上 下
1,208 / 2,083
ダイン 監獄都市編

必ず後で助けるからな!!

しおりを挟む
「いかん、避けろお前達!!」
「うわぁっ!?」
「ぐふっ!?」
「ちぃっ!!」


影魔法によって裏口に存在した様々な道具が放り込まれ、暗殺者たちは車椅子に座り込んだグシャスを守るために盾となった。影魔法を解除したダインは他の者に声をかける。


「よし、今だ!!外へ向かおう!!」
「やるじゃないですか!!」
「よし、行くぞ爺さん!!」
「やれやれ、年寄りをまだ走らせるか……」


ダイン達はグシャスと彼の配下達が怯んでいる間に駆け抜け、裏口から外へ逃げ出そうとした。だが、裏口の外にもどうやらグシャスの配下が待機させられていたらしく、外に出た瞬間に今度は10人程度の囚人が待ち構えていた。


「逃がすか!!」
「全員、捕まえろ!!」
「くっ……ここは強行突破しかありませんね!!」
「それなら任せろ!!うおおおっ!!」


外に待機していた囚人達に対してマサルは突進すると、邪魔をする囚人達を蹴散らし、その後にダイン達は続く。だが、ここで老人であるドルトンだけは遅れてしまい、他の囚人に捕まってしまう。


「逃がすか!!」
「ぬあっ!?」
「爺さん!?」
「くそ、逃げろ坊主!!ここは俺達に任せろ!!」
「この野郎、てこずらせるな!!」
「おい、あそこにいるの手配書の奴じゃないか!?」
「本当だ!!こんな場所にいやがったのか!!」


先頭を走っていたマサルも数名の囚人に抑えつけられ、ダインとミイネに先に逃げる様に促す。騒ぎを聞きつけたのか宿舎の外に存在した別の囚人達もダイン達に気付き、駆けつけてきた。

この状況下ではドルトンもマサルも助ける事は出来ず、ダインは囚人達に捕まった二人を見て躊躇するが、そんなダインの腕を掴んでミイネは宿舎の裏の方へと駆け出す。


「呆けている場合じゃありませんよ!!あの二人の気持ちを無駄にしないでください、今はここから離れますよ!!」
「で、でも……」
「いいから早く!!ここで僕達が捕まったら全部終わりですよ!?」
「くっ……ちくしょう!!」


仲間を置いていく事にダインは悔しく思うが、ミイネの言う通りにこの状況下で捕まればダインの命はない。二人を置いてダインとミイネは駆け出すと、校舎の裏へと移動を行う。


「逃がすか!!」
「追えっ!!絶対に逃がすな!!」
「あいつらを捕まえれば幹部になれるんだ!!」
「銀貨100枚もだぁっ!!」


ダインとミイネの後方から数十名の囚人が追いかけ、その殆どが獣人族である。人間よりも運動能力が高い彼等は二人との距離を詰めていき、このままでは捕まるのは時間の問題だった。


「くっ……このままでは逃げ切れません!!ダインさん、影魔法で何とか出来ませんか!?」
「くそっ……なら僕にしっかり掴まってろよ!!」
「えっ……きゃっ!?」


走っている最中にダインはミイネの腰に手を伸ばすと、彼女を脇に担ぎ上げる。この時にミイネは女らしい悲鳴を上げたが、今はそれを気にしている暇はなく、ダインは囚人から逃げ出すために影魔法を発動させる。

少しでも足を止めれば追いつかれる状況のため、ダインは肉体に負担を掛ける事を承知で自分自身の影を利用し、肉体に纏わせる。右腕に影を覆い込む「黒腕」の要領でダインは両足に影を纏うと、そのまま信じられない速度で駆け出す。


「うおおおおっ!!」
「わわっ!?」
「な、なにぃっ!?」
「人間の癖に……なんて足の速さだ!?」


影魔法の応用で自分の両足を無理やりにダインは操作すると、信じられない速度で駆け出す。人間よりも運動能力が高い獣人族よりも更に早くダインは両足を動かして宿舎の裏側に回り込むと、そこには「防空壕」を想像させる地下に続く通路が存在した。但し、扉は閉め切られており、南京錠のような鍵も施されていた。


「お、おい!?扉閉まってるぞ!?」
「大丈夫です、あの鍵はもう……」
「ギギィッ!!」


何処からか聞き覚えがある鳴き声がすると、ダイン達とは別方向から口元に鍵を加えたゴブの姿が存在した。どうやら無事に囚人達から逃げ切れたらしく、さらに扉の鍵まで持って来たらしい。


「ゴブさん!!やっぱり無事だったんですね!!」
「お前、本当に出来るゴブリンだな!!」
「ギギィッ(照れるぜ)」


ゴブは先に防空壕へと辿り着くと南京錠を取り外し、扉を開いて中に招く。すぐにダインとミイネは扉の中に入り込むと、後を追いかけてきた囚人達が防空壕の中に逃げ込もうとする3人を見かけた。


「あ、あいつら!?あんなところにいるぞ!?」
「馬鹿な、まさか中に逃げ込むつもりか!?」
「止めろ!!死んじまうぞ!!」
「くそ、誰か止めろっ!!あの中に逃げ込まれたら打つ手がないぞ!?」
「えっ……死ぬ?」
「ダインさん、何してるんですか!!早く中に入って!!」


囚人達の言葉を聞いたダインは戸惑うが、ミイネに急かされて中に入り込むと、即座にゴブとミイネが扉を閉めた。外側から開かれないようにすぐに内側にゴブは南京錠を施し、これで外側から中に入る事は出来ない。

ダイン達が中に入った直後に扉の外側から大勢の囚人に声と、衝撃が走るが相当に頑丈な扉なのかびくともしない。これならば巨人族が追いかけてきても扉を壊す事は難しく、一先ずはダイン達は一息を付けた。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。