上 下
1,096 / 2,083
真・闘技祭 本選編

試合の結果は……

しおりを挟む
――レミアは意識を取り戻すと、自分がベッドの上に横たわっている事に気付く。彼女は何が起きたのか一瞬理解できず、見慣れない天井が視界に入って戸惑う。いったい何が起きたのかと彼女は混乱していると、すぐ傍から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「レミアさん」
「……れ、レナさん、ですか?」
「無理に動かない方がいいよ、魔力を使いすぎて倒れたんだから」
「倒れた、私が……?」


どうにかレミアは顔を横に向けると、そこにはレナの姿が存在した。レミアが目を覚ました事にレナは安堵する一方、彼女の様子を見て何かを察したように頭を掻く。


「その様子だと試合の事は覚えてないみたいだね。まあ、仕方ないか……凄い戦いだったからね」
「試合……そうだ、私はどうしてこんな場所に……!?」
「無理しない方がいいよ。もう碌に身体を動かす事も出来ないでしょ?」


レナの言葉を聞いてレミアは自分の身体がが上手く動かない事に気付き、せいぜい首を動かすのが精一杯だった。彼女は自分の身体の異変に戸惑い、震える声でレナに尋ねる。


「試合は……私は、勝ったのですか?それとも……負けたのですか?答えてください……!!」
「……本当に凄い試合だったよ」





――レミアの質問に対してレナは試合の出来事を思い返す。聖剣の使い方を理解する事が出来たレミアはホムラを相手に激戦を繰り広げ、二人は血塗れになるまで戦い続けた。二人の刃が衝突する度に衝撃が試合場へと広がり、観客も瞬きする余裕もなく試合に魅入られた。

しかし、お互いに体力の限界を迎えたのか二人は最後の一撃を繰り出すために同時に離れると、レミアは聖剣に全ての魔力を注ぎ込み、全力の一撃を繰り出すために駆け出す。一方でホムラは動かず、薙刀に魔力を注ぎ込むと迫りくるレミアを迎え撃つ。


『はぁああああっ!!』
『――業火』


聖剣を振りかざしたレミアに対してホムラは薙刀を地面に突き刺すと、下から炎が噴き出してレミアの身体を包み込む。魔力を聖剣に込めていたのでレミアは防御が間に合わず、彼女は地面に倒れた。その様子を見てすぐにホネミンが試合続行は不可能だと判断し、すぐに彼女は医療室へと運び込まれた。


「勝ったのは……ホムラだよ」
「そう、ですか……」


レナの言葉を聞いて半ば予想はしていたのかレミアは思っていたよりも自分が冷静な事に気付き、黙って目を閉じる。そんな彼女の姿を見てレナは立ち上がると、黙って立ち去る。


「負けたのですね……私は」


ナオから聖剣を授かり、その真の力を扱えるようになったと思った矢先に自分が敗北したという事実を思い知らされ、彼女は目元を覆う。全力を出し切ったにも関わらず、勝利する事が出来なかった事に彼女は悔しく思い、自分の力不足さを思い知らされる。


「何が聖剣に選ばれたですか……結局、私は聖剣あなたを使いこなす事も出来なかった……!!」


ベッドの傍に立てかけられている聖剣に気付いたレミアは涙を流し、非常に申し訳ない気持ちを抱く。ホムラに勝てなかったのは聖剣を中途半端にしか扱えず、彼女に指摘されるまでは自分が聖剣を扱いこなしていない事を認めず、自分が聖剣に選ばれた存在だと信じ込もうとしていた自分に恥を抱く。

聖剣を目にしてレミアは今の自分にこの聖剣を扱う資格などないと判断し、彼女は悔し涙を流す。いくら後悔したところで時間は巻き戻せず、彼女はこの日に聖剣を返却し、一からやり直す事を決意した――





――その一方で医療室の別のベッドにはホムラが横たわり、レミアは気づいていなかったが彼女も試合の後に倒れて医療室にまで運び込まれていた。レミアとの試合でもホムラも限界近くまで魔力を使い切り、彼女も試合を終えてからはずっと眠っていた。だが、レミアの声を聞いて目を覚ましたホムラは面倒そうな表情を浮かべる。


(この私に技を使わせておいて泣くな)


ホムラは最後にレミアに放った攻撃を思い返し、彼女は悔し気な表情を浮かべた。基本的にホムラは自分が技を使う相手は自分を脅かす存在だけであり、彼女にとってレミアは自分の命を脅かす強敵と認定した。そんな彼女が認めた女が子供の様に泣きじゃくる事に若干苛立ちを覚え、レミアが泣き止むまで彼女は落ち着けずにベッドの上で不機嫌な顔をしていた――







――同時刻、試合場では次の試合では驚くべき光景が広がっていた。試合の出場者であるロウガが地に伏し、その様子を見下ろす少女の姿が存在した。その光景に観客は呆気に取られ、剣聖であるはずのロウガが無名の選手に敗れたのだ。


『こ、これは……驚きの結果です!!剣聖であるロウガ選手が敗北しました!!』
『信じられません!!いったい、何者なんでしょうか!?』
「ぐっ……馬鹿なっ……!?」
「…………」


ロウガは自分を見下ろす少女に顔を上げ、信じられない表情を浮かべる。その一方で青年の方は黙ってロウガに一礼すると、城門の方へと歩いていく。その光景を確認した者達は動揺を隠せず、特に特等席に座っていたナオは驚きの表情を浮かべていた。


(あんな剣士がこの国に存在したとは……しかし、いったい何者なんだ?)


試合場を立ち去ろうとする少女は顔を覆面で隠しており、その正体を掴む事は出来なかった。だが、彼女の背中にはレナの退魔刀に酷似した大剣、腰にはシズネの雪月花のような刀を装備していた――
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。