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真・最終章 七魔将編

精霊を感じる

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(何だ、この感覚?)


レナは周囲に視線を向けるが、そこには自分達以外に人の姿はいない。しかし、確かに魔力感知に反応があり、最初は隠密などの技能で誰かが隠れているのかと思ったが、その手の類の技能は観察眼で見破れるはずだった。

自分の周りには確かに人の姿は見えないのに魔力を感知し、ここでレナはある事を思い出す。それを確かめるため、瞼を閉じてレナは意識を集中させる事にした。


「レナ殿!?心眼でござるか!?」
「心眼?そんな技能まで……」
『愚かな……そんな物で私の攻撃に対応できると思うのか?』
「レナ、さん……?」


瞼を閉じたレナを見て他の者達は驚き、一方でレナの方は心眼を発動させ、資格だけではなく他の感覚も利用して周囲に漂う魔力の存在を確認する。この時にレナはハヤテの様子も伺い、ある事に気付く。


(これはまさか……!?)


レナが感じ取っていた周囲に感じる魔力はハヤテの元に集まり、彼女の青嵐に吸収されるように消えていく事に気付く。この事からレナはすぐに魔力の正体が「精霊」だと見抜く。しかし、今までに精霊を感知した事がないだけにレナは動揺を隠せない。


(分かる……いや、感じる。精霊の存在が……)


風の精霊は失ってしまったが、その代わりにレナは精霊を感知する能力が芽生えていたらしく、ハヤテの元に集まる精霊を見て彼女が攻撃を仕掛けようとしている事を見抜く。この時にレナは岩砕剣を構え彼女に向かう。


『斬――!?』
「そこだぁっ!!」


ハヤテが攻撃を仕掛ける寸前にレナは岩砕剣を振りかざし、彼女が刃を完全に引き抜く前に放つ。咄嗟にハヤテは岩砕剣を受け止めようとしたが、振り下ろされた岩砕剣は青嵐の柄の部分に的中し、ハヤテは鞘から刃を完全に引き抜く事は出来なかった。

その結果、鞘に収まった状態で青嵐は吸収した風の精霊の魔力が暴走してしまい、周囲に風圧が発生してレナとハヤテは吹き飛ばされる。風圧の被害は二人だけではなく、他の者も巻き込んだ――





――数分後、レナ達が戦った現場にシズネとミナが駆けつけるが、そこには既に誰も居なかった。教会の内部は酷い有様で有り、まるでこの場所に竜巻でも発生したかのような惨状だった。


「すんすんっ……ここに人の臭いがします!!ハヤテさんとジャンヌさんの臭いと、後は人間の臭いが3つです!!」
「そう、ありがとう。助かったわ」
「ハヤテさんとジャンヌさんがここに居たという事は……誰かと戦ったのかな」
「ええ、そしてあの二人を相手に出来る人間なんて……一人しか思いつかないわ」


シズネとミナはこの場所にてハヤテとジャンヌが交戦し、その対戦相手は容易に想像が出来た。剣聖二人を相手にして逃げ延びる実力を持つ人間など世界中を探しても一人しか思いつかず、シズネは笑みを浮かべる。

現場にはレナ達の姿はないため、既に逃げ遂せたのだろう。気になる点があるとすればハヤテとジャンヌに関してだが、二人も捕まったのか、あるいは追跡に出向いたのかは気になる。


「他に臭いは残っていないの?」
「すんすんっ……だ、駄目です……ここで何故か臭いが途切れています。まるで転移魔法でも使ったように臭いが感じられません」
「転移魔法?まさか、レナ君は水晶札を使ったのかな?」
「この状況では分からないわ。でも、そういえば前にレナが空間魔法を利用して違う場所に移動する姿を見た事があるわ。きっと、安全な場所から空間魔法を利用して入り込んだのね」
「えっ!?じゃあ、ハヤテさんとジャンヌさんは……」
「そこまでは分からないわ……けど、面白くなってきたわね」


シズネはハヤテとジャンヌが捕まったかもしれないのに余裕の態度は崩さず、仮に二人が捕まったとしてもこの冒険都市にレナ達が攻め込んできたとしても揺らぐ事はない。何しろここには自分とゴウライ、そしてもう一人恐ろしい力を持つ男が存在した――





――同時刻、氷雨のギルドマスターの部屋ではアルドラが座っていた。彼女の前には七魔将のオウガの姿が存在し、二人はワイングラスを口元に含む。


「どうかしら?この建物の主人の秘蔵の酒のそうよ」
「……不味くはないな」
「素直じゃない人ね……私は気に入ったわ、この建物も酒の趣味も全部私好みよ」
「ふんっ……」


アルドラは勝手にマリアが保管していた酒を飲み、彼女の部屋で自由に過ごす。そんなアルドラに対してオウガは黙って自分のワイングラスに酒を注ぎ、彼女と共に過ごす。七魔将同士は滅多にこんな風に接する事はなく、特にアルドラとオウガは水と油のような関係だったが、二人はある目的のために手を組む。

この二人の目的はいずれ訪れるであろうとの戦闘に備え、オウガは自分の力を磨くため、そしてアルドラは戦力を整えるためにこの冒険都市を拠点に次々と新しい戦力を取り入れるつもりだった。そのためには二人は手を組むのが一番であり、互いに利用し合う。
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