1,223 / 2,083
ダイン 監獄都市編
なんかまたやばそうな奴が出てきたんだけど……(;´・ω・)
しおりを挟む
――試合の開始時刻を間もなく迎えようとしている頃、闘技場の観客席には貴族や商人風の格好をした人間が集まっていた。彼等は外の世界から訪れた貴族や奴隷商人であり、今回は囚人の姿はない。
監獄都市に送り込まれる囚人は「死合場」と呼ばれる闘技台で戦わされ、勝ち残った囚人のみが監獄都市に暮らす事を許される。しかし、闘技者となった囚人同士の試合の場合は観客席に立ち寄る事が許されるのは外部の人間だけであり、囚人が観客席に入る事は許されない。外部の人間の安全性のため、闘技者同士の試合では囚人の立ち入りは禁止されていた。
但し、闘技者が奴隷囚人の場合は主人である囚人は兵士の監視下で観客席にて観戦する事が許されていた。そのため、ミイネはゴブとと共に観客席の隅の方に座り込み、闘技区の兵士に囲まれる形で座り込む。
「……僕一人を見張るためにこんなに大勢で囲む必要があるんですか?それにゴブさんを鎖で拘束するなんて」
「す、すいません……これも規則なので」
「ギギィッ……」
ミイネが文句を告げると闘技区の兵士は申し訳なさそうな表情を浮かべ、ミイネの隣に座るゴブに視線を向けた。現在の彼は首輪に手錠を施されており、自由に動けない状態だった。理由としては魔物であるゴブが間違っても他の観客に被害を加えないための処置であるが、それがミイネには気に入らなかった。
「全く、外の世界の人間に気を使いすぎなんですよ」
「ちょ、ちょっと……声をもう少し抑えてください。観客の中には我々を支援してくれる方も多いんですから」
兵士達はミイネの言葉が他の観客に聞かれていないのか慌てふためき、その態度もミイネは気に入らない。どうして外の人間なんかにここまで気を遣わないといけないのかと思うが、実際にこの場所に集まっている貴族や商人の中には監獄都市の支援者が大半を占めている。
監獄都市は国が管理する施設だが、環境は最悪で外部からの支援がなければ管理も難しい。そのため、闘技区が設立された理由は娯楽隙の貴族を呼び寄せたり、有能な力を持つ囚人を商人に売り込むために作られた面もある。そのため、ミイネとしても彼等の不興を買うわけにも行かず、黙り込む。
「お待たせしました皆様、本日の第一試合を行いたいと思います!!本日の組み合わせはこの二人!!38人の一般人を殺し、更に12名の冒険者を殺した恐るべき切り裂き魔!!リック・ザ・ジャッパー!!」
『おおおおっ!!』
死合場に司会を務める兵士が現れると、試合に登場する選手の紹介を行う。兵士の言葉を着た観客席の獣人たちは湧き上がり、やがて扉が開かれると全身に鎖を巻きつけられた男が現れた。その姿を見たミイネは目を見開き、彼女にしては珍しく動揺したように立ち上がる。
「なっ!?リック!?あいつは闘技者の資格を剥奪されたんじゃ……」
「ギギィッ……」
リックと呼ばれる囚人は闘技者の中でも有名な存在であり、三巨頭のグシャスの右腕と言っても過言ではない。しかし、彼は普段は滅多に表に姿を出さず、しかもミイネの記憶が駄々しければリックは前の試合の時に闘技者の資格を剥奪されていた。
――前回の試合の際、リックは相手の選手が殺すだけでは飽き足らず、あまりにも無惨な殺し方を披露した。その試合を見ていた外部から訪れた観戦者は気分を害し、中には都市への支援を打ち切ろうとした者もいた。
そのせいでリックは闘技者の資格を剥奪され、もう二度と試合には出場されないと思っていたが、そのリックがダインの対戦相手に選ばれた事にミイネは動揺を隠せない。いったいどういう事なのかと兵士に問い質す。
「どうしてあの男を闘技者として復帰させたんですか!?」
「い、いや!!我々も今日知らされたばかりで何も知らないんです!!」
「くっ……なら、試合は棄権させます!!今すぐにダインさんを棄権にしてください!!」
「ギギィッ!?」
ミイネはダインとリックを戦わせないために試合の棄権を申し込み、奴隷囚人が闘技者として参加する場合、主人が試合を棄権させる事も出来る。ここでダインを失うわけにはいかず、ミイネはリックとの試合を中止させようとするが、そんな彼女を止めたのは兵士ではなかった。
「我儘はそこまでにしておけ、ミイネよ」
「なっ……!?」
「ミ、ミノル看守長!?」
背後から声を掛けられたミイネは振り返ると、そこには闘技区を管理する看守長のミノルが立っていた。流石のミイネもミノルの圧倒的な威圧感に気圧されるが、彼がどうして自分の邪魔をするのか問い質す。
「試合は中止して下さい!!ダインさんは僕の奴隷囚人です、だから僕が棄権させてもいいはずです!!」
「それは許さん、この試合に限り、お前の選手の棄権は認められない」
「どうしてですか!?貴方とダインさんには何の因縁もないはずです!!何故、邪魔を……」
「これは上からの命令だ。俺の言っている意味が分かるな?」
「まさか……あの人が!?」
ミノルの言葉を聞いてミイネは愕然とした。看守長よりも上の立場に立つ人間など監獄都市では一人しかおらず、この試合は監獄所長の命令によってダインの棄権は認められなかった――
監獄都市に送り込まれる囚人は「死合場」と呼ばれる闘技台で戦わされ、勝ち残った囚人のみが監獄都市に暮らす事を許される。しかし、闘技者となった囚人同士の試合の場合は観客席に立ち寄る事が許されるのは外部の人間だけであり、囚人が観客席に入る事は許されない。外部の人間の安全性のため、闘技者同士の試合では囚人の立ち入りは禁止されていた。
但し、闘技者が奴隷囚人の場合は主人である囚人は兵士の監視下で観客席にて観戦する事が許されていた。そのため、ミイネはゴブとと共に観客席の隅の方に座り込み、闘技区の兵士に囲まれる形で座り込む。
「……僕一人を見張るためにこんなに大勢で囲む必要があるんですか?それにゴブさんを鎖で拘束するなんて」
「す、すいません……これも規則なので」
「ギギィッ……」
ミイネが文句を告げると闘技区の兵士は申し訳なさそうな表情を浮かべ、ミイネの隣に座るゴブに視線を向けた。現在の彼は首輪に手錠を施されており、自由に動けない状態だった。理由としては魔物であるゴブが間違っても他の観客に被害を加えないための処置であるが、それがミイネには気に入らなかった。
「全く、外の世界の人間に気を使いすぎなんですよ」
「ちょ、ちょっと……声をもう少し抑えてください。観客の中には我々を支援してくれる方も多いんですから」
兵士達はミイネの言葉が他の観客に聞かれていないのか慌てふためき、その態度もミイネは気に入らない。どうして外の人間なんかにここまで気を遣わないといけないのかと思うが、実際にこの場所に集まっている貴族や商人の中には監獄都市の支援者が大半を占めている。
監獄都市は国が管理する施設だが、環境は最悪で外部からの支援がなければ管理も難しい。そのため、闘技区が設立された理由は娯楽隙の貴族を呼び寄せたり、有能な力を持つ囚人を商人に売り込むために作られた面もある。そのため、ミイネとしても彼等の不興を買うわけにも行かず、黙り込む。
「お待たせしました皆様、本日の第一試合を行いたいと思います!!本日の組み合わせはこの二人!!38人の一般人を殺し、更に12名の冒険者を殺した恐るべき切り裂き魔!!リック・ザ・ジャッパー!!」
『おおおおっ!!』
死合場に司会を務める兵士が現れると、試合に登場する選手の紹介を行う。兵士の言葉を着た観客席の獣人たちは湧き上がり、やがて扉が開かれると全身に鎖を巻きつけられた男が現れた。その姿を見たミイネは目を見開き、彼女にしては珍しく動揺したように立ち上がる。
「なっ!?リック!?あいつは闘技者の資格を剥奪されたんじゃ……」
「ギギィッ……」
リックと呼ばれる囚人は闘技者の中でも有名な存在であり、三巨頭のグシャスの右腕と言っても過言ではない。しかし、彼は普段は滅多に表に姿を出さず、しかもミイネの記憶が駄々しければリックは前の試合の時に闘技者の資格を剥奪されていた。
――前回の試合の際、リックは相手の選手が殺すだけでは飽き足らず、あまりにも無惨な殺し方を披露した。その試合を見ていた外部から訪れた観戦者は気分を害し、中には都市への支援を打ち切ろうとした者もいた。
そのせいでリックは闘技者の資格を剥奪され、もう二度と試合には出場されないと思っていたが、そのリックがダインの対戦相手に選ばれた事にミイネは動揺を隠せない。いったいどういう事なのかと兵士に問い質す。
「どうしてあの男を闘技者として復帰させたんですか!?」
「い、いや!!我々も今日知らされたばかりで何も知らないんです!!」
「くっ……なら、試合は棄権させます!!今すぐにダインさんを棄権にしてください!!」
「ギギィッ!?」
ミイネはダインとリックを戦わせないために試合の棄権を申し込み、奴隷囚人が闘技者として参加する場合、主人が試合を棄権させる事も出来る。ここでダインを失うわけにはいかず、ミイネはリックとの試合を中止させようとするが、そんな彼女を止めたのは兵士ではなかった。
「我儘はそこまでにしておけ、ミイネよ」
「なっ……!?」
「ミ、ミノル看守長!?」
背後から声を掛けられたミイネは振り返ると、そこには闘技区を管理する看守長のミノルが立っていた。流石のミイネもミノルの圧倒的な威圧感に気圧されるが、彼がどうして自分の邪魔をするのか問い質す。
「試合は中止して下さい!!ダインさんは僕の奴隷囚人です、だから僕が棄権させてもいいはずです!!」
「それは許さん、この試合に限り、お前の選手の棄権は認められない」
「どうしてですか!?貴方とダインさんには何の因縁もないはずです!!何故、邪魔を……」
「これは上からの命令だ。俺の言っている意味が分かるな?」
「まさか……あの人が!?」
ミノルの言葉を聞いてミイネは愕然とした。看守長よりも上の立場に立つ人間など監獄都市では一人しかおらず、この試合は監獄所長の命令によってダインの棄権は認められなかった――
10
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。