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真・最終章 七魔将編

ダインを行かせろ

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『――アイリス、ここから降りればいいんだな?』
『ええ、そうです。そこから下水道に下りればブラクの元へ行けます』


レナはアイリスと交信を行い、ブラクの位置を教えてもらって下水道への出入口に辿り着く。下水道の出入口はかつて闘技場を運営していた貴族の屋敷であり、その貴族はもういないために無人の館と化していた。


「ダイン、ここから地下へ降りるよ!!」
「えっ!?でも、勝手に入っていいのか?」
「こんな非常時にそんな常識はいらないよ!!」


扉を蹴り破ったレナはダインを連れて下水道に通じる出入口に辿り着き、二人は下水道へ降りた。冒険都市の下水道は消臭石と呼ばれる魔石が嵌め込まれているため、悪臭は全て魔石が吸い込んで臭いは感じない。


「ダイン、この先に何か感じる?」
「ああ……間違いない、あいつがここにいる」
「よし、行こう」


レナの言葉にダインは頷き、二人はブラクの元へ向けて移動を行う。この先に待ち構えているブラクも既に二人の存在は気付いているはずであり、一瞬の油断もできなかった――





――同時刻、冒険都市の城壁には大勢の森人族が集まっていた。彼等はヨツバ王国から派遣された部隊であり、それを率いているのは北聖将のハシラだった。彼の隣にはエリナとシュンの姿もあり、二人とも迫りくる黒雲を見て冷や汗を掻く。


「おいおい、嘘だろ……あれが全部、魔力の塊だっていうのか?」
「俄かには信じられんな。だが、あの禍々しい魔力の波動……事実だろう」
「ほ、本当に私達だけで止められますかね?」


冒険都市の上空に迫る黒雲を見上げながら全員が武器を構え、もう間もなく黒雲は冒険都市を覆い込む。既に北聖将の部隊は黒雲に向けて矢を放ち続けていた。


「撃て!!撃ち続けろ!!」
「矢はいくらでもある!!」
「はあああっ!!」


エリナと同様に北聖将から教えを受けた者達は風属性の魔力を矢に宿して放ち、黒雲を掻き消そうと撃ち続ける。普通の黒雲ならば既に吹き飛ばされていてもおかしくないのだが、彼等の放った矢はまるで黒雲の中に吸い込まれるように消えていく。

矢の纏う風属性の魔力は黒雲を振り払おうとするが、いくら掻き消そうと黒雲は瞬時に元の形に戻ってしまう。それでも全くの無意味というわけでもなく、北聖将軍が矢を撃ち続けてから明らかに黒雲の進行速度が遅くなった。


「そのまま撃ち続けろ!!魔力が切れた者は後続と交代し、回復に専念せよ!!」
『はっ!!』


ハシラの命令に従って兵士は矢を撃ち込み続け、シュンも何時でも攻撃できるように鞘に納めた剣を握りしめ、エリナも準備を行う。この二人とハシラが攻撃を行わないのは他の者たちが抑えている間、彼等はできる限り魔力を消耗しないように待機しておく。

三人が動く時は兵士達が魔力の限界を迎えた時であり、その時が訪れるまでは三人とも力を温存しておく。この調子ならば黒雲が冒険都市に辿り着くまで10分程度の猶予はあり、この10分の間にレナ達がブラクを見つけ出して倒さなければならない。


(坊主、もう時間はないぞ……とっとと倒せ!!)


シュンは心の中でレナ達を思い浮かべ、悔しいが自分では時間稼ぎしかできない事は理解していた。この状況を打破できるのはレナ達しかおらず、彼は一刻も早くブラクを倒すように祈る――





――その頃、空間魔法で冒険都市に戻った者達も街中で避難活動を行っていた。冒険者ギルドに戻ったバルは自分のギルドの冒険者達に指示を与え、街の住民に避難を促しながら騒動に乗じて闘技場から逃げ出した魔物を打ち倒す。


「おらぁっ!!今夜は猪鍋だよ!!」
「フゴォッ!?」
「おおっ、流石はギルドマスター!!」
「ボアを一撃で倒すなんて……」


街中を駆け出していたボアをバルは大剣の一撃で打ち倒し、そんな彼女の姿に他の冒険者が騒ぎ出す。ここ最近は深淵の森で生活していたせいかバルは鈍っていた身体が鍛え直され、この程度の敵ならば苦戦する事もなく倒せる。

これで闘技場から逃げ出した魔物を粗方倒す事には成功したが、問題はまだ残っていた。冒険都市に黒雲が迫っており、今は北聖将軍が時間を稼いでくれるがもう黒雲は既に冒険都市の目前にまで迫っていた。


「そろそろあたしらも避難しないとまずそうだね……あんた達、もう避難活動はいい!!先に建物に隠れてな!!」
「ギルドマスターはどうするんですか!?」
「あたしはもうひと踏ん張り頑張るさ」
「それなら俺達も付き合います!!」
「あんた達……ちっ、勝手にしな!!」


バルだけを残して自分達が安全な場所に避難はできないと黒虎の冒険者達は宣言し、そんな彼等にバルは照れくさそうな表情を浮かべながらも共に移動する。その一方でレミアは他の冒険者ギルドの方も時間ぎりぎりまで冒険者達が住民の避難活動を行っているはずであり、バルはブラクの討伐に向かったレナとダインに願う。


(あんた達に全て掛かってるんだ……しくじるじゃないよ!!)


ダインとはバルも長い付き合いであり、昔から色々と世話を焼かされたが同時に期待していた。二人を信じてバルは住民の避難活動を続ける。
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