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真・最終章 七魔将編

水晶札の作り方

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「うわっ!?何だ!?」
「くぅっ……こ、殺す気か!!」
「おい、今何をしたんだ!?」
「レナさんの持っていた水晶札に電撃が吸収されたように見えましたね」
「吸収だと……馬鹿な」


レナがハルナの拳を水晶札で受けた際に危うく吹き飛ばされかけるが、どうにか事前に身体強化を発動させていたので留まる事ができた。しかも攻撃を受けた際に水晶札にハルナの電撃が吸収され、水晶札の表面の紋様が黄色に光り輝く。

水晶札は吸収した魔力を色で表すらしく、黄色に輝くという事は雷属性の魔力を宿している事を意味している。ちなみにマリアの転移魔法は白色であるため聖属性の魔力を意味する(転移魔法は聖属性の魔力で生み出した光に覆われ、目的地まで高速で移動する高等魔法である)。


「ふうっ……とりあえず、実験は成功かな」
「これは興味深いですね。レナさん、さっき吸収した魔力を使う事はできますか?」
「多分、できると思うけど……解放《リリース》!!」
「うおっ!?」


ホネミンに言われてレナは右手で掴んだ水晶札を前に突き出し、封じ込められた魔力を解放すると電撃が放たれる。水晶札の数メートル先まで電流が放出されるが、水晶札に宿った魔力を使い切ると消えてしまう。


「ほほう、これは面白いですね。さっきのハルナさんから吸収した分だけの魔力を放出しましたね。でも、それって吸収した魔力を分割して放出する事はできますか?」
「いや、それは無理だよ。叔母様が言っていたけど解放術式は一度に吸収した魔力を一気に解放する事しかできないって……」
「なるほど、あくまでも単発しか使えないわけですか」
「すげ~……どうなってるんだそれ?」
「お嬢ちゃんもとんでもない物を作り上げたな……」
「流石はマリア殿だ」
「ぷるるんっ(実験終わった?)」
「ウォンッ(出てきていいよ)」


レナが再現した水晶札は本物オリジナルと全く同じ性能を誇り、この水晶札を利用すればあらゆる魔法攻撃を吸収する事ができる。そして吸収した魔力は所有者の意思で解放する事ができるが、弱点としてハルナのように拳で魔力を纏って殴り掛かられたり、魔法剣や魔刀術の攻撃の場合は魔力は吸収しても相手の攻撃の衝撃は無効化はできない。

先ほどのハルナの攻撃で水晶札が砕けていたら魔力を吸収できずにレナも吹き飛ばされていた。それに他の弱点として吸収した魔力を解放する場合は一度に全て放出されるため、分割して少しずつ魔力を生み出す事はできない。それでも転移魔法のような高等魔法さえも封じ込める事ができる点では優れた魔道具である事に変わりはない。


(水晶札を使えば色々と役立ちそうだな……でも、俺の作り出す水晶札は長くは持たない)


錬金術師の能力で作り上げた物体は本物と全く同じ性能だが時間経過によって元の物体に戻ってしまう。こればかりはレナでもどうする事はできず、物質変換と形状高速変化の能力で水晶札を作り上げたとしても長持ちはしない。恐らくだが水晶札に吸収した魔力も元の物体に戻った場合は暴発してしまう危険性があった。


(こうして触れ続けていれば元の物体に戻る事はないけど、その分にこっちの魔力を使うからきついな)


レナが触れている間は変換した物体は元に戻る事はないが常に彼が魔力を消費し続ける事になる。形状高速変化はともかく、物質変換などの能力は結構な魔力を消費するので長時間の維持は難しい。


「叔母様の持っている水晶札の素材があれば簡単に作り出せるんだけどな。折角なら氷雨のギルドから持って来れば良かった」
「何を言うか、いくら甥とはいえマリア殿の所有物を勝手に使うなど許される事ではない!!」
「まあ、嬢ちゃんなら許してくれそうだけどな……」
「どうでもいいけど飯にしない?もう腹が減って動けないよ……」
「ずっと狼車に乗って寝てただけなのにそんなにお腹空いたんですか?」
「仕方ないな……飯にするか」
「ウォンッ!!」
「ぷるぷるっ(雨飲んでくる)」


ハルナが空腹が我慢できないという事でレナは食事の準備を行おうとすると、スラミンだけは雨水に当たって水分を補給する。スライムであるスラミンの場合は雨水もご飯になるため、瞬く間に大量の雨を吸い込んで身体が大きくなっていく。


「ぷるるんっ(どすこいっ)」
「うわぁっ!?あ、青いのがでかくなったぞ!!キングか!?キングになったのか!?」
「いや、これは水を吸い込み過ぎてメタボになっただけですね。ほら、ちょっと吐き出しなさい」
「ぷるしゃああっ……(←余分な水分を吐き出す)」
「全く……呑気な奴等だ」
「別にいいだろ、おっさんの方こそ少しは馴染めよ」
「……余計なお世話だ」


旅の面子の中で常にロウガだけはシュン以外の人間は若干打ち解けておらず、特にレナに対しては彼は極力関わろうとしない。レナもロウガが自分を避けている事は理解しているためあまり積極的に話す事はないが、他の者も二人の間の空気が微妙な事は理解していた。
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