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真・最終章 七魔将編

洗脳対策

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「…………」
「ほ、ほら!!ちゃんと飲んだでしょう!?なら、行かせてもらうわよ!!」
「え?え、ええ……」
「行くわよ、ルナ!!」
「……(頷く)」


あまりにもあっさりとルナが水筒の水を飲んだ事にシズネは唖然とするが、中身を飲みほした以上はルナとカノンを引き留める事はできず、二人を都市内に通す事を認めるしかなかった。

シズネはルナの背中を見て疑いの表情を浮かべるが、彼女がアルドラの血が混じった水を飲んだ以上は彼女は逆らう事はできない。カノンの場合はアルドラと契約を結んでいるので彼女には無理やり水を飲ませる事はできないため、ここは見送る事しかできなかった――





――二人が都市内に入った後、すぐに路地裏の方へと戻るとカノンは安堵した表情で顔に張り付いていた「ヒトミン」を引き剥がす。そして顔を出したのは「レナ」であり、実を言えばカノンに偽装していたのはレナだった。


「ふうっ……危ない所だった」
「ぷるるんっ」


スライムの擬態能力を利用してレナはカノンに化けており、この時に彼はマスクの様な物を付けていた。これはフェリスが個人的に所有する魔道具であり、以前に彼女は眼帯型の手品用の魔道具を持っていたが、こちらのマスクは声をある程度変化させる事ができる。

そしてルナに化けていたのは「ミレト」であり、実を言えば彼はルナの服を着せた後に頭の上にスラミンを乗せ、スラミンはルナの顔に擬態する。つまり、頭の上に擬態したルナの顔を乗せてミレトの方は服の部分に隠れていたのだ。


「ブペッ!!(←液体を吐き出す)」
「ふうっ……びっくりしましたね、あの人凄く強いですね」
「でもよく気づかれなかったね。スラミンも偉いぞ~」
「ぷるぷるっ(まずい物、飲まされかけた)」


アルドラの血が入った水をスラミンは吐き出し、どうやらいくらアルドラの血でもスライムには聞かなかったようだ。スライムは汚れた水の中に入っても汚れを吐き出す力を持ち、アルドラの血も受け付けないらしい。

最初はレナが変装して中に入るつもりだったが、色々と考えた上でミレトに同行してもらう。どうして彼を選んだのかというと、背格好的にレナの数多一つ分下の身長の子供は彼一人だった。


「助かったよミレト、ナイス演技」
「どうも……でも、こんな格好するとは思いませんでした」
「もう少し我慢してね」


レナはスラミンとヒトミンを改めて顔に張り付かせて変装を行い、ここから先はアルドラのいる場所へ向かう。作戦内容はアルドラがいるはずの氷雨のギルドへと乗り込み、そこで一気に全員を呼び出してギルドを包囲する。シズネが外に出ていたのは好都合であり、今のうちに氷雨のギルドへ向かえば彼女と交戦せずに済む。


「よし、行くぞミレト!!」
「はい!!」


ミレトと同行している間はレナは彼を気遣ってアイリスとは交信が行えず、アルドラの様子を確認できない。しかし、それを踏まえた上で事前にアイリスと相談した作戦を立てており、アルドラの性格を把握している彼女の助言の元、作戦を練って他の人間に伝えている。

変装した二人は氷雨の屋敷に向けて移動を行い、この時にカノンの姿が役に立つ。彼女はアルドラに直接依頼を受けており、アルドラに依頼の報告と称して近づける。ルナに変装したミレトは彼女の付き添いとして同行すれば問題ない。


「街の様子は……不気味な程に静かだな」
「人もあんまり見かけませんね……いるとしても女の人ばっかりです」
「男は別の場所に隔離されているんだっけ……」


洗脳されていたジャンヌによると男性は監獄に送り込まれ、この中にはロウガやシュンも含まれているという。剣聖である二人だが流石にゴウライやシズネやハヤテが相手だとどうしようもできず、未だに捕まっている。アイリスによれば二人とも無事らしく、後で助けに向かう必要があった。


「よし、氷雨のギルドまでもう少し……うわっ!?」
「どうしました!?」
「いや……なんか、やばい気配を感じた」


ギルドに近付いた瞬間、レナの気配感知と魔力感知に反応があり、ギルド内にて途轍もなく大きな気配を二つ感じ取った。その内の一つはゴウライであり、彼女もここにいたらしい。そしてもう一つは以前に地下で遭遇した七魔将のオウガの気配だと感じとる。


「どうやらゴウライと……七魔将のオウガという奴はここにいるみたい」
「そんな事まで分かるんですか?凄い……でも、アルドラは?」
「この二人の気配が大きすぎて他の人の気配は掴めないな……」


ゴウライとオウガの存在感が大きすぎて感知系の能力が上手く発動せず、レナは困り果てた。尤もギルドに入ればレナはカノンとして依頼をアルドラに報告する必要があり、この時にレナはミレトに頼む。


「ミレト……もしもアルドラの傍にオウガやゴウライがいたら俺が何とかするから、その間に君がアルドラを倒せ」
「はい……」
「……できるか?」
「大丈夫です……できます」


レナの質問にミレトは緊張した様子も見せずに頷き、もしもの場合はミレトがアルドラの命を奪う事になるのだが、彼は一切の迷いもなかった。相手の命を奪う事に何のためらいもないあたりはしっかりとイレアビトの血を継いでおり、その事にレナは不安を抱くが、この時ばかりはミレトが頼りだった。




※本日の12時にコミカライズ版の不遇職が更新されます!!遂にあのキャラクターが登場します!!
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