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真・最終章 七魔将編

覚醒のためには……

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「……何を持って来た」
「我々が拠点としている場所には炎龍の影響で良質な火属性の魔石が大量に手に入るからな。正確には炎龍の魔力を吸い込んだ鉱石だが」
「炎龍、だと……貴様!!」
「気に入らないか?しかし、これを食せばお前は力を手に入るのだぞ」
「ぐうっ……!!」


炎龍の単語を聞いた途端にガイアは怒りを抱き、彼にとっては自分以外の竜種は「敵」として認識している。しかも炎龍の魔力を吸い込んだ鉱石を喰らうなど屈辱でしかない。彼からすれば炎龍の魔力の残滓を吸い上げた鉱石を食すという行為は恥でしかなく、もしも万全な状態ならばブラクを八つ裂きにしていただろう。

しかし、現在のガイアは強がってはいるが肉体の方は限界は近い。このままではいずれ餓死する事は目に見えているため、彼はブラクが放り投げた壺を受け取って中に入っている大量の火属性の魔石を確認する。


「ここで貴様に死なれるとこちらとしても都合が悪い。せいぜい、生き抗ってみせろ」
「貴様……!!」
「長い付き合いだ、これは儂からの慈悲だと思え」


ブラクは壺を渡すとそのまま暗闇に溶け込むように姿を消す。そんな彼に対してガイアは受け取った壺を反射的に投げ返そうとしたが、火属性の魔石に強い衝撃を与えると爆発する恐れがあるので仕方なく床に置く。


「ちぃっ……こんな物!!」


ガイアは床に置いた壺を蹴りつけると中身の魔石が床に散らばり、彼は屈辱感を覚えながらも魔石を拾い上げる。腕を震わせながらもガイアは口元に魔石を運び込み、次々と飲み込んでいく。

魔石を下手に噛み砕けば暴発する恐れがあるのでガイアは飲み込み、体内に魔力を吸収して鉱石の方は消化する。仮にも竜種であるガイアの胃の消化力は凄まじく、魔石すらも完全に体内に取り込んで力を得る。他の竜種の魔力を宿す鉱石を食すなど非常に気に喰わないが、このまま死ぬぐらいなら屈辱に耐えて魔石を食して力を取り戻す事にガイアは専念する。


「グゥウウウッ……!!」


やがて壺の中の全ての魔石を飲み込むとガイアの腹が膨れ、全身が発熱したかのように苦しみもがく。一気に大量の魔石を食した事で彼の体内には膨大な火属性の魔力が取り込まれ、やがて皮膚の色が緑色から赤色へと変色していく。


「ハアッ、ハアッ……アアアアアッ!!」


ガイアの咆哮が王都の地下に響き渡り、大量の魔力を吸収した事で新たな力を得たガイアは天井に向けて火炎の吐息を放つ――






――そして時は戻り、狼車の修復を終えたレナ達は王都へ向けて急いでいた。レナはウルに定期的に回復魔法を施して彼に頑張って運んでもらい、その間にもシュンとハヤテは剣の手入れやホネミンは薬の調合を行う。しかし、ハルナだけは暇そうに横になりながら他の者たちの作業を伺う。


「ふああっ……眠いな」
「ふん、呑気な小娘だな……暇ならば鍛錬でもしたらどうだ」
「止めてくださいよ、こんな狭い場所で鍛錬なんてされたら邪魔で仕方ありませんから」
「そういえば気になっていたんだが……ハルナの嬢ちゃんはどうやってそれだけの力を手に入れたんだ?雷属性の魔法を使える奴は滅多にいないからな」
「ん?ああ、昔に雷に打たれたらこんな風になったんだよ」
「ほほう、それは気になりますね。解剖して調べてもいいですか?」
「嫌だよ、殺す気か!?」


ホネミンの発言にハルナは怯える様にレナの傍に移動すると、シュンはハルナの話を聞いて彼女が雷の魔力を操れる理由を知る。この世界では雷属性の魔法の使い手は滅多に存在せず、一応はレナも扱えるが滅多に使う事はない。


(地竜との戦闘でハルナは雷の聖痕を持っていたからカラドボルグの真の力を引き出せた。という事はハルナにカラドボルグを渡せばあんなに凄い攻撃をまた繰り出せるかもしれないけど……今のカラドボルグは王都に保管してるんだっけ?)


レナがこの世界に転生してから初めて手にした聖剣「カラドボルグ」は元々は冒険都市の貴族の所有物だったが、長年の間に誰も使われずに放置されていたので錆びた状態で貴族の屋敷の倉庫に保管されていた。レナが貴族の屋敷に忍び込んでバルの知り合いの鍛冶師に打ち直して貰って修復された後、腐敗龍との戦闘でレナはカラドボルグをナオと共に使用して冒険都市の窮地を救った。

現在は王都の王城にて保管されているはずであり、今の所は聖剣を使いこなせる人間は見つかっていない。レナもカラドボルグは使いこなす事ができず、やはりレミアのエクスカリバーのように聖剣の属性と使用者の魔法の適性が一致した人間でなければ聖剣は使いこなせないと考えるのが妥当だろう。


(聖剣か……まあ、俺には退魔刀や鏡刀があるからどうでもいいか)


聖剣は確かに強力な武器ではあるがレナにとってはずっと使い続けた退魔刀や鏡刀の方が最高の武器だと考え、そもそも聖痕を宿していない彼では聖剣の真の力を使いこなせない。そのために今後も聖剣を手にする機会があっても武器として使う事はないと考えた。
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