上 下
1,106 / 2,083
真・闘技祭 本選編

闘技祭最終日

しおりを挟む
――闘技祭の最終日、厳しい予選を勝ち残り、更には1回戦を乗り越えた16名の選手が試合場に立っていた。それぞれが一騎当千、万夫不当の強者達である事は間違いなく、今日の試合の結果によって国家間の力関係が決まるといっても過言ではない。

観客席には予選や一回戦で敗退した者達も勢揃いし、最前列の席には世界各国の国王たちが座っていた。その中にはレナの姉のナオも存在し、彼女は試合場に立つレナを見て感動を覚える。最初に会った頃と比べたら随分とたくましく育ち、国の命運を背負う存在となっていた。


(レナ……頼む、無事に戻ってきてくれ)


国の王としてはレナが勝ち残る事を祈るべきではあるが、義理の姉としては弟の事を心配する。その両隣に座るアイラとマリアもレナがこの場に立っている事を誇らしく思う一方、心配でもあった。


(レナ、勝ち残りなさい。貴方にはそれだけの力があるわ)


アイラとマリアはレナの勝利を祈り、一方でバルの方はダインに視線を向け、まさか彼が闘技場の舞台に立つとは夢にも思わなかった。しかも厳しい予選を勝ち残るだけではなく、なんと16名の選手に残っただけでも信じられない話だった。


(昔はあたしの後を付いてくるだけのガキだったのに……大した奴だよ、あんたは)


バルの隣に座るコトミンはシズネに視線を向け、黙って頷く。そんなコトミンに対してシズネは自然を向けると、彼女は無言で雪月花を握りしめた。一方でゴウライは他の者達に視線を向け、満面の笑みを浮かべていた。誰も彼もが見ただけで強者である事を理解できるほどの実力者揃い、彼女の長年の夢が今日叶うかもしれないと考えるだけで笑顔を浮かばずにはいられない。

ジャンヌは緊張しながらも自分の武器を握りしめ、シュンも流石に今回はふざけた態度は取れず、腕を組んだまま黙り込む。ハヤテは表面上は普通の態度を貫いているが、観客席に座るツバサを見て内心では色々と考えていた。

その他の面々も色々と思う所はあるが、今日を終えれば闘技祭の優勝者は決定する。この強者だらけの戦士達の中で誰が優勝し、闘技場の覇者になるかは誰にも想像できなかった。レナが仮に狭間の世界のアイリスに尋ねたところで優勝者は彼女の力を以てしても予想は出来ない気がした。


『お待たせしました……遂にこの闘技祭も最終日を迎えました。泣いても笑っても優勝者は一人!!この16名の中の誰が優勝の座を手にするのか!!』
『では早速ですが、本選の選手の方々にはこれよりくじ引きを引いて貰います!!名前を呼ばれた人は前に出てくじを引いて下さい!!ちなみにくじ箱の番号の紹介役は特別ゲストとしてヨツバ王国のお姫様であるティナ選手にお願いします!!』
『は~いっ!!』


くじ箱を持ったティナが試合場に現れると、観客席は一気に盛り上がり、特に男性客は歓喜の声を上げた。その様子を見てデブリ国王は唖然とした表情を浮かべ、どうして自分の娘が試合場に立っているのかと戸惑う。


「な、な、なっ……何故、ティナがっ……!?」
「陛下!!落ち着いて下さい!!」
「お父様、顔が凄い事になってますわ!?」


顎が外れんばかりに大口を開いたデブリを見て彼の息子であるアルンと娘のノルンは慌てて落ち着かせるが、デブリ国王が騒ぎ出す前にくじ引きが始まった。


『では最初にくじを引く御方はもちろんこの人!!バルトロス王国の王弟にして史上最強の魔法剣士!!そしてティナ選手の旦那様でもあるレナ選手です!!』
『うおおおおっ!!』


レナの名前が紹介されると観客席は沸き上がり、中にはブーイングを行う者もいた。どうやらティナの旦那と聞いて不平不満を買った様だが、特に気にせずにレナはティナの元へ向かう。


「何してんだよティナ……」
「えへへ~実はこういう場所に立つの憧れてたんだ。どう?衣装も用意してくれてたんだよ?」
「はいはい、可愛い可愛い……それじゃあ、くじを引くよ」
「うん、くじを引いたら中身を開かないで私に渡してね~」


ティナが持った箱の中にレナは腕を入れると、中から折りたためられた紙を取り出す。言われた通りに中を見ないでティナに渡すと、彼女は紙に記されていた数字と色を答える。


「赤の一番!!」
『はい、赤の一番ですね!!記録しました、それではレナ選手は下がって下さい!!』
「赤……?」


くじ引きの数字を確認するとホネミンは手元の羊皮紙に書き込み、レナに元の位置に下がるように指示する。数字だけならばともかく、色も告げた事にレナは戸惑うが、続けてシズネの名前が紹介されて彼女はくじ引きを行う。


「はい、どうぞ」
「うん!!えっとね……シズネちゃんは青の一番!!」
「青……?」
『青の一番ですね!!記録しました!!では続けての選手は――』


次々とホネミンに名前を呼ばれた選手はくじ引きを引き、この際に選手達は引いたくじは「赤」「青」「黄」「緑」の4種類、そして数字はそれぞれが「1~4」まで存在する事が判明した。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。