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真・闘技祭 本選編

帰ろう

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――優勝者が決まり、表彰式を終えた後にレナはアリアと最後に別れた教会へと向かう。この場所は未だに建物は焼け崩れたままであり、ここでアリアは死んだ。レナはこの場所には一度も訪れなかったが、何となくではあるがこの場所に来ていた。


「アリア……俺、闘技祭で優勝したよ。ほら、こんな置く場所も困るぐらいの優勝杯も貰ってきた」
「本当に置く場所に困る」
「まあ、巨人族が優勝する場合も想定して大きめに作られたのね……」
「俺は気に入ったぞ、出来れば俺の手で持ち帰りたかったがな」
「でも、純金製だぞ?これ、かなりの価値があるよな……金貨何枚ぐらいだろう」


教会の前にはレナ以外の仲間達も存在し、表彰式の後にレナが教会へ向かおうとするのを同行した。優勝杯に関してはゴンゾウに抱えて貰い、教会の前に置いてもらう。レナ達は教会の前で祈るように手を合わせると、ここで聞き覚えのある声が響く。


「あ、レナた~ん!!ここにいたんだ!!」
「むっ、その声は……ティナ?」
「ウォンッ!!」
「「ぷるぷるっ」」
「キュロロロッ!!」
「ヒヒンッ!!」
「あ、ペットたちもいたのか……」


ティナの声が聞こえて振り返ると、彼女の他にも闘技祭の間は彼女に世話を任せていたペットたちの姿も存在し、彼等はレナ達の顔を確認すると飛びついてくる。その中には護衛役のリンダとエリナとユニコの姿も存在した。


「兄貴、優勝おめでとうございます!!あたしになんてあっさりとやられちゃって面目ないっす……」
「エリナもよく頑張ったよ」
「優勝おめでとうございます……ヨツバ王国の立場からすれば素直には褒められないのですが、まあティナ様の旦那であるレナ様が優勝したのならば面目は保てます」
「そういう物なのかな……」
「ぷるぷるっ」
「ちょ、何だよ……スラミン、今日はなんで僕に懐いてくるんだよ」
「きっと、ダインを慰めている」
「ダインもよく頑張ったな……うおっ?」
「ぷるるんっ」
「ふふふっ……ヒトミンは貴方を慰めているようね。きゃっ!?」
「キュロロッ!!」


大会では惜しくも敗北してしまった者達をペットたちが慰めるように擦り寄り、スラミンはダインを、ゴンゾウはヒトミンに、そして最後にシズネはアインに担がれてしまう。彼等の行動に3人は困るが嫌な気分ではなく、彼等を抱きとめる。

一方でレナの元にはウルが近付き、黙ってウルは頭を向けると、それに対してレナはウルを抱きしめて頭を撫でてやる。こうすると子供の頃を思い出し、彼とは共に成長してきた日々を思い出す。


「ウル、やったぞ……俺は世界一の剣士に勝ったんだ」
「ウォンッ!!」
「……天国のアリアも喜んでいるかな」


空を見上げながらレナは呟き、正直に言えばアリアは王妃の命令とはいえ、彼女のために邪魔者を何人も裏で打ち取ってきた。そんな彼女が天国へ行けるかどうかは分からない。だが、レナの知っているメイドとしてのアリアならば天国へ行っているだろう。

天国や地獄が本当に存在するのか分からず、アイリスに聞いてみようかと考えたが、止める事にした。そんな事を聞いたところで意味はなく、そもそも彼女も知っているとも限らない。改めてレナは教会に振り返ると、一礼を行う。ここまでレナが強くなれたのはアリアのお陰だった。


(俺がここまで強くなれたのはいろんな人との出会いのお陰だな……ゴブリン、バル、カイさん……それにミドルも)


森で暮らしていた頃に命を救ってくれたゴブリン、自分に剛剣の剣技を教えてくれたバル、一刀両断の戦技を教えてくれたカイ、最後にミドルを思い出す。彼は敵だったが、彼という存在がいたからこそレナはなりふり構わず強くなる決意をした。


(敵や味方なんて関係ない、俺一人だとここまで強くなれなかった。アイリスと皆のお陰で俺はここまで生きてこれた)


仮にアイリスという存在がいなければレナは何も知らずに森の中の屋敷で最愛の人に命を絶たれていただろう。アイリスが教えてくれたお陰でレナは命が助かり、そして世界最強の剣士を打ち倒せる程の力を身に付ける事が出来た。そういう点ではアイリスには深く感謝するが、その事を報告するとアイリスが調子に乗りそうなので黙っておく。

心の中ではアイリスに感謝しながらも、本人には気恥ずかしくて言えず、レナはとりあえずは後で交信を行う時に感謝の言葉を一言だけ口にしようと考える。改めてレナは皆に振り返ると、全員が目を瞑って教会の前で祈るように佇んでいた。この場所はレナにとっては大事な場所である事は皆も察しており、黙ってレナに倣って祈ってくれていたらしい。


「皆、もう帰ろう……俺達の家に」


レナは皆にそう語り掛けると、今度は教会がある方へと振り返らず、もうここには来ない事を誓う。最後の別れが済んだ以上、レナも前を向いて生きなければならない。死んだ人間はもう戻らない、だからといって忘れる必要はない。死んだ人間の分まで自分が生きなければならない、そう思ったレナはアリアの分まで生きていく事を誓う――






※次の話から新章です。怒涛の展開になる予定ですし、ダインやウルも大活躍の予定です!!
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