不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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弱肉強食の島編

白牛将との戦闘 ※報告があります

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「――貴様等ぁあああっ!!よくも俺達を嵌めたなぁっ!!」
「来たか……お前が白牛将だな?」
「ああんっ!?」


白牛将は岸辺にて待ち構えるダークエルフの戦士達と、スカーを始めとした長の配下のミノタウロス達、そして一番先頭に立つレナを見て全てを悟ったようにこめかみに青筋を浮かべる。


「そうか、お前が人間かぁっ!!今度はダークエルフだけじゃなく、同族までたぶらかしたか!!」
「声がうるさい奴だな……」
「白牛将!!ここで決着をつけてやる!!」
「今までの恨み、晴らして貰うぞ!!」
「行くぞ!!奴を倒し、牛人族の平和を取り戻せ!!」


全員が武器を構えると、白牛将と彼の配下も武器を構えた。だが、牛人族だけはお互いに争い合う事に戸惑いの表情を浮かべる者も多く、特に白牛将の部下は混乱している様子だった。


「あ、兄貴……どうして俺達、戦わないとならないんですか?」
「これじゃあ、まるで俺達が悪者の様な……」
「惑わされるな!!奴等は人間に騙されているだけだ!!正義は俺達だ!!」
「正義、ね……本を正せばお前がバルカンから情報だけを奪ってダークエルフに攻撃を仕掛けたのが切っ掛けじゃないのか?」


今回の抗争の原因はバルカンであり、彼が裏切って牛人族に取り入ろうとした事が原因である。しかし、バルカンとの約束を破って白牛将は一方的に彼を殺し、他の仲間を拘束して黒牛将を利用して攻撃を仕掛けた。

不可侵条約を結んでいたのに長の許可も取らずに部隊を動かし、攻撃を仕掛けてきたのは白牛将である。しかも白牛将はの目的はダークエルフを殲滅し、この島を牛人族が統一する事ならば彼の存在こそ放置は出来ない。


「許さんぞ人間……貴様だけは殺してやる!!」
「やれるものならやってみろ……勝負だ!!」
「いいだろう、お前達は手を出すな!!」


レナは退魔刀を構えると、白牛将は前に出る。この時に彼は部下から戦斧を受け取り、改めてレナと向かい合う。黒牛将を上回る迫力を放ち、魔法が使えない状態のレナは勝てるかどうか分からない相手だった。


(こいつは強いな……けど、やるしかない)


退魔刀を構えたレナは白牛将と向かい合い、二人は武器を構えたまま動かない。しかし、先に仕掛けたのは白牛将であり、彼は戦斧を振りかざすと、距離があるにも関わらずに地面に振り下ろす。


「ふんっ!!」
「……煙幕!?」


戦斧が地面に叩きつけられた瞬間、土煙が舞い上がって白牛将の姿が消えてしまう。レナは何処に隠れたのかと土煙の様子を伺うが、この時に既に白牛将は動いていた。


「ブモォオオオッ!?」
「うわっ!?」


土煙から出てきたのは白牛将ではなく、他のミノタウロスであり、力ずくで投げ飛ばされたのかレナの元に突っ込んできた。恐らくは白牛将に投げ飛ばされたと思われるミノタウロスをレナは躱すと、その間に白牛将がレナの元へ回り込む。

自分の配下を囮に利用した白牛将はレナの元に目掛けて戦斧を振り翳し、横薙ぎに振り払う。咄嗟にナイは退魔刀で攻撃を受け止めるが、想像以上の腕力で吹き飛び、アンジュとサーシャの元まで吹き飛ぶ。


「うわっ!?」
「きゃっ!?」
「あうっ!?」
「な、何という膂力……!!」


レナはアンジュとサーシャにぶつかって共に地面に倒れ込み、この際にアンジュとサーシャの柔らかい部分に触れてしまうが、それを見ていた族長は戦慄する。白牛将は戦斧を振り回し、笑みを浮かべた。


「ふん、人間といっても所詮はこの程度か?」
「くそっ……」


自分を見下す白牛将に対してレナは怒りを抱き、魔法さえ使えればこんな奴など敵ではないのだが、今は文句は言っていられない。攻撃を受けた両手は痺れ、頼りの退魔刀を持つのも難しい。

悔しいが単純な力の差は白牛将の方が分があり、このまま戦ってもレナの勝ち目は薄い。何か手を打つ必要があるのだが、ここでレナは事前に教えてもらった白牛将の特徴を思い出す。


(そういえばこいつって……よし、試してみるか)


レナは周囲を見渡し、何か使える者を探す。この時にレナは森の方に生えている果物を発見し、ここへ来たばかりの時に見かけた「ミン」という名前の果物だと思い出す。


(そういえばあの果物って……やってみるか)


果物を見つけたレナはどうしても手に入れるために白牛将と向かい合い、彼の元へ突っ込む。他の者からすればレナが自棄になって彼に挑もうとしている様にしか見えない。


「やあああっ!!」
「ふんっ、諦めたか!!」


突っ込んできたレナに対して白牛将は戦斧を構えるが、この時にレナは白牛将に対してではなく地面に向けて退魔刀を振り下ろす。その結果、退魔刀は地面に深く突き刺さり、それを見た者達は呆気に取られた。


「いったい何を……」
「うおおおっ!!」


退魔刀から一度距離を取ったレナは少し離れると、助走を加えて加速した状態で跳躍を行い、退魔刀を足場に利用して更に上空へと浮上する。その様子を見ていた白牛将は唖然とするが、レナはミンと呼ばれる果物が実っている木の枝に飛び移る。






※今月のコミカライズ版の更新は南條先生が体調不良という事で休載となります。南條先生のご快復をお祈りします。
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