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真・最終章 七魔将編

陽動

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(野生のゴブリンが地下から潜り込んで王都に侵入してきた?いえ、ありえません!!王都近辺にはゴブリンはいないはず……)


王都近辺は定期的に魔物の掃討が行われているため、野生の魔物は王都の付近には滅多に近づく事はない。しかもゴブリン種は草原には住みつかず、基本的には山岳地帯で生息する種である。

ゴブリンの死骸を確認したレミアはこの状況でゴブリンが罠に嵌まった事に違和感を感じ、死骸を調べてみて怪しい点がないのかを探る。すると彼女はゴブリンの胸元に黒色の魔石のような物が埋め込まれている事に気付き、すぐに魔石の正体を彼女は見抜く。


「これはまさか……死霊石!?という事はこのゴブリンはまさか!!」


胸元の部分に死霊使いが死霊人形を生み出す際に利用する「死霊石」らしき物を発見し、即座にレミアはゴブリンの正体が死霊人形だと悟る。恐らくは何者かがゴブリンを死霊人形へと変貌させて操り、この罠が仕掛けられた地下と地上の出入口を突破させようとした。

死霊人形は死霊使いに絶対服従であるために命令には逆らえず、罠がある事を知りながらも何者かはゴブリンを囮にして地上への出入口を開かせた。結果はゴブリンは罠に嵌まって爆発した際に死霊石は破壊されてしまったらしく、現在は完全に死亡していた。


(まさか我々の罠が見抜かれていた?ですが、わざわざゴブリンを死霊人形に変貌させて罠を解除させるためだけに送り込むなんて……まさか、他の場所でも同じことが!?)


レミアは顔を上げると何時の間にか先ほどよりもあちこちで煙が上がっている事に気付き、その煙が上がった全ての場所は地下に通じる秘密の出入口が存在する場所だった。どうやら敵は罠を見抜いた上で死霊人形と化した魔物を送り込んで罠を無効化させているらしい。


「まさか、陽動!?という事はガイアは今どこに……」


七魔将のガイアが死霊人形を生み出せるはずがなく、状況的に考えてもガイアの他に王都には死霊使いが既に紛れ込んでいる。そして死霊使いの正体はレミアにも心当たりがあった。


(既に王都には他の七魔将が……!?)


ガイアと同じく七魔将にしての異名を持つ「ブラク」が既に王都内に紛れ込んでいる可能性が高く、次々と作動する罠は恐らくは地上の兵士達を注意を引くためのの可能性が高い。

ブラクの狙いは分からないがガイアと結託して何らかの事を起こそうとしている事は間違いなく、急いでレミアは他の兵士と合流してガイアとブラクを探し出す必要があった。だが、闇雲に動き回っても見つかるとは思えず、レミアは全神経を集中して聖痕に触れる。


(もしも王都の中にブラクがいるのであれば……私ならきっと感じ取れるはずです!!奴の禍々しい気配は覚えています!!)


レミアは額に十字架を想像させる紋様を浮かばせ、彼女の聖属性の聖痕は悪しき魔力を感知する能力もあった。特にブラクのような死霊使いは禍々しい闇属性の魔力を持ち合わせているため、仮に王都にいるのであれば居場所を感じ取れるはずだった。


(気配は……感じます!!)


全神経を集中させる事でレミアはブラクの禍々しい気配を感知し、正確な居場所を探ろうと瞼を閉じた。意識を集中すればするほどにレミアはおぞましい魔力を感じ取り、位置を特定して信じられない表情を浮かべる。


(この方角は……まさか!?)


慌てた様子でレミアは顔を振り返ると、彼女の視線の先にはこの王都の中心部に存在する「王城」を視界に捉えた――





――同時刻、王城の方でも大騒ぎになっていた。街中であちこちに煙が上がるせいで城内の兵士達は混乱する中、女王であるナオと彼女の養母であるアイラは事態の把握のために玉座の間に家臣を集める。


「いったい何が起きている!!連絡はまだか!?」
「も、申し訳ございません!!現在、調査中でございます!!」
「ナオちゃん……いえ、女王陛下。落ち着きなさい、上に立つ人間が焦っていては駄目よ」
「ア、アイラさん……そうですね、取り乱しました」


流石のアイラも家臣の前ではナオの事を子供扱いはできず、あくまでもナオの事をこの国の王として扱う。アイラの言葉にナオは冷静さを取り戻し、一先ずは状況の把握を行うために街に兵士を派遣した。

この王都には数万の兵士が存在するが現在は街のあちこちで発生している煙の原因を調べており、その煙の正体がまさか地下へ通じる出入口に仕掛けられた罠が作動している事は誰も気づかなかった。一応はレミアも罠が仕掛ける事は話を通しているが、まさかほぼ一斉に全ての罠が作動する事態に陥るなど誰も予想さえできなかった。


「女王陛下!!只今調査に出向いた兵士達が戻ってきました!!」
「やっとか!!すぐに通せ!!」
「はっ!!おい、早く連れて来い!!」


城下町に調査に向かった兵士が戻ってきたという報告を聞いてナオはすぐに玉座の間に通すように伝えると、玉座の間に何故か酷い大怪我を負った兵士が現れて家臣は驚く。
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