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ダイン 監獄都市編

何だこいつ、バルのキャラ被りか!?

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パールと女囚が暮らす屋敷には看守の兵士でさえも立ち寄る事は許されないが、実は女性兵だけは自由に出入りが許されている。彼女達は主にパールの護衛を任されているが、その中でただ一人だけ屋敷の警備を任されている女性兵が存在した。

名前は「ヤン」と呼ばれ、年齢は20代後半で昔は冒険者として活躍していた時期もあり、現在は看守として働いている。彼女は元々は有名な冒険者だったのだが、ある時に国の貴族に呼び出され、その貴族が高慢な態度で冒険者を辞めて自分の護衛として働く事を強要したため、それに切れたヤーバンは貴族を殴り倒してしまう。

当然だが貴族に手を出した事はまずく、彼女は冒険者の資格を剥奪され、犯罪者として監獄都市に収監されてしまった。だが、そこで彼女はパールと出会い、女性でありながらその優れた腕っぷしを気に入られてあろうことか囚人でありながら看守の兵士として取り立てられた。

ヤンは自分を囚人から兵士に取り立ててくれたパールに深く感謝し、彼女が不在の間は屋敷の守護を行う事を決め、これまでに屋敷に侵入しようとした不埒な輩は一人残らず彼女が捕まえてきた。そして今回も屋敷の侵入者であるダインを探し出すため、彼女は持ち前の腕力を生かした方法で天井に身を隠していた。


「見つけたぞ、この変態が!!」
「ひいいっ!?」
「チュチュッ……(←怯えてポケットに退避)」


バルにも劣らぬ体格の女性が登場し、その姿を見ただけでダインは怖気づく。ヤンは両腕に鉤爪を装着し、恐らくは色合いからしてミスリル製の武器である事は間違いない。普通の兵士よりもヤンは上等な装備をしており、彼女が看守の中でも特別な存在なのか伺える。


「さあ、もう逃がさないよ!!大人しくお縄に付きな、さもないとここで殺す……と、パールさんに怒られるから、裸にひん剥いて磔の刑だよ!!」
「や、止めてくれぇっ!!」
「逃がすか!!」


裸にされて磔にされたくはないダインは逃げ出そうとするが、それに対してヤンは彼の元に迫り、鉤爪を装着した両腕を突き出す。それに対してダインは咄嗟に両腕を前に出すと、それを見たヤンが笑う。


「馬鹿か、あんた!?そんな細腕で私の鉤爪を止められると思って……なっ!?」
「うぐぅっ!?」


ヤンは容赦なく鉤爪を振りかざし、ダインの両腕を貫こうとした。だが、ダインの腕に触れた途端にまるで衝撃が吸収されるかのように攻撃が止まってしまい、彼女は戸惑う。確実にダインの腕を貫くつもりで放ったのだが、何故か刃が刺さらない。

この時にダインは両腕に「黒腕」を発動させた事により、外部からの衝撃を完全に防いでいた。いかに優れた刃物であろうと魔法を無効化や跳ね返す性質を持ち合わせていない武器では彼には通じない。影魔法は物理攻撃に対して無敵を誇るため、仮にギガンやゴンゾウなどのような巨人族が攻撃を仕掛けようがダインの黒腕は敗れない。


(そんな馬鹿なっ……こんな奴に私の鉤爪が!?)


攻撃を防がれたという事実にヤンは信じられず、彼女は反射的に後ろに下がる。一方でダインの方は彼女に見られた以上は逃げられず、覚悟を決めて戦うしかないと構えを取った。


(くそ、この女……本気で僕の腕を貫こうとしてきた!?いくら僕が侵入者だからってそこまでするか!?)


躊躇なく自分の両腕を貫こうとしてきたヤンにダインは内心は恐れを抱きながらも身構え、こうなったら彼女と戦う覚悟を決めた。そんなダインの様子を見てヤンは相手もやる気だと判断し、彼女は鉤爪を擦り合わせる。


「はっ、どうやらやる気になったようだね!!上等だよ!!」
「くっ……口調まで似てるな」
「何の話だい!!さあ、こっちから行かせてもらうよ!!」


ヤンの体格と言動がバルと似ている事もあってダインはやりにくいと感じるが、そんな彼の気持ちも知らずにヤンは駆け出す。今度は正面から挑むのではなく、彼女は近づく際に跳躍を行う。

この時にヤンはダインの上空からではなく、ダインの足元に目掛けて低空跳躍を行う。両足を突き出す形でダインの足元を狙い、彼の両足を自分の両足で叩きつければ必ずやダインは体勢を崩し、自分に倒れてくる形となる。そうなればヤンは両腕の鉤爪でダインの胴体を狙う算段だった。


「喰らいなっ!!」
「やだよっ!!」
「何っ!?」


しかし、攻撃を仕掛けてきたヤンに対してダインは上に飛ぶと、彼女の身体を飛び越える形となり、そのまま二人は距離を取る。まさか自分を飛び越えるとは思わなかったヤンは意外に思うが、この時にダインは何か使える武器を探す。


(このままだとやばい!!何か武器を探さないと……あった!!)


ダインは通路を見渡して武器になるそうな物を探すと、彼は通路の壁に立てかけられている絵を発見した。それはパールの肖像画であり、見るからに価値の高そうな代物だった。それをダインは手にすると、ヤンが慌てふためく。
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