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弱肉強食の島編
閑話 冒険都市の異変
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※ごめんなさい!!最終章の前に何話か閑話を挟みます!!
――レナ達が大陸へ帰還する少し前、冒険都市は窮地に陥っていた。都市にはかつてない強敵が訪れ、城壁を突破されて街中にまで侵入を許してしまう。しかも相手が魔物の類ではなく、魔人族とそれに協力する人間達であった。
「バルさん、駄目だ!!もうここにも奴等が来る!!これ以上は持ち堪えられないぞ!?」
「くそっ、どうなってんだい!!あいつら、何をとち狂ったんだい!?」
「ぐぅっ……やはり、ここは俺が!!」
「駄目だ、ギガンでさえもやられたんだよ!?手負いのあんたに仕留められるわけないだろうが!!」
黒虎の冒険者ギルドでは負傷した冒険者達が立て籠もり、負傷者の中にはゴンゾウもいた。彼は胸元に大きな傷があり、今は治療を受けていた。彼の他にも大勢の冒険者や兵士が治療を受けており、まともに戦える人間は数名しか残っていない。
街に攻め込んできた侵入者たちは最初に対応したのはギガンと氷雨の冒険者達であったが、彼等は既に返り討ちにあい、今は生きているのかも分からない状態だった。それほどまでに敵は強く、ここも何時まで無事なのかは分からない。
「バルさん、ここはもう駄目だ!!今のうちに動ける人間だけでも逃げるしかない!!」
「馬鹿言うんじゃないよ!!怪我人を放って逃げろというのかい!?」
「あんたまで奴等に捕まったらこの都市は終わりだぞ!?マリアさんもいない、ギガンさんもやられた!!それであんたまで奴等にやられたら終わりだぞ!?」
「くっ……!!」
「バルさん、行ってくれ……俺達の事は放っておいてくれ。大丈夫、殺されはしないだろ」
「ううっ……早く逃げてくれ、あんたまでいなくなったら……この都市は終わりなんだよ」
怪我人たちはバルに逃げる様に促し、彼女は自分達が辛い状況だというのに自分を逃がそうとする彼等に心を打たれるが、それでも仲間を置いて逃げるなど彼女には出来なかった。
「……こうなったら、あたしが行くよ」
「む、無茶だ……いくらバルさんでも、あいつらには勝てない……行くなら俺も!!」
「あんたは黙ってな!!その怪我だと鬼人化も出来ないだろうが!!」
ゴンゾウはバルの後に続こうとするが、彼女はそんなゴンゾウを突き飛ばし、彼は胸元に巻き付けた包帯に血が滲む。鬼人化の弱点は怪我をした状態で発動すると血液が外部に放出されるため、出血多量で死ぬ可能性もある。
今の状態のゴンゾウは当てには出来ず、他に戦えそうな人間はいないため、バルは一人になろうと戦う覚悟を決めた。そして彼女は大剣を手にすると、外へ飛び出す。
「……くそ、もう来たのかい」
街道に視線を向けると、そこには数名の女性の姿が存在した。彼女達は元々は氷雨に所属する冒険者であり、現在は瞳の色を赤く染めていた。だが、剣鬼であるレナの瞳と比べると色合いは薄く、どちらかというと桜色に近い。
「う、ぐ、あっ……」
「な、何で……ミナ……!?」
「もう、二人とも邪魔しないでよ……大人しくしていればこんな酷い真似しなかったのに」
「あんた……何をしてるんだい!?」
女性冒険者の中にはミナの姿も存在し、彼女は自分と同じ冒険者集団に所属するガロとモリモを両手で持ち上げ、その首元を締め付ける。普段のミナならばあり得ない行動であり、バルは焦って怒鳴りつける。
ミナは軽々と両手でガロとモリモの首元を掴んで二人の身体を持ち上げると、そのまま放り捨てる。二人とも地面に倒れると呻き声を漏らし、ガロはミナに視線を向けて怯えた声を上げた。
「な、何でだよ……ミナ、俺達は……」
「うるさいな……もう眠っててよ」
「うぐっ!?」
「おい、止めなっ!!」
ガロに対してミナは面倒そうに槍の石突を放ち、ガロは腹部を突かれて白目を剥く。完全に気絶したのか動かなくなり、改めてミナは他の女性冒険者を引き連れてバルの元へゆっくりと近づく。
「あ、良かった。バルさんも居たんだね……なら、新しい仲間が増えるね」
「ふふっ……」
「あはっ……」
「あんたら、いったいどうしたんだい!?何でこんな真似を……!!」
バルは自分の元に近付くミナ達に大剣を構えるが、彼女達は怯えもせずに近寄る。その様子を見ただけでバルはミナ達が普通の状態ではない事を見抜くが、どうにも様子がおかしい。
(こいつら、操られているのかい!?誰かに洗脳された?いや、今朝まではこいつらは普通だった。こんな短時間にこれだけの人数を洗脳できるはずがない!!)
技能の中には相手を洗脳して自分の意のままに従わせる能力もあるが、ミナ達は確かに今朝までは普通の状態だった。なのに昼前に侵入者が城壁を突破して現れた時から様子がおかしくなった。
最初に敵が侵入したのは氷雨の冒険者が守護していた城壁を突破したという報告をバルは受けており、最初にその報告を聞かされた時はテンは何かの間違いかと思った。氷雨はこの都市でも優秀な冒険者が揃っているギルドであり、その彼等が守護する城壁が突破されたなど信じられなかった。
――レナ達が大陸へ帰還する少し前、冒険都市は窮地に陥っていた。都市にはかつてない強敵が訪れ、城壁を突破されて街中にまで侵入を許してしまう。しかも相手が魔物の類ではなく、魔人族とそれに協力する人間達であった。
「バルさん、駄目だ!!もうここにも奴等が来る!!これ以上は持ち堪えられないぞ!?」
「くそっ、どうなってんだい!!あいつら、何をとち狂ったんだい!?」
「ぐぅっ……やはり、ここは俺が!!」
「駄目だ、ギガンでさえもやられたんだよ!?手負いのあんたに仕留められるわけないだろうが!!」
黒虎の冒険者ギルドでは負傷した冒険者達が立て籠もり、負傷者の中にはゴンゾウもいた。彼は胸元に大きな傷があり、今は治療を受けていた。彼の他にも大勢の冒険者や兵士が治療を受けており、まともに戦える人間は数名しか残っていない。
街に攻め込んできた侵入者たちは最初に対応したのはギガンと氷雨の冒険者達であったが、彼等は既に返り討ちにあい、今は生きているのかも分からない状態だった。それほどまでに敵は強く、ここも何時まで無事なのかは分からない。
「バルさん、ここはもう駄目だ!!今のうちに動ける人間だけでも逃げるしかない!!」
「馬鹿言うんじゃないよ!!怪我人を放って逃げろというのかい!?」
「あんたまで奴等に捕まったらこの都市は終わりだぞ!?マリアさんもいない、ギガンさんもやられた!!それであんたまで奴等にやられたら終わりだぞ!?」
「くっ……!!」
「バルさん、行ってくれ……俺達の事は放っておいてくれ。大丈夫、殺されはしないだろ」
「ううっ……早く逃げてくれ、あんたまでいなくなったら……この都市は終わりなんだよ」
怪我人たちはバルに逃げる様に促し、彼女は自分達が辛い状況だというのに自分を逃がそうとする彼等に心を打たれるが、それでも仲間を置いて逃げるなど彼女には出来なかった。
「……こうなったら、あたしが行くよ」
「む、無茶だ……いくらバルさんでも、あいつらには勝てない……行くなら俺も!!」
「あんたは黙ってな!!その怪我だと鬼人化も出来ないだろうが!!」
ゴンゾウはバルの後に続こうとするが、彼女はそんなゴンゾウを突き飛ばし、彼は胸元に巻き付けた包帯に血が滲む。鬼人化の弱点は怪我をした状態で発動すると血液が外部に放出されるため、出血多量で死ぬ可能性もある。
今の状態のゴンゾウは当てには出来ず、他に戦えそうな人間はいないため、バルは一人になろうと戦う覚悟を決めた。そして彼女は大剣を手にすると、外へ飛び出す。
「……くそ、もう来たのかい」
街道に視線を向けると、そこには数名の女性の姿が存在した。彼女達は元々は氷雨に所属する冒険者であり、現在は瞳の色を赤く染めていた。だが、剣鬼であるレナの瞳と比べると色合いは薄く、どちらかというと桜色に近い。
「う、ぐ、あっ……」
「な、何で……ミナ……!?」
「もう、二人とも邪魔しないでよ……大人しくしていればこんな酷い真似しなかったのに」
「あんた……何をしてるんだい!?」
女性冒険者の中にはミナの姿も存在し、彼女は自分と同じ冒険者集団に所属するガロとモリモを両手で持ち上げ、その首元を締め付ける。普段のミナならばあり得ない行動であり、バルは焦って怒鳴りつける。
ミナは軽々と両手でガロとモリモの首元を掴んで二人の身体を持ち上げると、そのまま放り捨てる。二人とも地面に倒れると呻き声を漏らし、ガロはミナに視線を向けて怯えた声を上げた。
「な、何でだよ……ミナ、俺達は……」
「うるさいな……もう眠っててよ」
「うぐっ!?」
「おい、止めなっ!!」
ガロに対してミナは面倒そうに槍の石突を放ち、ガロは腹部を突かれて白目を剥く。完全に気絶したのか動かなくなり、改めてミナは他の女性冒険者を引き連れてバルの元へゆっくりと近づく。
「あ、良かった。バルさんも居たんだね……なら、新しい仲間が増えるね」
「ふふっ……」
「あはっ……」
「あんたら、いったいどうしたんだい!?何でこんな真似を……!!」
バルは自分の元に近付くミナ達に大剣を構えるが、彼女達は怯えもせずに近寄る。その様子を見ただけでバルはミナ達が普通の状態ではない事を見抜くが、どうにも様子がおかしい。
(こいつら、操られているのかい!?誰かに洗脳された?いや、今朝まではこいつらは普通だった。こんな短時間にこれだけの人数を洗脳できるはずがない!!)
技能の中には相手を洗脳して自分の意のままに従わせる能力もあるが、ミナ達は確かに今朝までは普通の状態だった。なのに昼前に侵入者が城壁を突破して現れた時から様子がおかしくなった。
最初に敵が侵入したのは氷雨の冒険者が守護していた城壁を突破したという報告をバルは受けており、最初にその報告を聞かされた時はテンは何かの間違いかと思った。氷雨はこの都市でも優秀な冒険者が揃っているギルドであり、その彼等が守護する城壁が突破されたなど信じられなかった。
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