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真・最終章 七魔将編

厳重警戒態勢

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煙が晴れると、ガイアが立っていた場所には穴が出来上がっており、その穴を覗き込むと下水道に繋がっている事が判明した。どうやらガイアは下水道に逃げ込んだらしく、レミアとアイラは流石に顔をしかめた。


「……どうやら、この中に逃げ込んだようですね」
「あらら……追いかけるのは流石に危険ね」
「くっ……止めを刺すべきでした」


レミアは背中に抱えていた聖剣に視線を向け、市街地での聖剣の使用を躊躇したが故にガイアを取り逃した事に悔しく思う。その一方でアイラの方はガイアが何者なのか気にかかり、冒険者時代の記憶を手繰り寄せるがあのような生き物は見た事がない。


(リザードマン?いいえ、鱗の色が違ったわね。それに人間の言葉を完全に理解していた。知能も相当に高そうだし……何よりあの不気味な髑髏の首輪、何だったのかしら?)


アイラがガイアを見てに気になったのは首に掲げている髑髏の水晶であり、戦闘の際中もガイアはしきりに首元に欠けている髑髏の水晶を気にしていた。アイラの戦闘中にガイアを観察していた際、髑髏の水晶が時々目元の部分が光っているように見えた。



――この時のアイラの勘は冴えわたっており冴え渡っており、ガイアが首にかけている髑髏の水晶が取り付けられた首輪は彼の真の姿を封じ込める呪具である。仮にこの呪具を破壊していた場合、とんでもない事が起きた。



最もガイアの呪具は簡単には壊れないように設計されており、いくらアイラでも破壊する事は不可能だったが、それでも彼女は武人の本能で危険を感じ取る。その一方でレミアはガイアの顔を思い出し、以前に遭遇した七魔将である事に気付く。


「思い出しました!!奴は七魔将です!!」
「七魔将?という事はうちのレナちゃんやマリアに手を出したあの……?」
「ええ、その通りです。間違いありま……ひいっ!?」


ガイアの正体が七魔将だと知った途端にアイラは表情を一変させ、先ほどまでは余裕のある大人な女性の態度を取っていたが、彼女にとって大切な息子と妹が行方不明になった原因だと知ると、態度を一変させる。


「あらあら……まさか自分達の方から来てくれるなんて好都合ね」
「ア、アイラ様……?」
「レミアちゃん、すぐに街の人たちに危険を知らせなさい。ナオちゃんへの報告は私が知らせるわ」
「分かりました!!」


有無を言わせぬアイラの迫力にレミアは逆らえず、忘れていたが彼女はかつてレナが暗殺する計画を立てられていたという話を聞き出し、国王の所に単騎で乗り込んで彼を殴りつけたのだ。しかも一発ではなく、全治一か月の重傷を負わせる程の怪我を与えた。

当時はイレアビトが王国の実権を握っていたとはいえ、仮にも国王の元まで殴り込みにきた人間など後にも先にもアイラしか存在しないだろう。仮に彼女が全盛期の肉体だったら国王は死んでいたかもしれない。最も国王を愛しているアイラだからこそ、彼を本当に殺す事はないだろうが。


「さあ、行きなさい。私の家族に手を出す様な輩は……1人たりとも生かしてはおけないわ」
「ひうっ……し、失礼します!!」


アイラの発言にレミアは本気さを感じ取り、彼女は慌ててナオの元へ向かう――





――同時刻、下水道に逃げ込んだガイアは苦し気な表情を浮かべ、やがて耐え切れずに嘔吐した。表面上は怪我は受けていないが、発勁を受けた際に内蔵を刺激されたせいで胃の中の物を消化しきれずに吐き散らす。


「がはぁっ……ぐそっ、あの人間め……!!」


ガイアにここまで恥を欠かせたのは勇者以来であり、ガイアは悔し気な表情を浮かべながらも壁に背中を預けた。ガイアが王都へ訪れた目的は二つあり、一つ目はこの王都にはガイアが長年苦しめてきた「呪具」を解呪する方法を探すため、もう一つは彼自身が更なる力を得るため、勇者の子孫を探していた。

竜人将ガイアは遥か昔に勇者と戦った時もあり、その時は勇者の不意を突いて血を吸い上げた事もある。その時、ガイアはこれまでにないほどに力が湧きあがる感覚を覚え、あの時の事が忘れられない。しかし、勇者はガイアを恐るべき魔法で地の底まで生き埋めにしてしまった。

地の底に封じられたガイアは死ぬかと思ったが、何とか地力で這い上がる事ができた。勇者の恐ろしさを思い知ったガイアは勇者を直接狙うのを止めて大人しく過ごす。結局は最後に召喚された勇者が死んだ後、新たに誕生した魔王の元でガイアは降る。

歴史上で最後に現れた魔王は七魔将の存在を恐れ、メドゥーサを利用して全員を石像に変えた。だが、メドゥーサが死んだ事によって封印は解除され、この時にガイアも蘇る。ガイアは勇者の子孫が現在のバルトロス王国を築いたと聞き、かつて勇者と戦った時に味わった血の味を思い出し、あの味が忘れられず、勇者の血を受け継ぐ存在を狙うために王都へ訪れた。つまり、ガイアの目的は「ナオ」と彼女の二人の妹の命であった。
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