上 下
1,352 / 2,083
真・最終章 七魔将編

森の中での戦闘

しおりを挟む
「レナたん、ミノ君もアインちゃん程じゃないけど足は早いよ?」
「ブモォッ……」
「いや、ミノはここを守ってほしい。大丈夫だとは思うけど、もしも魔物が塀を乗り越えてきた時はミノがいるなら大丈夫のはずだ」
「そっか……」


ミノは元々はこの深淵の森で主を務めていた事もあり、彼がここにいれば少なくとも万が一にも魔物が中に入り込んでも対処できる。この森でミノ以上に脅威となる存在はおらず、彼にはここで守ってもらう必要があった。

レナは軽く準備体操を行い、思い切り全力で走る準備を整える。まずは森を抜け出す事に集中し、屋敷に残った者達も遺跡に全員移動させると、黒渦を閉じて移動に専念した。


「よし……行くかっ!!」


瞬動術を発動させ、足の裏から風圧を放ちながら移動を開始した。森の木々を足場に利用してナイは幾度も跳躍を行い、一気に距離を移動する。ちなみにシノビやハンゾウが得意とする飛脚も同じ原理であり、レナも慣れれば空の上を移動する事も出来るかもしれない。


(結構足に負担が掛かるけど、この調子なら思っていたよりも早く辿り着けそうだな……)


木々を跳び越え乍らも森の外に向けてレナは順調に移動し、このまま無事に外に辿り着けると思われた時、何処からか火属性の魔弾が放たれてレナを狙う。


「なっ!?氷塊!!」


地上から突如として放たれた魔弾に対してレナは咄嗟に氷塊の魔法を発動させ、氷の盾を作り出す。しかし、想像以上に魔弾の威力は高く、氷の盾でも弾くのが限界で空中で体勢を崩したレナは落下してしまう。


「くそっ!!」


落下の際中にレナは木々の枝を次々と掴み、どうにか勢いを殺しながら地上へと着地する。降りる際にいくつかの枝を折れてしまい、この際に木々に泊っていた鳥類や小動物も驚いて逃げ出す。

動物が騒いだことで先ほど魔弾を撃ち込んだ相手にも位置を気付かれたのは間違いなく、すぐにレナは場所を移動して隠密と無音歩行の技能を発動し、樹木に身を隠す。気配感知を発動させ、相手の位置を捉えようとすると、森の方から声が響く。


「出てきなさい、王子様!!ここに隠れているんでしょう!?」
「その声は……まさか、カトレアか!?」
「そうよ!!やっとあんたに復讐する機会が訪れたわね!!」


声の主は間違いなく、この国の大将軍でもあった「カノン・カトレア」で間違いなく、現在はシェルという名前で活動している。そのカノンが自分を襲ってきた事にレナは驚くが、彼女は森の中に潜んで姿を見せず、何処からか語り掛ける。


「言っておくけど私を探そうとしても無駄よ!!拡音石を通して話しているから、あんたが想像しているよりもずっと遠くにいるわよ!!」
「わざわざ自分でバラすのか……」
「そもそもあんたと関わったせいでこうなったのよ!!大将軍として気ままに生活してたのにあんたと関わり始めてから運が尽き始めたわ!!」
「良く言うよ……」


カノンの言葉にレナは呆れながらも彼女の位置を探そうとするが、気配感知と魔力感知を発動しても上手くつかめず、相当に離れているのかあるいは隠密や気配者だ何などの技能を利用しているかもしれない。

気配感知は気配遮断の技能で無効化されるので当てにはならないが、魔力感知にも反応がない事にレナは不思議に思う。もしかしたら特別な魔道具で魔力を隠蔽しているのかもしれず、しかも音を拡大化させて放つ拡音石なる魔石で話しているせいで声が反響して聴覚を頼りに正確な位置を見抜く事も出来ない。


「悪いけど、こっちは依頼を受けてあんたを始末しに来たわ!!悪く思わないで頂戴ね!!」
「お前もアルドラに操られているのか!?」
「操られている?笑わせないで、あいつらと一緒にしないでよ!!あの女は自分に従うのであれば心まで操ろうとしないわよ。意外と話が分かるし、それに金払いもいいんだから!!」
「なるほど、金で雇われて俺を狙いに来たわけか……」
「恨むならシズネとゴウライを恨みなさい!!アルドラの奴に自分が一番の脅威になる存在は誰かと聞かれた時、あんたの名前を出したそうよ!!」
「……それは光栄だね」


どうやらアルドラはシズネとゴウライからレナの存在を聞き出し、わざわざ金を払ってカノンを暗殺者として派遣したらしい。意外にもカノンは操られてはおらず、彼女によるとアルドラは自分に自ら従う存在までは配下には加えないらしい。

こんな場所でカノンと再戦する事になるとは思わなかったレナだが、相手は本気でレナを殺すつもりらしく、そういう理由であるならばレナも手加減する理由はなかった。


「カノン、お前本気で俺に盾突く気か?今なら謝れば許してやるぞ!!」
「ふんっ、もう王国の奴らには懲り懲りよ!!ここであんたを殺せば私は一生困らない程の大金が手に入るのよ」
「そうか……なら、俺も遠慮しないぞ!!」
「の、望むところよ!!」


レナはカノンに最後通告を行うが、それを拒否した彼女に対して奥の手を発動させる。この方法だけは使いたくはなかったが、時間はないのはレナも一緒なので手段は選べない。




※次回予告「教えて、アイリス先生!!」
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。