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真・最終章 七魔将編

真の鬼人化

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「大丈夫ですか!?」
「いったい何が……」
「吾輩の事はいい……それより、気を付けた方がいいぞ」
「えっ?」


ゴウライの言葉にゴンゾウとミレトは呆気に取られると、直後に3人から離れた場所にあった瓦礫の山が吹き飛ぶ。驚いたゴンゾウ達は視線を向けると、そこには頭から血を流したオウガの姿が存在した。


「ふうっ、ふうっ……何処だ、何処に居る!?」
「あれは……オウガ!?」
「まさか!?」
「くっ……吾輩以上にタフな奴だな」


オウガは血走った目で周囲を見渡してゴウライの姿を探す。しかし、肝心のゴウライは既に甲冑が壊れて負傷しており、仮に彼女の姿を見ても気付く事はないだろう。気付いたところで相手が女性ならばオウガは手を出さず、これ以上の戦闘はできない。

それでもゴウライはゴンゾウとミレトを押し退けて戦おうとしたが、彼女は手元にデュランダルがない事に気付く。先ほどの戦闘の最中でまだ瓦礫の山に埋まってしまったらしく、彼女は慌てて瓦礫の山からデュランダルを探す。


「しまった!?吾輩の武器が……お前達も吾輩の武器を探してくれ!!」
「ええっ!?」
「……ミレト、手伝ってやれ。俺はオウガと戦う」
「何!?こら、待たんかっ!!」
「すまないが待つ事はできない……それにオウガに借りがあるのは俺の方だ」


ゴウライは勝手に戦おうとするゴンゾウを引き留めようとしたが、彼はそれを拒否して上着を脱ぎ去る。そして改めてオウガの元へ向かうと、彼はゴンゾウを見て鼻を鳴らす。


「ふんっ……誰かと思えば巨人族の小僧か」
「この前の様には行かないぞ……」
「ほう……それは楽しみだ」


頭に血が上がっていたオウガだったが、自分の前に再び現れたゴンゾウを見て笑みを浮かべ、ここで冷静さを取り戻す。ゴンゾウはオウガの気迫に冷や汗が止まらないが、それでも師匠の言葉を思い返して再び勝ち目のない戦いに挑む。


「行くぞぉおおっ!!」
「何……!?」


最初からゴンゾウは本気で戦うために「鬼人化」を発動させると、オウガはその姿を見て落胆してしまう。前回の時もゴンゾウは鬼人化を発動させて挑んだが、その時は手も足も出ずに彼に敗れた。

しかし、今回の場合はゴンゾウは鬼人化を発動した瞬間、彼の身体が一回り程小さくなった。それを見たオウガは驚愕し、彼は今まで「鬼人化」の使い手とは何人も戦った事はあるが、体型が縮まる変化など初めて見た。但し、ゴンゾウの場合は身体が小さくなったわけではなく、全身の筋肉が凝縮されて小さくなったように見えるだけである。


「ふううっ……!!」
「貴様……ぐふぅっ!?」
「うおおおおっ!!」


鬼人化を極めたゴンゾウはオウガに対して拳を繰り出すと、そのあまりの速度にオウガは反応できずに腹部に強烈な衝撃が広がった。あまりの威力にオウガの肉体が吹き飛び、彼は後方に存在した瓦礫の山に埋もれる。


(馬鹿なっ……何だ、今の速度は!?)


鬼人化を発動させたゴンゾウは肉体の限界以上に身体能力を引き延ばし、反面に肉体に大きな負担を与えていた。ゴンゾウは一撃放っただけで全身が張り裂けそうな痛みを味わうが、それでも彼は歯を食いしばってオウガへ突進した。


「うおおおおっ!!」
「ぐううっ!?」


ゴンゾウは突っ込むとオウガは咄嗟に両手を伸ばしてゴンゾウを抑えようとした。だが、まるで猛牛の如く突っ込んだゴンゾウはオウガの力で抑えきれず、瓦礫の山が吹き飛んで二人は街道に転がり込む。


(何という力だ……面白い!!)


街道に転がり込んだオウガは笑みを浮かべ、自分が窮地に立たされたにも関わらずにゴンゾウの強さに感動していた。前回に会った時よりも彼は強くなっており、しかも自分を最初から殺しに来ていた。

精神的にも肉体的にも甘さがあったゴンゾウだが、今回の彼は自分の全てを費やしてでもオウガを倒すつもりで訪れた。最悪の場合、相打ち覚悟で彼はオウガに挑む。


「うおおおおっ!!」
「がああああっ!!」


ゴンゾウは両拳を振りかざすと、オウガも全身に紅色の魔力を宿して二人は拳を交わす。お互いに一歩も引かずに相手を殴りつけ、その衝撃だけで地面に振動が走る。二人は激しく殴り合い、血塗れになりながらも彼等は殴り合いを止めない。


(強い……今まで戦ってきた誰よりも強い!!だが、こいつを倒せば俺は……!!)


殴り合いながらもゴンゾウはオウガから一瞬たりとも目を離さず、彼に目掛けて全力の拳を叩き込む。オウガの強さは彼の師匠よりも上だが、それでもゴンゾウは逃げずに正面から戦う。血塗れになろうと骨が折れようとゴンゾウは引き下がらず、ここで下がるようなら「漢」ではない。

それでも彼の意志と反して肉体の方は限界を迎え、鬼人化の限界時間を迎える。ゴンゾウの鬼人化は元々長続きはしないが、肉体に大きな負担を与える事を条件に更なる力を引き出した。その反動で彼は鬼人化を維持できるのは「30秒」足らずである。既に戦闘開始してから20秒以上経過しており、もう間もなく彼の鬼人化は解除される。
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