不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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弱肉強食の島編

黒龍の居場所

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「けど、竜人族の里に戻るのに黒龍に襲われる可能性があるというのはどういう事ですか?」
「我々がここへ向かう途中、奴を発見した。幸いにも我々は空を飛んでいたので襲われる事はなかったが、奴は森を離れている様子は確認した」
「森を離れた?まさか、もう森の中の動物と魔物を食い尽くしたというのか?」
「いや、それはいくらなんでもあり得ん。だが、奴が餌な豊富のはずの森を離れたのには理由があるはず」
「理由……そういえばあいつ、ハルナから受けた傷はどうなったんだろう」


黒龍はハルナとの戦闘で損傷を負い、逃げ出した事を思い出す。雷属性の魔力でハルナは本物の雷と同程度の電流を生み出す事が出来るため、いくら竜種だとしても無事では済まない。


「そういえば黒龍が休眠していた場所も荒野と言っていたな。ならば奴の住処は荒野にあるのではないか?」
「傷を癒すために住処に戻ったという事か……その可能性は否定出来んな」
「じゃあ、今ならあいつをぶっ倒す好機か!!」


荒野に黒龍が向かっている可能性が出てきた事を聞いてハルナは両拳を叩きつけ、前回の時は湖に沈められて苦戦を強いられたが、今度は確実に仕留めるためにハルナは追撃を提案する。


「要するにあいつをぶっ倒せばこの島は平和になるんだろ?なら、あいつはあたしがぶっ倒してやる!!」
「さっきから気になっていたが、この者は何者だ?その角を見る限りはただの人間ではないようだが……」
「あ、ああ……彼女はハルナ、レナの……番、か?」
「番!?どういう意味ですかレナ王子!?ティナ様とコトミン様と結婚しているのにまた嫁を作ったんですか!?」
「違うわっ!!」
「そうだ!!旦那様の嫁は私達だぞ!!」
「うんうん」
「話がややこしくなるから黙ってろ!!」


ハルナがレナの番と聞いてレミアは取り乱し、その流れに乗ってアンジュとサーシャも口を挟むが、話が進まなくなるのでレナは一括して黙らせる。その一方でハルナの方は全身から電流を迸らせ、黒龍の事を思い返す。


「あいつ、水中であたしを捕まえた時に笑ってやがった……あんな不気味な奴、初めて見たよ」
「笑っていた、か……聞けば聞く程やばそうや奴だな」
「そもそも、その黒龍という竜種は何なのでしょうか……私も魔物の知識にそれほど詳しいわけではありませんが、話に聞く限りでは火竜や牙竜とは似通った点はありますが別の生物なんですよね?」
「それは間違いない。多分、竜種の亜種か何かだと思うけど……」


黒龍がどうやって誕生し、どのような方法で島に訪れたのかは判明していない。アイリスに尋ねれば詳しい経緯は分かるかもしれないが、重要なのは黒龍の正体ではなく、どのように倒すべきかである。

ハルナと戦った時は彼女の雷の聖痕の力を目の当たりにして正攻法では分が悪いと判断したのか、自分も大きな損傷を受ける事を承知でハルナを捕まえ、水に沈み込んだ。仮にレナが退魔刀を水の中に落としていなければハルナは今頃は死んでいただろう。

竜種の中には知能が高い個体もいるが、黒龍の場合は知恵だけではなく、弱者を痛めつけて楽しむ性格が垣間見えた。それだけにこれまで戦ってきた竜種とは異なり、レナは不安を抱く。


(あの化物と戦うには魔法の力が必要だ……この腕輪を外さないと)


腕輪を外さなければレナは満足に戦えず、黒龍との戦闘では足手まといになる可能性もある。ハルナの方も黒龍には酷い目に遭わされている事もあり、このまま逃すつもりはない。。


「黒龍だか何だか知らないけど、人をあんな目に遭わせておいて逃げるなんて絶対に許さねえ……あたしがぶっ飛ばしてやる!!」
「た、頼もしい娘だな……しかし、荒野に戻るとなると人数は限られるぞ。我々の飛竜はせいぜい二人ぐらいしか乗せる事は出来ん」
「そういう事なら俺とハルナと……後は、アンジュとサーシャかな」
「おお、流石は旦那様!!」
「私達が離れると寂しい?」


この場に訪れた飛竜は5体であり、既にレミアも同行しているため、乗れるのは4名だけだった。そのため、レナは戦力になりそうなハルナとアンジュとサーシャを同行者として選ぶ。

族長や長は戦力としては心許なく、それにこの場所の守護もあるので同卒者である二人が軽々に離れるわけにはいかない。レナは竜騎将に頼み込み、竜人族の里へ向かう事の許可を求める。


「お願いします、竜騎将……里まで案内して下さい」
「そこまでいのうならば……だが、黒龍に襲われる可能性もある。それだけは忘れるな」
「はい、分かりました」
「アンジュ、サーシャ、前みたいに怯えるなよ?」
「あ、あの時はびっくりしただけだ!!」
「今度はハルナだけに任せない……地上だったら私達も戦える」
「レナ王子、ご安心ください。どのような脅威であろうと私が守って見せます」


ハルナのからかい混じりの言葉にアンジュとサーシャ激怒し、前回の時は確かに二人は黒龍の存在感に圧倒されてまともに動けなかったが、前の時は湖の筏船にに乗っていたのでまともに戦えなかったという理由もある。そしてレミアの方も王国の大将軍として王族であるレナを守る事を誓う。
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