上 下
1,489 / 2,083
真・最終章 七魔将編

時を操る魔法使いの存在

しおりを挟む
『アイレーダー、敵の位置を補足してくれ』
『私をレーダー扱いするとはいい度胸ですね、毎晩夢に出て復讐しますよ』
『ごめんごめん……でも、牙人将の正確な位置は分からないの?』
『勿論分かりますよ。けど、教えても意味はないと思いますけどね。相手は常に移動中ですから私が位置を教えてもその場所に留まっている保証はありません』


アイリスならば牙人将の位置を把握する事は容易いと思われたが、牙人将は常に森の中を移動しているらしく、そのせいで位置を教えてもらっても見つけ出すのは難しい。現在の牙人将は普通の状態ではなく、森中を駆け巡っては餌となる魔物や動物を食い荒らしている事は既にレナも知っている。


『今現在の牙人将は普通じゃありません、それに森の中は牙人将にとっては最高の環境です。市街地や平地だったらまだ見つかりやすいですけど、障害物が多い森の中だと捜索も困難ですよ』
『全く、面倒を起こすな……まあ、ダイン達と合流はできたし、あとは叔母様だけかな』
『マリアの方は……まあ、心配ないでしょう。いずれ自力で戻ってきますよ』
『叔母様なら心配してないよ』


はぐれてしまった面子の中でレナ達が合流をしていないのは「ソル」「ホムラ」「マリア」の3名である。この内のホムラは魔人将に捕まってしまい、マリアに関しては厄介な地に訪れている事はレナも聞いていた。しかし、ソルに関しては特に情報はない。


『あのソルとかいう人はどうしたの?』
『ソルですか、ちょっと待ってくださいね……ん?』
『どうしたの?』
『いえ、ちょっと不具合が……すいません、一旦交信を閉じますね』
『え、急にどうしたの?』


一方的にレナはアイリスの方から交信を遮断され、精神が現実世界へ戻る。何事か起きたのかとレナは疑問を抱くが、ここで彼は後方から物音を耳にして振り返ると、そこには頭を抑えたミレトが立っていた。


「ミレト!?どうした?」
「うっ……いや、なんでもありません」


ミレトが頭を抑えている事に気付いたレナは心配して駆け寄ると、彼は不思議そうに周囲を見渡す。ミレトの行為にレナは疑問を抱くと、彼は予想外の言葉を発した。


「あの……今、誰かと話してました?」
「えっ……いや、ここには俺しかいないけど」
「……す、すいません。そんなわけないですよね」


レナはミレトの言葉を引いて動揺するが、顔には出さないように気を付けてこの場所には自分しかいない事を伝える。ミレトはレナの言葉を聞いて彼以外に人の姿も気配も感じない事を確認し、頭を抑えながら謝罪を行う。

二人が居る場所には他に人は存在せず、アイリスとの交信を行っている間はして誰にも干渉されないはずだった。しかし、時の聖痕の所有者であるせいかミレトはレナとアイリスが交信を行う時に何かを感じ取っているらしく、だからこそアイリスも交信を打ち切ったのだろう。


(そういえばかなり前にアイリスは時を操る魔法使いもいるとか言ってたけど……まさか、ミレトが?)


まだこの世界に訪れたばかりの頃、レナはアイリスから時を操作する魔法使いも居る事も聞いた事を思い出す。尤も今までにレナはそんな人物と会った事がなかったが、ミレトがアイリスとレナの会話を聞いていたのならば彼がその時を操る魔法使いの可能性が高い。


「ミレト、もしかして君は……」
「おい、レナ!!ここに居たのかい!!」
「えっ……バル?」


レナはミレトに話しかけようとした時に慌てた様子のバルが駆けつけ、彼女は非常に焦った様子でレナの腕を掴む。何事か起きたのかとレナが聞き返す前に彼女はレナの腕を引っ張っていく。


「とんでもない奴が現れたんだよ!!あんたしか対処できない、何とかしてくれ!!」
「とんでもない奴?まさか、牙人将が……」
「いいや、違う!!あんたを探してるんだよ!!とにかく、こっちへ来な!!」
「俺を探してる?」
「あ、あの……何かあったんですか?」


バルは無理やりにレナを引き寄せて駆け出すと、その後にミレトが続いて何が起きたのかを問う。彼女は走りながら説明を付け加える。


「この森の主が現れたんだよ!!あんたに会わせろと言い出してダインとゴンゾウが捕まった!!」
「あの二人が!?」
「どうして!?何があったんです!?」
「いいから早く走りな!!見れば分かるよ!!」


遺跡に現れたという「森の主」は実力者であるダインとゴンゾウが人質に取り、レナに自分の元へ訪れるように要求してきた。バルは森の主に対してレナ以外に対処できる人間はいないと判断して彼に託す。

森の主と言われてもレナには心当たりがなく、何者が訪れたのかと警戒しながらもレナ達は遺跡の出入口へと向かうと、そこには大勢の冒険者が集まっていた。どうやらレナ達以外の冒険者は全員勢揃いしていたらしく、遺跡の外から現れた訪問者を取り囲んでいる様子だった。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。