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弱肉強食の島編

竜人族の始祖

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『じゃあ、こいつらはガイアの子孫なのか!?』
『いえ、ガイアには子供はいません。でも、魔王が存在した時代はガイア以外にも彼と同じように呪具で能力を封じられた存在は何人も居ました。そして魔王がいなくなった後、彼等はここへ逃げ延びて暮らしていたんです』
『そうだったのか……』
『ちなみにガイア以外の竜種はもう既に死んでいます。ガイアが生きながらえる事が出来たのはとある理由で勇者の血を得た事で呪具の封印が解けかかり、本来の力を取り戻しつつあるからです』
『勇者の……血?』


アイリスによると呪具によって魔人族のように人間に近い生物に変化させられた存在はガイアしか残っておらず、彼はある時に異世界から召喚された勇者の血を得る事で力を増し、今の時代まで生き延びたという。


『魔王の呪具を解放する方法は魔王自身に解除させるか、あるいは力ずくで破壊するしかありません。しかし、前者の場合は既に魔王は死んでいるのでどうしようもできませんし、後者の場合は竜種としての本来の力が封じられている状態では呪具は簡単に破壊できません』
『それが勇者の血と何が関係あるの?』
『ガイアの正体は蛇竜と呼ばれる存在で、別名はバジリスクです。聞いた事はあるでしょう?』
『バジリスク……』


地球でも有名な蛇の怪物であり、その瞳と目を合わせるだけで死んでしまうと恐れられている「蛇の王」である。こちらの世界では竜種として扱われているらしく、更にこちらの世界のバジリスクは独特の能力を持ち合わせている事をアイリスは説明する。


『この世界のバジリスクは魔眼の他にも血を吸収する事で栄養分を吸収し、強くなるという能力を持っています。そしてガイアはかつて歴代の勇者の中でも最も力を持っていた魔術師から血を奪い、吸収した事で大きな力を得ました』
『最も力を持った勇者?』
『まあ、その辺の話は今度夢の世界で語りましょう。重要なのはガイアは勇者の血を吸った事で力を得て、現在まで生き延びた事です。ガイアの目的は強い生物の血を喰らい、成長する事でいずれ必ず自分の呪具の拘束を破壊して本来の姿と力を取り戻すつもりなんですよ』
『そいつは……やばいな』


仮にガイアが呪具を破壊すれば真の姿を取り戻し、蛇竜へと変身すれば世界の脅威と化す。その場合はガイアが完全に復活する前に倒す必要があるのだが、ガイアを倒す前にレナは魔封じの腕輪を解除して大陸に戻らなければならない。

とりあえずはアイリスから竜人族とガイアの関係を聞いたレナは彼等の先祖の秘密を知り、まさか魔王によって魔人族の姿へと変貌した竜種とは思いもしなかったが、そんな事は今の彼等には関係ない。例え、先祖がかつて魔王軍に従っていたとしても、その魔王軍は滅びた今では何の関係もない。


(多分、俺の先祖もこの人達の先祖と戦ってたんだろうな……)


レナはバルトロス王族であり、同時に勇者の家系でもあるため、竜人族の先祖とは争っていたのは間違いない。だが、先祖同士が敵だとしても何百年も経過した今となっては彼等と敵対する理由にはならない。


(お互いに争っていた相手の子孫が手を組むなんて知ったら、先祖も驚くだろうな……)


もしも今の状況を自分達の先祖が知ったらとどんな反応するのかレナは気になったが、そんな事よりも今は黒龍に対抗するためにも竜人族との中を深めて彼等と信頼関係を築く事に専念する――





――宴を切り上げると、改めてレナは竜人族の戦士達を紹介される。戦士と言っても竜人族は大人全員が戦士として扱われるらしく、男女でも関係ない。そもそも竜人族の場合はあまり男女の概念は存在しないらしく、女だろうと戦えるならば戦士として扱われる。


「ここにいるのが竜人族の精鋭だ。他の部族と違い、戦士長はおらんが竜騎将の儂が指示を出す」
「へえ、こんなにいたのか……」
「どいつもこいつも同じ顔で見分けがつかないぞ」
「でも、微妙に鱗の色や形が違ったりしてる」
「そうか?あたしには分からないけど……」


竜人族の外見は見分けが難しく、男女でもあまり容姿に変わりはない。但し、よく観察しなければ分からないが微妙に鱗の形や色が違うため、それで見分ける事が出来た。

レナも観察眼の技能を発動させれば一応は全員を見分ける事は出来るが、顔と名前を覚えるのには苦労しそうだった。特にアンジュやハルナは見分ける事すら出来ず、誰が誰だか分からない様子だが、サーシャだけは一番早く全員の顔を覚えた。


「貴方がリッシュ、貴女がリナ」
「えっ!?嘘、兄さんこの子凄いわ!!」
「よく見抜いたな!!仲間でも俺達を見分ける事がは出来ないのに!?」
「お前等、兄妹だったのか……」
「凄いな、サーシャ!?」
「えっへん、旦那様も褒めて」
「はいはい」


サーシャが兄妹の竜人族を見分けると心底驚かれ、竜人族でも同族を見分ける事が難しいらしく、サーシャの観察能力と記憶力に他の者達は感心した。サーシャは自慢げに鼻を鳴らし、レナに褒めてもらいたいのか頭を撫でるように催促する。そんな彼女にレナは子供をあやすように頭を撫でると、嬉しそうに頬ずりしてくる。
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