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弱肉強食の島編
裏切り者の制裁 《バルカンの最期》
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「――何だと?ギュウカクが捕まっただと!?」
「は、はい……奴等からの手紙によると、黒牛将はダークエルフに捕まって連れて行かれたそうです」
「おのれ、あの馬鹿が!!」
時刻は夕方を迎え、白牛将の元に手紙を携えた部下が訪れる。手紙と言っても紙や羊皮紙の類ではなく、大きな植物の葉に特殊な花の蜜を塗りたくり、そこに昆虫が張り付いて文字のように変化する代物だった。
この植物の葉と昆虫を利用した連絡のやり取りは牛人族だけが行い、もしも敵に見つかっても昆虫が張り付いていなければ文字は解読できず、花の蜜が塗りつけただけの葉にしか見えない。ちなみに文字を書き込むのに使用される蜜を作り出す花は牛人族の住処にしている湖の島にか生えないため、他の部族は真似できない。
――昨夜、牛人族の住処にダークエルフの男達が現れ、彼等は鉱床を申し込んできた。それに対処したのは牛人族の長ではなく、白牛将が代わりに対応する。
『何?お前等の隠れ家を教えるだと?』
『あ、ああ……いや、はい。実は、よそ者が俺達の部族を取り仕切ろうとしてまして……』
『余所者?何の話をしている?』
『実は島の外から……人間が訪れたんです。あ、一人は男でもう一人は若い女です。女の方は角が生えてましたが……』
『人間、だと……?』
白牛将は人間を見た事はないが、その存在は知っていた。かつて自分達の先祖が大陸に暮らしていた時に敵対し、何の罪もない先祖たちを大陸の外に追い払った恐るべき存在だと長から聞いていた。
その人間が島の中に入り込んだという話を聞いて白牛将は胡散臭く、最初は罠かと思った。だが、彼は牛人族の中でも嗅覚に優れ、彼は嘘を吐く人間の臭いをかぎ取る事が出来る。
『嘘は吐いていないようだな……しかし、人間がこの島に訪れるとは』
『そ、そいつは俺達の部族を支配しようとしているんです!!女どもはそいつに従うし……けど、俺達は違う!!俺達は人間なんかに屈しない!!』
『ならお前達で倒せばいい話だろう。何故、俺達にその話を伝える?』
『そ、それは……その、やたらとその人間は強くて俺達にはどうしようも出来ないというか……』
『……情けない話だな』
昨夜にレナに敗れたダークエルフのバルカンと彼の取り巻きは最初は自分達の部族がレナに支配されようとしていると伝えるが、それを白牛将は嘘だと見抜く。大方、自分達を利用してその人間を殺そうと考えていると白牛将は見抜く。
(馬鹿なガキだ、そんな罠に引っかかると思っているのか?だが、人間が現れたというのは本当らしいな……)
バルカンの与太話はともかく、人間がこの島に乗り込んだ事に対して白牛将は警戒心を抱き、無視はできないと思った。そこで彼はバルカンを利用し、彼等から情報を引き出す。そして用を終えると彼等を拘束して里の中にある食用の魔物を閉じ込める檻の中に放り込む。
『お、おい!!ちょっと待てよ、話が違うじゃないか!?全部話せば俺をダークエルフの長にするって……!?』
『ふん……仲間を売るような愚か者を俺達が信用すると思っていたのか?』
『だ、騙しやがったな!!くそ、出せ!!』
『おい、あいつを入れろ』
『へ、へい……分かりました』
檻に閉じ込めたバルカンに対して白牛将は部下に命じると、彼の閉じ込めた檻の中にこの島でも凶悪な魔獣を送り込む。それに対してバルカンは顔色を青ざめ、必死に仲間に助けを乞う。
『や、止めろ……止めてくれ!!助けてくれぇっ!?』
『あ、兄貴……』
『すいません……』
『嫌だ、死にたくない!!助け……ぎゃああああっ!?』
魔獣によってバルカンが食われる姿を見て他のダークエルフは目を逸らし、その様子を白牛将は満足気に見つめた。そして改めて残りのダークエルフに問う。
『お前達は命だけは助けてやる。使い道があるかもしれないからな……』
『ひいっ!?』
『おい、ギュウカクを呼んで来い!!』
白牛将はギュウカクを呼び出し、彼に事の顛末を伝える。ギュウカクは話を聞くとすぐに自分の部下を引き連れ、ダークエルフの隠れ里へ向かった――
――しかし、隠れ里に向かったはずの黒牛将と彼の配下は戻らず、念のために送り込んできた部下も戻ってこない事に白牛将は苛立ちを抱く。そんな時に彼の元に密偵が記した手紙を部下が運んできた。
「……この手紙によるとギュウカクは捕まり、ダークエルフ達は滝の裏にある洞窟の奥に存在する隠れ家に隠れたと書いてあるが、そもそもこの手紙は誰から受け取った?」
「それが……岸辺の見張りの奴が見つけたそうなんですが、いつの間にか足元に落ちていたそうです」
「落ちていただと?」
「はい、闇の中から急に現れたというか……」
「臭いは残っていなかったのか?」
「はい、俺達と同じ匂いです。それは間違いありません」
「……そうか」
牛人族は嗅覚に優れており、もしもこの手紙を置いたものがダークエルフや人間の場合は臭いで気づかないはずがない。だが、見張りによると手紙を渡した者は見なかったが、臭いだけは残っていた。それは間違いなく、牛人族の者だったという。
「は、はい……奴等からの手紙によると、黒牛将はダークエルフに捕まって連れて行かれたそうです」
「おのれ、あの馬鹿が!!」
時刻は夕方を迎え、白牛将の元に手紙を携えた部下が訪れる。手紙と言っても紙や羊皮紙の類ではなく、大きな植物の葉に特殊な花の蜜を塗りたくり、そこに昆虫が張り付いて文字のように変化する代物だった。
この植物の葉と昆虫を利用した連絡のやり取りは牛人族だけが行い、もしも敵に見つかっても昆虫が張り付いていなければ文字は解読できず、花の蜜が塗りつけただけの葉にしか見えない。ちなみに文字を書き込むのに使用される蜜を作り出す花は牛人族の住処にしている湖の島にか生えないため、他の部族は真似できない。
――昨夜、牛人族の住処にダークエルフの男達が現れ、彼等は鉱床を申し込んできた。それに対処したのは牛人族の長ではなく、白牛将が代わりに対応する。
『何?お前等の隠れ家を教えるだと?』
『あ、ああ……いや、はい。実は、よそ者が俺達の部族を取り仕切ろうとしてまして……』
『余所者?何の話をしている?』
『実は島の外から……人間が訪れたんです。あ、一人は男でもう一人は若い女です。女の方は角が生えてましたが……』
『人間、だと……?』
白牛将は人間を見た事はないが、その存在は知っていた。かつて自分達の先祖が大陸に暮らしていた時に敵対し、何の罪もない先祖たちを大陸の外に追い払った恐るべき存在だと長から聞いていた。
その人間が島の中に入り込んだという話を聞いて白牛将は胡散臭く、最初は罠かと思った。だが、彼は牛人族の中でも嗅覚に優れ、彼は嘘を吐く人間の臭いをかぎ取る事が出来る。
『嘘は吐いていないようだな……しかし、人間がこの島に訪れるとは』
『そ、そいつは俺達の部族を支配しようとしているんです!!女どもはそいつに従うし……けど、俺達は違う!!俺達は人間なんかに屈しない!!』
『ならお前達で倒せばいい話だろう。何故、俺達にその話を伝える?』
『そ、それは……その、やたらとその人間は強くて俺達にはどうしようも出来ないというか……』
『……情けない話だな』
昨夜にレナに敗れたダークエルフのバルカンと彼の取り巻きは最初は自分達の部族がレナに支配されようとしていると伝えるが、それを白牛将は嘘だと見抜く。大方、自分達を利用してその人間を殺そうと考えていると白牛将は見抜く。
(馬鹿なガキだ、そんな罠に引っかかると思っているのか?だが、人間が現れたというのは本当らしいな……)
バルカンの与太話はともかく、人間がこの島に乗り込んだ事に対して白牛将は警戒心を抱き、無視はできないと思った。そこで彼はバルカンを利用し、彼等から情報を引き出す。そして用を終えると彼等を拘束して里の中にある食用の魔物を閉じ込める檻の中に放り込む。
『お、おい!!ちょっと待てよ、話が違うじゃないか!?全部話せば俺をダークエルフの長にするって……!?』
『ふん……仲間を売るような愚か者を俺達が信用すると思っていたのか?』
『だ、騙しやがったな!!くそ、出せ!!』
『おい、あいつを入れろ』
『へ、へい……分かりました』
檻に閉じ込めたバルカンに対して白牛将は部下に命じると、彼の閉じ込めた檻の中にこの島でも凶悪な魔獣を送り込む。それに対してバルカンは顔色を青ざめ、必死に仲間に助けを乞う。
『や、止めろ……止めてくれ!!助けてくれぇっ!?』
『あ、兄貴……』
『すいません……』
『嫌だ、死にたくない!!助け……ぎゃああああっ!?』
魔獣によってバルカンが食われる姿を見て他のダークエルフは目を逸らし、その様子を白牛将は満足気に見つめた。そして改めて残りのダークエルフに問う。
『お前達は命だけは助けてやる。使い道があるかもしれないからな……』
『ひいっ!?』
『おい、ギュウカクを呼んで来い!!』
白牛将はギュウカクを呼び出し、彼に事の顛末を伝える。ギュウカクは話を聞くとすぐに自分の部下を引き連れ、ダークエルフの隠れ里へ向かった――
――しかし、隠れ里に向かったはずの黒牛将と彼の配下は戻らず、念のために送り込んできた部下も戻ってこない事に白牛将は苛立ちを抱く。そんな時に彼の元に密偵が記した手紙を部下が運んできた。
「……この手紙によるとギュウカクは捕まり、ダークエルフ達は滝の裏にある洞窟の奥に存在する隠れ家に隠れたと書いてあるが、そもそもこの手紙は誰から受け取った?」
「それが……岸辺の見張りの奴が見つけたそうなんですが、いつの間にか足元に落ちていたそうです」
「落ちていただと?」
「はい、闇の中から急に現れたというか……」
「臭いは残っていなかったのか?」
「はい、俺達と同じ匂いです。それは間違いありません」
「……そうか」
牛人族は嗅覚に優れており、もしもこの手紙を置いたものがダークエルフや人間の場合は臭いで気づかないはずがない。だが、見張りによると手紙を渡した者は見なかったが、臭いだけは残っていた。それは間違いなく、牛人族の者だったという。
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