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真・最終章 七魔将編

レナとミレト

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――交信を終えた後、レナは目が冴えてしまったので庭に出る。今現在暮らしているレナの屋敷はこの屋敷を参考にして作られており、だいたいの間取りは同じになっている。しかし、一か所だけ違う場所が存在した。それはアリアの墓である。

アリアの遺体は燃えた教会と共に焼け崩れてしまい、埋葬する事は出来なかった。だからこそ彼女の墓はこの屋敷に作り、レナは墓の前で手を合わせる。アリアの事を思い出したレナは昔はここで訓練を行っていた事を思い出す。


「懐かしいな……ここは」


昔の事を思い返しながらレナは夜空を見上げ、やはりどんな場所よりもここで見上げる夜空は美しく感じた。この時にレナはある事に気付き、振り返って語り掛ける。


「何か用?ミレト……君だっけ」
「……よく気づきましたね」


レナが声を掛けると建物の陰からミレトが姿を現し、言葉の割には別に驚いた様子はなく、彼の手にはロンギヌスが握りしめられていた。その槍を見てレナは生涯の大敵といっても過言ではないミドルが扱っていた槍である事を知り、ミドルの死後に行方不明になっていたと聞いたが、それがここにある事から彼の正体を察した。


「ロンギヌス……という事は君が俺の義弟か」
「どうも……今はミレトと名乗っています。義兄さん」
「無理に呼ばなくてもいいよ……」


ミレトからすればレナは義理の兄ではあるが、実父の仇でもあり、母親であるイレアビトを追い詰めた存在でもある。その一方でレナからすれば幼少期に彼が王国の人間に命を狙われる切っ掛けになった存在と遂に出会う。

お互いに相手に恨みや憎しみを抱いても仕方がない理由が存在するが、こうして改めて向かい合うと何を話せばいいのか分からない。ミレトは自分の面倒を見てくれたミドルを殺し相手だと理解しているが、実際にレナと出会って話してみると彼が自分の思い描いていた人物像とはかけ離れていた。



――ミレトはミドルを殺し、イレアビトを追い詰めたレナの事を二人よりも凄い人物だと思っていた。それこそ最強の冒険者であるゴウライのような威圧感を放つ人物を想像していたが、実際に出会ったレナは自分の想像していた人物とは真逆の雰囲気の人物だった。



誰よりも恐ろしい存在だと思っていた母親を追い込み、誰よりも強いと信じていたミドルを打ち倒した男、そう思っていたのにレナと出会って実際に話してみると、想像していたよりも随分と印象が違う。普通の人間とは異なる雰囲気を放つが、とても怖いとは思えない。

レナの方もミレトと遭遇した時から彼が他人の様には思えず、血縁上はミレトとレナは血は繋がっていない。しかし、最初に会った時からレナはミレトの事が気になっていた。まるで他人とは思えず、誰かに似ているような気がする。


(ああ、そうか……この子はきっと一人で生きてきたんだな)


ミレトを見たときからレナが感じていた違和感は彼の姿と身に付けている武器だった。今現在のミレトはレナが森を出た時と同じぐらいの年齢に見えるが、実年齢は10才にも満たないはずである。いったいどんな出来事が起きたのか、現在のミレトは実年齢以上に大人びた外見をしていた。

しかし、昼間にミレトと出会った時に話した時からレナは何となくだが彼が子供っぽいと感じた。口調や仕草にまだ子供らしさが残されており、きっとレナには理解できないに苦労を経て今の姿になったのだとレナは気付く。


「ミレト……子供がこんな時間まで起きてたら駄目だろ。もう早く寝なよ」
「あっ……」


レナはミレトに声を掛けると、そのまま通り過ぎようとした。そんなレナに対してミレトは何か言いたげな表情を浮かべるが、彼は意を決したようにロンギヌスを握りしめ、身構えた。

背中を向けて歩き去ろうとするレナに対してミレトは緊張した表情を浮かべ、そして覚悟を決めた様にロンギヌスを繰り出す。その攻撃を見抜いたかのようにレナは振り返ると、空間魔法を発動させて退魔刀を引き抜き、振り払う。


「ふんっ!!」
「うわっ!?」


ロンギヌスの一撃をレナは退魔刀で弾き返し、想像以上の攻撃の重さにミレトは体勢を崩し、槍を落としてしまう。あっさりと自分の武器が弾かれた事にミレトは呆然とするが、レナはそんな彼に語り掛ける。


「何のつもりか知らないけど……本気で仕留めるつもりなら寸止めなんて止めなよ」
「えっ……」
「今の、当てるつもりはなかったでしょ?」


振り返りもせず、レナはミレトが攻撃を仕掛けるのを気付いたどころか、彼が槍を当てる直前で止めようとしていた事に気付いていた。ミレトはレナの発言に驚き、同時に大きな力の差を感じた。


(格が違う……!!)


まるでミドルの指導を受けていた時のような感覚に陥り、ミレトは呆然とした表情でレナを見つめる。そんな彼にレナは怒りもせず、空間魔法を発動させて退魔刀を異空間に戻す。
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