不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

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真・最終章　七魔将編

迫りくる脅威

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――冒険都市で起きた異変は監獄だけではなく、他の場所でも起きていた。遠方から黒雲が迫り、その光景を目にした城壁の兵士達は慌てた様子で鐘を鳴らす。

「警告、警告！！」
「黒雲が近付いている！！またあの黒雨が降るかもしれん！！」
「外に出ている者はすぐに建物の中に避難させろ！！」

先日にブラクが作り出した黒雲の雨を受けた人間は呪詛に侵され、危うく大勢の人間が犠牲になる所だった。寸前の所でホネミンが駆けつけて呪詛の浄化の薬を作ってくれたので助かったが、また雨が降れば再び大勢の人間が危険に晒される。

警告の金の音を鳴らす事で兵士達は街の人間達に危険を知らせ、急いで建物の中に避難するように促す。しかし、この時に城門の方から轟音が鳴り響く。何事かと兵士達は城門に視線を向けると、そこには予想外の人物が立っていた。

「な、何だ！？今の音は……」
「警備隊長！！あれを見てください！？」
「何だ……う、うわぁあああっ！？」

城壁の兵士全員が城門に視線を向けると、そこには城門の前に立つ「鬼人将オウガ」の姿が存在した。先ほどの轟音はオウガが城門を殴りつけた音らしく、彼の一撃で城門に亀裂が走る。

「ぬんっ！！」

オウガが拳を再び叩き付けると、城門の亀裂が広まっていく。冒険都市の城門は外部からの魔物の侵入に備えて非常に頑丈に作られているはずなのだが、オウガの三度目の拳を受けた瞬間に崩壊してしまう。

「ぐおおおおっ！！」
「ま、まずい！！離れろっ！！」
「うわぁあああっ！？」
「ひいいっ！？」

城門にオウガの拳が叩き付けられた瞬間、遂に城門は崩壊して城壁ごと破壊される。城門付近の城壁も崩壊するのを見て兵士達は慌てて避難するが、城門が崩壊した事で遂にオウガは冒険都市へと乗り込む。

破壊した城壁や城門の瓦礫を乗り越えてオウガは都市内に侵入すると、地上に待機していた兵士達が駆けつける。彼は弓を構え、その中には魔術師も含まれていた。見張り役を行っていたのは兵士だけではなく、冒険者も含まれていたのだ。

「止まれ！！それ以上に近付けば撃つぞ！！」
「……呑気な奴等だ」

自分に対して弓と杖を構える兵士と冒険者の集団を見てもオウガは動じず、その態度に地上に集まった者達は冷や汗を流す。オウガの迫力だけで彼等は圧倒され、まるで大型の猛獣を目の前に立った小動物のような気分を味わう。

(な、なんだこいつ……こ、怖い)
(嘘だろ……こんな化物がいるなんて)
(これならまだ魔物と対峙した方がマシだ……！！)

オウガの迫力だけで兵士も冒険者も圧倒され、無意識に後退ってしまう。そんな彼等を見てオウガはゆっくりと片足を上げると、気合の込めた声を上げて地面に叩き付ける。

「雑魚に用はない……消えろ！！」
『うわぁあああっ！？』

浮き上げた足が地面に叩き付けられた瞬間、地面に強烈な振動が走ってオウガを取り囲んでいた兵士と冒険者の足場が崩れ去る。オウガは足を踏みつけるだけで地面を砕き、地下に存在する下水道まで兵士と冒険者は落下した――

――オウガが侵入したのと同時刻、冒険都市内の下水道ではブラクとアルドラの姿があった。先日までアルドラの肉体は呪詛に侵されていたが、現在の彼女はほぼ元通りの肉体に戻っていた。

「アルドラよ、身体の調子はどうだ？」
「……お陰様で最高の気分よ」
「ふんっ……言っておくが俺に逆らえばどうなるか分かっているな？」

現在のアルドラは露出度の高い恰好をしており、背中の部分が丸だしのドレスを着こんでいた。そして現在の彼女の背中には髑髏を想像させる紋様が浮かんでいた。この紋様はタトゥーの類ではなく、彼女の身体に宿った呪詛が集まって髑髏の形を形成していた。

アルドラの肉体を侵した呪詛はブラクの手に寄って背中側に集められ、彼の術で髑髏の形に変化して抑えられている。しかし、もしもアルドラがブラクに逆らえば彼はすぐに背中の髑髏を通じて彼女の命を奪う事もできた。そのためにアルドラはブラクには逆らえず、彼の言う通りに動くしかない。

「オウガの奴は派手に動いているようだな……よいか、我々の目的はこの地に集まる強者共を皆殺しにして手駒を手に入れる事だ。決して目的を見誤るな……約束を果たせばお前達を自由にしよう」
「……分かってるわよ」

ブラクの目的は冒険都市の冒険者達の命であり、この冒険都市には世界中から集まった優秀な冒険者が存在する。その中には剣聖も含まれ、魔剣や聖剣などの使い手も多い。彼等を殺して死体を手に入れるのがブラクの目的だった。

(冒険者共を皆殺しにして儂の影を送り込む……そうすれば最強の死人軍団が完成する。後はオウガとアルドラを利用し、魔人将ラストを殺せばこの世界は儂に逆らう者はおらん)

優秀な冒険者を殺して死体に影を植え込んで手駒に変え、更に他の七魔将を利用して魔人将を殺す。これがブラクの計画の最終段階であり、彼は遂に魔人将に牙を剥く。

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