隣にはエリナとシュンの姿もあり、二人とも迫りくる黒雲を見て冷や汗を掻く。
「おいおい、嘘だろ……あれが全部、魔力の塊だっていうのか?」
「俄かには信じられんな。だが、あの禍々しい魔力の波動……事実だろう」
「ほ、本当に私達だけで止められますかね?」
冒険都市の上空に迫る黒雲を見上げながら全員が武器を構え、もう間もなく黒雲は冒険都市を覆い込む。既に北聖将の部隊は黒雲に向けて矢を放ち続けていた。
「撃て!!撃ち続けろ!!」
「矢はいくらでもある!!」
「はあああっ!!」
エリナと同様に北聖将から教えを受けた者達は風属性の魔力を矢に宿して放ち、黒雲を掻き消そうと撃ち続ける。普通の黒雲ならば既に吹き飛ばされていてもおかしくないのだが、彼等の放った矢はまるで黒雲の中に吸い込まれるように消えていく。
矢の纏う風属性の魔力は黒雲を振り払おうとするが、いくら掻き消そうと黒雲は瞬時に元の形に戻ってしまう。それでも全くの無意味というわけでもなく、北聖将軍が矢を撃ち続けてから明らかに黒雲の進行速度が遅くなった。
「そのまま撃ち続けろ!!魔力が切れた者は後続と交代し、回復に専念せよ!!」
『はっ!!』
ハシラの命令に従って兵士は矢を撃ち込み続け、シュンも何時でも攻撃できるように鞘に納めた剣を握りしめ、エリナも準備を行う。この二人とハシラが攻撃を行わないのは他の者たちが抑えている間、彼等はできる限り魔力を消耗しないように待機しておく。
三人が動く時は兵士達が魔力の限界を迎えた時であり、その時が訪れるまでは三人とも力を温存しておく。この調子ならば黒雲が冒険都市に辿り着くまで10分程度の猶予はあり、この10分の間にレナ達がブラクを見つけ出して倒さなければならない。
(坊主、もう時間はないぞ……とっとと倒せ!!)
シュンは心の中でレナ達を思い浮かべ、悔しいが自分では時間稼ぎしかできない事は理解していた。この状況を打破できるのはレナ達しかおらず、彼は一刻も早くブラクを倒すように祈る――
――その頃、空間魔法で冒険都市に戻った者達も街中で避難活動を行っていた。冒険者ギルドに戻ったバルは自分のギルドの冒険者達に指示を与え、街の住民に避難を促しながら騒動に乗じて闘技場から逃げ出した魔物を打ち倒す。
「おらぁっ!!今夜は猪鍋だよ!!」
「フゴォッ!?」
「おおっ、流石はギルドマスター!!」
「ボアを一撃で倒すなんて……」
街中を駆け出していたボアをバルは大剣の一撃で打ち倒し、そんな彼女の姿に他の冒険者が騒ぎ出す。ここ最近は深淵の森で生活していたせいかバルは鈍っていた身体が鍛え直され、この程度の敵ならば苦戦する事もなく倒せる。
これで闘技場から逃げ出した魔物を粗方倒す事には成功したが、問題はまだ残っていた。冒険都市に黒雲が迫っており、今は北聖将軍が時間を稼いでくれるがもう黒雲は既に冒険都市の目前にまで迫っていた。
「そろそろあたしらも避難しないとまずそうだね……あんた達、もう避難活動はいい!!先に建物に隠れてな!!」
「ギルドマスターはどうするんですか!?」
「あたしはもうひと踏ん張り頑張るさ」
「それなら俺達も付き合います!!」
「あんた達……ちっ、勝手にしな!!」
バルだけを残して自分達が安全な場所に避難はできないと黒虎の冒険者達は宣言し、そんな彼等にバルは照れくさそうな表情を浮かべながらも共に移動する。その一方でレミアは他の冒険者ギルドの方も時間ぎりぎりまで冒険者達が住民の避難活動を行っているはずであり、バルはブラクの討伐に向かったレナとダインに願う。
(あんた達に全て掛かってるんだ……しくじるじゃないよ!!)
ダインとはバルも長い付き合いであり、昔から色々と世話を焼かされたが同時に期待していた。二人を信じてバルは住民の避難活動を続ける。
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
魔法使いじゃなくて魔弓使いです
カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです
魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。
「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」
「ええっ!?」
いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。
「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」
攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。