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真・闘技祭 本選編

黄の組 《ヨシテル、ハルナ、ハヤテ、ソル》

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――大番狂わせの赤の組の勝者が決定し、続いて次の試合が行われる。観衆の興奮が冷めやらぬ中、東西南北の城門から4人の選手が姿を現す。誰も彼もが実力者ばかりの中、一人だけ初出場で本選にまで勝ち残った「ソル」という名前の選手にレナは注目を向ける。


(あの選手が最後の試合に勝ち乗った選手か……聞いた事もない名前だな)


ソルという名前の選手は男性で年齢は30代前半、予選も本選の第一回戦も勝ち残った強者なのだが、その名前は聞き覚えがなかった。少なくとも知名度が高い武人ではなく、いったい何処から訪れたのかも不明、判明している事は鬼の様に強いという事だけだった。

外見から察するに獣人族のようではあるが、獣人国の国王であるキバも彼の事は知らないらしく、顔を見ても首を傾げる。本選に勝ち残った者の大半は国の代表者か剣聖のように知名度が高い者達ばかりだが、このソルという男に関しては誰も知らない。


「あの男、何者だい?マリア、あんたの所の冒険者だったりしないのかい?」
「いいえ、知らないわね」
「う~ん、気のせいかしら……あの人、何処かで見覚えがあるような気がするわ」
「アイラさん、本当かい?何処で見たんだい?」


ソルの顔はマリアは知らないが、彼女の姉であるアイラは何処かで見覚えのある顔だという。バルは何処でアイラは彼を見たのかを尋ねると、彼女は首を傾げながら思い出そうとする。


「確か、私がまだ結婚したばかりの頃……思い出したわ!!あの人から王族の証である聖光石を受け取った時、肖像画を見かけたの!!確か、バルトロス王国を建国した人と同じ顔だわ!!」
「バルトロス王国の初代国王と同じ顔……?」
「何だそりゃ……ただの他人の空似じゃないのかい?そんな偶然、あり得るのかい?」
「でも、本当にそっくりなのよ!!」


バルトロス王国が建国された時期となると400年近く前の話であるため、当時の国王が生きている事はあり得ない。そもそも国王は普通の人間であるため、生きているはずがない。仮に森人族だったとしても試合場に存在するソルの年齢は若すぎた。

観衆がソルという男性に注目を向ける中、試合場の選手達もソルという選手が気になっていた。ハヤテは只者ではないと感じ取り、ヨシテルもソルに視線を向けて何かを感じとる。一方でハルナはソルに対して大した興味を抱かず、早く試合が始まるのを待ち構える。


「へへへっ……どいつこいつも強そうだな、だけど勝つのは俺だ!!」
『小娘が生意気を抜かすな』
「うわっ!?びっくりした……お前、相変わらず変な声を出すなよ!!」
『やかましいわっ!!』


あまりに小声なので音を強調させる特別な魔石のペンダントを首にぶら下げるハヤテにハルナは驚き、一方でヨシテルはソルと向かい合うと一礼を行う。それに対してソルという男性も黙って頷く。


「初めまして……というわけでもないですが、こうして顔を合わせて話すの初めてですね。和国代表のヨシテルと申します。貴方は何処の国の出身なのですか?」
「……出身か、帝国だ」
「帝国……?」
『おい、まさかバルトロス帝国の事を話しているのか?』


ヨシテルの質問にソルは初めて口を開くと、その返答にハヤテが鋭い目つきを向ける。バルトロス帝国は遥か昔に滅びた国家であり、もう存在はしない。バルトロス帝国の帝族の子孫であるイレアビトも死んだ事により、もうバルトロス帝国の血筋を継ぐ者はいない。厳密に言えばバルトロス王国の王族も基を正せば帝国の一族ではあったが、その帝国を滅ぼしたのがバルトロス王国と当時召喚された勇者である。

かつてバルトロス帝国は世界最大の規模を誇り、数々の名君が収めていた。しかし、最後の皇帝が暴虐の限りを尽くした事によって国は傾き始め、遂には実の息子が帝国を離れて新しい国を建国し、そして歴史上で最後に召喚された勇者と共に帝国を滅ぼしてバルトロス王国は反映した。帝国の残党は「旧帝国」という組織を作り上げて今の時代まで生き延びてきたが、その旧帝国を管理していたイレアビトは死亡し、もう帝国の関係者はいなくなったはずである。

今の世では帝国の名前を口にするだけでもまずいのだが、ソルという男は堂々と悪びれもせずに自分は滅びた帝国の出身である事を語る。そんな事があり得るはずがないのだが、彼は淡々と告げた。


「出来る事ならば我が子孫と戦いたかったが、仕方があるまい……それにここに勝ち残れば次の試合で戦えるかもしれんしな」
「子孫?子供か孫でも出場しているのか?」
『……まさか、自分がバルトロス王国の初代国王とでも思い込んでいるのか?』
「確か……バルトロス王国の初代国王の名前はソル・バルトロスでしたね。二代目以降の国王は国を建国した偉大な先祖の事を忘れぬため、バルトロスの名前だを語るようになったと聞いてますが……」
「まあ、私の事はどうでもいいではないか。お前達は遠慮せずに掛かってくるがいい、言っておくが……私は強いぞ?」


ソルの言葉にヨシテル、ハルナ、ハヤテは目つきを鋭くさせ、この男の言葉が只の虚言ではない事を見抜く。絶対の自信を持つ男の言葉だと悟った。
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